70 領土を守る果て
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ロビンは、何処までカルヴィン殺したいんだよ…ラ神…
2011/11/12(Sat) 00時半頃
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[町はずれのどこかで、今日も首元から笛を引っ張り出す。その小さな笛を唇にあて、そっと息を吹き込んだ。]
ピュールルル… …ピュールルル…
ピュル、ピュルルルルルル…
[そのどこか哀しげな調べは、夜風に乗って遠く王宮へと届くだろう。]
(12) 2011/11/12(Sat) 01時頃
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[生存報告の笛を吹いた後、一度隠れ家に戻る。紙束を取り出して、開くと、少し考えてから、書き込みを加えた。]
【ヤニク】 良い人…なんだと思う。とても、親切で、優しい人。じゃなきゃ、兎はあんなに懐かない。だけど、何故だろう。彼の瞳を見ていると、不安になる。闇に堕ちてしまいそうな…
[書き込みを終えると、パタン、と紙束を閉じる。それを棚に戻し、それから…別の紙束を手に取った。]
(159) 2011/11/13(Sun) 00時半頃
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[紙束をぱらぱらとめくる…その内容に、視線を落とす。]
―人魚伝承― [ローレライ] ライン川にまつわる伝説。ライン川を渡る舟に歌いかける美しい人魚たちの話。彼女たちの歌声を聞いたものは、その美声に聞き惚れて、舟の舵を取り損ねて、川底に沈んでしまう。 [メロウ] 姿はマーメイドに似ており、女は美しいが、男は醜いという。この人魚が出現すると嵐が起こるとされ、船乗り達には恐れられていた。また、女のメロウが人間の男と結婚し、子供を産むこともあるという。その場合、子供の足には鱗があり、手の指には小さな水掻きがあるとされる。 [セイレーン ] 航海者を美しい歌声で惹きつけ難破させるという海の魔物で、人魚としても描かれる。もとはギリシア神話に登場する伝説の生物。
(169) 2011/11/13(Sun) 01時頃
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[ハルフゥ] ハルフゥ(Havfrue)は、ノルウェーに伝わる人魚で、漁師の間では人魚を見たら嵐や不漁の前兆とされ、人魚を見たら仲間に話さずに火打石で火花を立てることで回避することができるとされる。また、人魚には予知能力があるとされ、子供の人魚(Marmaeller)を捕まえた漁師は予言を聞くことができる。男の人魚はHavmandと呼ばれ、人間に対しては好意的である。 [***] 人魚の肉を食べれば永遠の命と若さが手に入る。
[もう、何度も読んだ記述。何度も、何度も。ハワードは何も言わない。けれど、察してしまうものがある。まして…]
(170) 2011/11/13(Sun) 01時頃
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[少女は、己の足に触れた。一瞬の間の後、ブーツを脱ぎ、肌着を脱ぐ。その下から現れたのは…鱗状の皮膚。親を知らない彼女に、自分の正体は分からない。伝承はあくまで伝承、丸飲みにはできない、が…少女はつぅ、と己の足を指先でなぞった。]
(171) 2011/11/13(Sun) 01時頃
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―回想― [隠れ家で身体を休めてから、再び街へ繰り出す。と、鳩が一羽、飛んできた。それは、ハワードからの伝書鳩。指示されるまま、一度王宮へ帰ることにする。]
[正面から入ろうとすれば目立つから、いくつかある抜け穴の一つから王宮に忍び込む。そのまま、静かにハワードのいる部屋へと向かった。…久しぶりに、会う気がした。]
…ただいま戻りました。 [そう言って、頭を下げる。]
(326) 2011/11/14(Mon) 00時半頃
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『お帰り、ロビン。』 …。 『随分、可愛らしい格好ですね。』 …父上がそうおっしゃったのでしょう。 『…褒めているのですよ。』 …ありがとうございます。
[どこか硬い会話が交わされる。]
『…何か、分かりましたか。』 …少しだけ。 『何が、分かりましたか。』 …人を理解することは難しい、ということが。 『…ほう?』 人の行動を見ても、何を考えているか、正確に理解するのはとても難しいです。 …不可能、です。 『…なるほど。』
[何故か、ハワードはどこか嬉しそうだった。]
(328) 2011/11/14(Mon) 00時半頃
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『貴女は、何が正しいと思いますか。』 …どういう、意味でしょうか。 『文字通りの意味です。』 …わかり、かねます。 『ならば、分かりやすく問いましょう。この国は、正義ですか。』 …。
[しばしの沈黙が流れる。少女にはわからなかった。正義とは、なんなのだろうか。それ以前に…正しいこと、というのは、存在するのか。]
…分かりません。
[予想に反して、ハワードは頷く。]
『正解です。分からないのが、正解ですよ。ロビン。』
[意味が、分からなかった。そんな少女を見て、ハワードは微笑する。]
(329) 2011/11/14(Mon) 00時半頃
