241 線路上の雪燕
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― 三等車両 ―
[少しずつ人口密度があがっていく。 もしかしたら、そのまま列車を降りた者もいるかもしれないし、反対に乗り込んだ者もいるかもしれない。 サイラスは少しずつ壁に押し付けられる。 夜の匂いは、人による臭気をかき消してはくれない。
膝を抱えたまま、目を閉じたまま。 防音だっておざなりな三等車両。 線路と列車が生み出す騒音は、静かな夜を何マイル先までも響いていそうだった。遠く、ニズを越え、サラグニッドを通り過ぎ――サイラスが捨ててきた、あのどうしようもなく腐った街にも、届いているような、そんなことすら考える]
(55) 茄子 2015/12/04(Fri) 01時頃
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[雪燕は、移動のための手段だった。 三等車両の乗客は、誰の目にも留まらず、ただひとつの声すらあげることなく、息をひそめていればスウェルグに着く。そこから、新たな人生が始まる。そう、思っていたのに。
列車の音をかきけすように、頭の中でさっきの悲鳴が谺する。交わした声、触れた手、覚えてしまった名前、向けられた視線。通り過ぎることなく、それらはサイラスの中に留まった。
スウェルグに着いても、その先に当てはない。 手段はなく、生きる術もない。 ただ細くなっていく人生の道が、急に開けたわけでもない。 何も変わっていない。 けれど確かに、雪燕に乗る前とは、違うサイラスになっていた]
(56) 茄子 2015/12/04(Fri) 01時頃
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― 静かな海 ―
[夜明けの光は、人ひしめく三等車両の中を等しく照らしはしない。サイラスはいつしか眠りに落ちていた。空腹は峠を過ぎ、悪臭のおかげもあってほとんど忘れられていた。
朝日が、微かに揺れる波に反射していた。 閉じた瞼が、ひくひくと動く。 周囲の人々も、少しずつ目を覚まし始めた。
話し声はしない。 誰もが長すぎる夜に疲れ、そして朝日に声を忘れていた]
(96) 茄子 2015/12/04(Fri) 23時半頃
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[目を覚ましたサイラスは、ゆらゆらと蠢く光に腕時計を掲げた。示す時刻は8時少し前。いつもならば、動き出して、水を一杯飲む頃合。 無理やりに唾を飲み込んで、あとはただぼんやりとして、列車の速度が遅くなるのを待っていた。
少しだけ、昨夜の騒ぎが気になった。 月明かりに照らされた少年の横顔を思い出した。
もう一度、膝に額を擦りつける。 雪燕の白い吐息が、細く、窓の外を流れていった。
―――スウェルグ、到着。 旅の終着点。新たな一歩を踏み出すための、駅]
(97) 茄子 2015/12/04(Fri) 23時半頃
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― 《 Swelg 》 ―
[辛うじて穴が開いていない靴が、少し傾斜のかかったホームに降り立った。大事な鞄も、色も生地も薄い上着も、手指や頬すら少し汚れている。髪はいっそうごわついて、空腹のせいか顔色もよくない。
そんな、ぼろぼろの状態で、サイラスはまずポストを探した。真っ赤な、どの街でも目立つ存在。それを見つければ、鞄からニズで用意したポストカードを取り出して眺める。 言えなかった「ありがとう」を認めたこれには、宛先は書いてあるけれど、送り主は名前しかない。書ける住所はもう、何処にもないからだ]
(98) 茄子 2015/12/04(Fri) 23時半頃
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[ポストの前、握る手の力が強かったのか、ポストカードに皺が寄る。 それを丁寧に伸ばして、もう一度宛名の名前を見つめて―― 誰も、サイラスに声をかける者はいない。 そのはずだったから、かけられた声に振り向くこともせず、肩に手を置かれるまで、その接近に気づくことはなかった]
は? ……は、 え? なに?
