179 仮想現実人狼―Avalon―
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――、私は死んでいた。 そのことに、気がつきもせずに。
――あなたは、命を落としました。 そんなシステムメッセージが、マユミの前に表示されている。
――、膝を抱えて。 じっと、虚空を見ていた。
(+0) 2014/06/04(Wed) 05時半頃
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― 虚空を見る眼に映るは、無だった。 ―
仲の良い家族だったと思う。 マユミは、兄さんが心配なだけだった。 ノリが良くて気のいい兄さんだった。 物作りが好きで、その姿には尊敬さえしていた。
アヴァロンに来たのは、どうしてだろうか。 その理由は、なんてことない興味本位だった。 物作りの好きな兄が、はたと大学に行かなくなった。 そのことを心配し、時には両親が喧嘩していることを兄さんは知っていただろうか。あんなに仲が良かった家族が、ばらばらになっていくのが恐かった。 それを伝えようと思っていたわけではなかった。 ただ、兄が何を見ているのか。 それほどまでに、帰ってこれなくなるような世界があるのか。 それが気になって――、捜しにきたのだ。
(+1) 2014/06/04(Wed) 15時半頃
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両親へと二人だけの水入らずで家族旅行をプレゼントしたいという理由で、マユミは色々なことを頑張った。 友人は快く引き受けてくれて、兄さんのことまで含めて様々な協力をしてくれた。
初めて体験したVRの世界は、とても綺麗で。 楽しかった。 優しい人が沢山いて、思い出が沢山出来た。 初めて声をかけてくれたチアキには、ちょっと憧れもあったかもしれない。 初めてのことばかりが連続していて、そのどれもが驚きの連続で――。 ――初めての戦闘は、大きな兎の首を跳ね飛ばすという少し衝撃的なもので。
しかし、そういうものなのだろうと彼女は世界を誤解していった。 輝かしい世界は、いつからだろう。 血に濡れてぬらりと輝く、黒の世界へと変わっていた。
(+2) 2014/06/04(Wed) 15時半頃
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[あんなに、元気に笑っていた子供を殺した。 ワンダさんに愛されていた様子を、見ている。 その息の根を止めた時。 苦しんでいる様子を、ただ茫然と見た時。 刺し身を美味しいと言って食べてくれた記憶が。 愛おしそうにワンダさんから撫でられている記憶が。 悲痛な叫びをあげるワンダさんの声が。 覚悟を決めたように、眼を閉じるトニーの姿が。 あの独白の声が。 手に残る、首を切った感触が。 吹き出す鮮血の光景が。 その臭いが。 広がる血だまりが。
――彼女の虚ろを、支配していた。
(+3) 2014/06/04(Wed) 15時半頃
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現実と虚構の境目は、どこからか曖昧になっていた。 殺した。 殺した。 殺した。 ゲームでのこと、という認識はなかった。
マユミは、誤解をしていた。 あるいは、それは誤解ではなかっただろうか。
この世界は、残酷なのだ――と。
(+4) 2014/06/04(Wed) 15時半頃
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――心が、耐えきれなかった。 平然として、淡々としていたのは。 ゲームだと認識して、ゲームとしての行動をしていたのは。 そうでなければ、恐くて逃げ出してしまいそうだった。
ただの、ポーカーフェイスだった。 「シロガネ」としての振る舞いは、いつものマユミとは全然違う行動を取らせた。 シロガネだから出来ることが沢山あった。 シロガネだから、私は――。
(+5) 2014/06/04(Wed) 16時頃
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――命を奪う覚悟、なんて。 シロガネもマユミも持っていなかった。 トニーが少しでも、違うと主張していたら。 きっと、その凶刃は届かなかっただろう。
――覚悟なんて、なかった。 人狼だと確信した時、殺す覚悟なんて。
(+10) 2014/06/05(Thu) 00時頃
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