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『絶対的に正しい者は、存在しません。』 『ついに、隣の国と戦が始まります。始まりました。』 『我々から見れば、不当に攻め込まれたと思うでしょう。』 『けれど、攻め込ませるだけの原因が、こちらに遭ったかもしれないのです。』 『人は隣国を鬼のように言うかもしれない。』 『けれど、彼らが何を考えてそう言ったことをするのかは、彼らでない我々には、決して分からないのです。』
[ハワードは語った。少女はただ、黙って聞いている。]
『それでも我々は、我々の祖国を愛し、祖国に対して絶対的に味方でなくてはなりません。祖国の勝利を願わねばなりません。』 『けれど…お前は違う。』
[びくり。少女の肩が、僅かに揺れた。]
(330) 2011/11/14(Mon) 00時半頃
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…それは、私が、この国の生まれではないからですか。
[絞り出した声が震えた。知っていた。他の人と、余りにも容姿が違う自分。どう間違えても、この国の人間ではない。まして…足のことがある。]
私が、この国の村ではないから、この国は私の祖国ではないから、違うのですか。 『そう言うことではありませんよ、ロビン。』 なら…! 『貴女は、疑問を感じても良いと言うことです。この国の、絶対的な見方である必要は、無いと言うことです。』 でも、私はこの国で育ったから…! 『えぇ、貴女はこの国の民ですよ。』
[けれど。ハワードは続ける。]
『この国に、縛られる必要も、無いのです。』
[静かに紡がれたその言葉に、胸がずきりと痛んだ。]
(331) 2011/11/14(Mon) 00時半頃
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[ハワードは、続ける。]
『ロビン、聞きなさい。』 …はい。 『真実を、見極めなさい。』 …努力、しております。 『いいえ。まだ、一番すべきことをしていません。』 え…? 『己の目で、隣国を見てきなさい。』
[少女は、息をのむ。思わずうつむいた。しばらくの沈黙ののち、尋ねる。]
…それは… 命令、でしょうか。 『命令では、ありません。願いです。』 …。
(333) 2011/11/14(Mon) 00時半頃
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[再び訪れる沈黙。それから…]
…わかりました。
[少女は静かに頷いた。他に何を言っていいのか、分からなかった。]
(334) 2011/11/14(Mon) 00時半頃
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[静かに部屋を後にしようとする少女を、ハワードが呼びとめる。近付いた少女の手をとり、ハワードは紫の紐を、少女の細い手首に巻いた。それは、ロビンが少女の姿をとって街へ出た時に、部屋に置いて行ったものだった。]
『持って行きなさい。』
[怪訝な顔をする少女に、ハワードは言う。それは、少女の母親の形見であることを、ハワードだけが知っていた。]
『きっと、貴女を護ってくれるから。』
[解放された少女は、無言のまま頭を下げ、部屋を、王宮を、後にした。]
(335) 2011/11/14(Mon) 00時半頃
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[少女は国境へと向かう。何も、考えられなかった。捨てられた、とは思わない。きっと、ハワードにも考えがあるのだと。いや、考えも、大体分かるのだけれど。それでも、何故だろう。とても、空虚な思いなのだった。]
…私は。 (私の意思も関係なく、この国を愛せと言ってほしかったのかもしれない。) [少女は考える。そして、悟った。]
あぁ、そうか。 私は。 この国の民に、なりたかったんだ。 [小さく口にした言葉がしっくりと胸に沁みこむ。父は、私に何でも与えてくれた。私が得られなかったはずの物を、全て。だから、感謝している。感謝しているし…大好きだった。本当の子供でないのが哀しいくらいに。]
(346) 2011/11/14(Mon) 00時半頃
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[けれど、同時に悟ってしまった。どんなに何があっても、私はこの国の民にはなれない。それは、父も、私も、無意識下で、なれないと思っているから。だから…]
[国境近くにたどり着く。ここまでくれば、戦う音が当たり前に聞こえてきた。父は、私ならここをそっと通り抜けられると信じたに違いない。私も、できると思う。できると…]
[少女は、躊躇いなく足を進める。行かなきゃ。私は、私の真実を見つける為に。そう、願う人がいるのだから。私は、あの人の期待に応えたいから。私は…]
(347) 2011/11/14(Mon) 00時半頃
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―間―
ピュー、るる…
るる…
ぴゅ…るる…
[いつもより、早い時間。笛の音が夜の闇に響く。とぎれとぎれのその音は、王宮に届くのだろうか。]
(353) 2011/11/14(Mon) 00時半頃
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心配しないで、父上。 きっと、辿りつくから。 向こうに、辿りつくから… 明日は、この国にいないはずだから、音が聞こえなくても心配しないよね。 だから、今日だけ、今日だけ… 心配しないで、お願い。 大丈夫だから。
(356) 2011/11/14(Mon) 00時半頃
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