[上等とは言えないコート、火のついていない煙草――吸わないのならば奪ってやろうか、なんてこの時は頭もまわらず――趣味の悪い色眼鏡に、見覚えのある性格の悪そうな目つき。 ポストカードを持ったまま呆けていたことに気づいたのは、目が合った瞬間。 慌ててそれを鞄にしまいこみ、それからやっと肩から手を払って一歩飛びのいた]
(105) 茄子 2015/12/05(Sat) 00時半頃
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な ……んだよ、あんた え? …………話す、ことはないけど
[喜劇のように、腹が鳴った。 くそ、と小さく悪態をつくも、その事実は変わらない]
飯、食わせてくれるなら
[身形の程度が違っても、やはり目の前の男、ルーカスとは何もかもが違いすぎる。衣服の上等さなんて、関係ない。そのことが酷く、サイラスを惨めな気持ちにさせた。 それでも、プライドよりも空腹をとってしまうあたり、どうにも生きることを諦めてはいないようだ*]
(106) 茄子 2015/12/05(Sat) 00時半頃
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あんた ……その、
[ルーカス、と呼ぶのは躊躇われた。 言葉になりかけの感情がいくつも過ぎる。 それは大体がマイナスのもので、その対象は自分にあった。 結局、ルーカス――と呼んでいいのかわからないが、目の前の男の目的は分からない。空腹に抗うことは出来ないし、なにより特にやることも行く場所も決まってないのだ]
馬鹿にしてんのか ……笑いすぎだろ
[それでも足は素直に店へと向け、よくわからぬままに席にもついた。ポストカードを出し損ねたことに気づいたのはメニューを手にしてから。 中指の爪に詰まった汚れを親指で擦って――聞こえた名前に、吸い込んだ息が変な所にはいって、思い切り咳き込むこととなる]
(111) 茄子 2015/12/05(Sat) 01時頃
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は、いや ……いや、さすがに冗談 だろ?
[冗談と言ってくれ。そんな顔を向ける。 答えがどちらであろうと、見抜けるものでもないかもしれない。 テーブルに置いたメニューに無理やりに視線を落として、名前は、と口を開く。さっき、ポストカードに書いた名前を、見られていただろうかと。 宛名は、パトリシア。送り主は、サイラス。 どちらが名前か、なんて一目瞭然だったろう、と]
サイラス ……だけど これは、本当
[メニューを眺めても、空腹も手伝ってまったく決めることが出来ない。 どれでもいい。腹がふくれれば、そんな気持ちで、椅子にもたれて天井を仰いだ**]
(112) 茄子 2015/12/05(Sat) 01時頃
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― スウェルグ、朝食の風景 ―
[ルーカス……いや、ジャンだろうか。 ともあれ、サイラスにとっては嫌味としか思えない言動に溢れているこの男は、店員に何か頼んでいた。エッグ、と聞こえたからサイラスはそのままメニューを眺めることを放棄し、窓の外に視線を投げた。 仕事に行くのだろうか、俯きながら早足で歩いていく人が見えた。 店先に花を並べている人もいる。その後姿が誰かと重なった 猫に餌をやっている少年も見えた。
そこまで眺めたところで、ようやく視線を戻し よくわからない、と首を傾げた]
仕事、 って言われても ………真っ当な仕事じゃないだろ 大体、嘘か本当かわからないなら、俺はあんたをなんて呼べばいいんだよ
(153) 茄子 2015/12/05(Sat) 22時頃
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[文句を言うも、続いて投げられた名前に、サイラスはまた小さく口をあけて、やがて下唇を噛んだ。彼女の名前を口にされたことも、それを聞いて沸いた感情も、咄嗟に答えられなかったことまで、全てが煩わしい]
……世話になった、人だよ もう会えないし 大体、関係ないだろ
[ちょうどよく運ばれてきたベーコンエッグを受け取れば、自然と視線をそらせるだろう。祈りも捧げず、金を出す気もないくせに何も言わず、そのままナイフとフォークを器用に使って食事を始める。 固めの目玉焼きは二つ。ベーコンは薄くとも脂はたっぷり。一日半ぶりの食事は、結局のところ、サイラスを夢中にさせた。 一皿食べ終わって水の入ったコップを一息に干すまでは、先への不安などはすっかり忘れることが出来た*]
(154) 茄子 2015/12/05(Sat) 22時頃
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……まっとうな仕事なら、俺もやったことないけどさ
[それだけ言って、あとは食事に没頭した。詐欺、なんてしたこともない。――そうだろうか?今まで誰も騙したことがないなんて、言えるはずもない。雪燕でも結局一度も名前を名乗らなかったし、彼女――パティにも、街を出ることを伝えなかった。どんな仕事をしているか、言ったこともなかった]
まず、一つ目
[水のおかわりを頼みながら、息をつく]
なんで、俺と仕事がしたいんだよ わけがわからない 一人が嫌なら、他にもいるだろ ……それに、俺はあんたの名前を呼ぶ気はない
二つ目。 食べるのは、好きでも嫌いでもない ……そう、死ぬ気はまだないから食べたいけれど んで、最後に
[ようやく、椅子に背を預けて顔をあげた。一人は嫌なんだ、ってどんな顔して言ったのか。見逃したことを後悔しながら]
(175) 茄子 2015/12/05(Sat) 23時頃
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最後に ………俺は、あんたを信用できる気がしない
「大事な仕事仲間」なんだろ それで いいのかよ
[きっぱり断るつもりだった。勿論今も頷くつもりはない。腹を満たす当てはこの先もないが、この男に背中を預けることなぞ出来るはずもない。
それなのに、理由はサイラスにはまだわからないけれど。 問いに対する答えを、期待していた。 信用できないと言いつつも、一人が嫌だなんて、笑い飛ばしてやることも出来た台詞を、すんなりと受け止めてしまったのがいけないのかもしれない。
知らぬ土地に一人立つにはまだ、覚悟が足りていないのだ*]
(178) 茄子 2015/12/05(Sat) 23時頃
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[仕事に楽しさを見出したことはない。 苦しみしかなかったから、ルーカス――否、ジャンの答えに空になった皿を見つめる瞳が揺れた。 食べることにも、そう。楽しみも、こちらは苦しみも感じたことはなかった。けれど、不思議と今のベーコンエッグは美味しかった。空腹のせいだけではないのだろうか]
……美味いものは美味いんだよ
[そう、減らず口を叩いて、視線を合わせる。
目の前の、この男は誰だろう。 改めて、サイラスは不思議に思う。 初めて顔を見た気すらした。
話相手、なんて口下手だから無理。そう言おうと開いた口はすぐにまた閉じられる。それで良かった。「ルーカスじゃなくて…」そう、口にした男の顔をちゃんと、見れたから]
(196) 茄子 2015/12/05(Sat) 23時半頃
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………ジャン、 えっと
[名前を呼ぶのは、特にこの名前を呼ぶのは複雑で、サイラスはすぐに後悔を表情に表して、また視線を窓に逃げさせる。 少し目を離しただけで、人の数は倍ほどにもなっていた]
……よく、わかんねーけど
[迷った右手の指が、下唇をつまんですぐに離した。 目の前に来た自分の手指を、掌を見つめて、言葉を探す]
あんた、って 思ったより普通、なんだな
[余裕なんか、やっぱりなさそうで、それはサイラスと一緒なのに。欲しいものを自覚して、ちゃんと手を伸ばせる――欲しいもの。それは、今はつまり自分だろうか。そう、思い至って、また言葉を無くした。 ただ、今の言葉に先ほどまでの刺々しさが薄れていることは伝わっているといい。薄れているだけで、けしてなくなったわけではないけれど*]
(197) 茄子 2015/12/05(Sat) 23時半頃
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[「余裕なんて見せかけ」 その言葉の前、あいた間には気づかずに、ただ、そう――安堵した。見せかけでも余裕を演じることの出来ない自分を、今は惨めに思うこともなく。 ただ、普通の男が、普通に一人を寂しく思って人を恋しがる。 普通のこと。 サイラスにとっても、自然なこと。
急に肩が軽くなったような気がした。何も減ってはいないのに、鞄を持つ人数が増えたような、そんな心地だ。
立ち上がったジャンを見上げる。 にやついていない普通の笑みを、ただ見上げて、それにまた何故か安堵したから、髪を混ぜる手を跳ね除けないでおいた]
(212) 茄子 2015/12/06(Sun) 00時頃
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……ん、着いてくよ あんたが、俺の話し相手になるんだからな
[そう言って、新たな一歩を、踏み出そう]
(213) 茄子 2015/12/06(Sun) 00時頃
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