315 【La Mettrie〜存在という機械が止まる時】
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[そうだ。 あの時おれは、マーゴお姉ちゃんで手一杯で あの言葉の意味を考えもしなかった。
後に残ったものは全て封じてくれ、と その人は言った。>>2:120 喉から胸元へ走る、紅色の蔦をなぞりながら。 何かに寄生しても危ないから、と。 そして、その人は走り去った。>>2:128 干からびるところを見られないように、と。
あの時は訳が分からなかったことが 頭の中でパチパチとつながっていく。 遺体も、その欠片さえも見つかっていないのに その蔦は、死の匂いを運んできた。]
(53) kumiwacake 2023/01/10(Tue) 22時頃
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[のたうちまわる蔦に、おれは呼びかけた。]
……ジャーディン、さん?
[蔦は、おれの言葉に一切反応しなかった。 よく見れば、まだ発芽したばかりなのか 付け根らしき場所には、種の名残が残っていた。
もしかしたら、全く関係ないかもしれない。 だけど、ジャーディンさんだと考えれば ラルフお兄ちゃんが、わざわざ 食用にもならなさそうなこの植物を 持ち帰った理由が分かる気がした。]
(54) kumiwacake 2023/01/10(Tue) 22時頃
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[蔦は、先程から全く変わらず、 逃げることもできずに苦しんでいる。 この汚染された世界の中に唯一残された、 毒を持たない清らかな水によって。]
……………………。
[横倒しになった甕を持ち上げて、水を汲む。 ばしゃん、と再び水をかければ それは少し流されながら、 一際激しく暴れて、そして── 鮮やかな赤はくすみ、徐々にどす黒く変色して、 やがて動かなくなった。]
(55) kumiwacake 2023/01/10(Tue) 22時頃
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これで、ジャーディンさんは、 少しでも安らげるのかな……
[空っぽの甕を抱え込んで呟いて、 すぐにその考えを打ち消した。
マーゴお姉ちゃん達が、 死してなお教えてくれた。 死者のためじゃない。 おれ自身の心の安らぎのために弔うんだ。]*
(56) kumiwacake 2023/01/10(Tue) 22時頃
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マリオは、えっちな気配を感じた!
kumiwacake 2023/01/11(Wed) 13時半頃
マリオは、フェルゼにむぎゅうした。
kumiwacake 2023/01/11(Wed) 13時半頃
マリオは、ごろんごろーん
kumiwacake 2023/01/11(Wed) 18時頃
マリオは、さてお風呂
kumiwacake 2023/01/11(Wed) 21時半頃
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[すっかり喉が渇いていた。 泉の水をがぶがぶ飲んで、お腹がいっぱいになったら、 中庭に仰向けに寝転がった。 悲しいこと、怖いこと、色んなことが 立て続けに起こって休む暇も無かった。
ぼうっと吹き抜けの空を見上げれば 紫色の毒雲が、その陰影を美しく映している。 大きな鳥のシルエットが通り過ぎた。ヨナだろう。
中庭は別世界で、まさしく唯一残された楽園だ。 さらさらと風が吹き抜ければ 心地良い清水の香りが頬を撫でた。]
(62) kumiwacake 2023/01/11(Wed) 23時頃
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……本当に。 なんでみんな、死んじゃうのかな……
[綺麗な水がある。 芋虫も、食べられる人にとってはご馳走だ。 それでも、一人もここでは生き延びられなかった。 ──なんで?
ふと、先ほどの赤い蔦を思い出した。 あの蔦は枯れた。清らかなはずの水によって。
蔦だけじゃない。外を生きる化け物達も、 もとは安全な水を求めていたはずなのに いつのまに、変化してしまったのだろう。 きっと本人さえ気づかないうちに少しずつ 毒を取り入れて、狂った世界と調和していったんだ。 世界が変われば、栄養源も変わっていくから。]
(63) kumiwacake 2023/01/11(Wed) 23時頃
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[──変わったのは、植物だけ? おれ達人間は?
うとうとと微睡ながら、 気が付けば誰かがおれを覗き込んでいた。 ヨナなのか、フェルゼお兄ちゃんなのか、 死んでしまった誰かかもしれなかった。
おれはうわごとのようにつぶやいた。]
ずっと、不思議だったんだ…… なんでここはこんなに安全なのに、 人が増えて行かないんだろうって……
(64) kumiwacake 2023/01/11(Wed) 23時頃
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[訪れた全員が、あるいは立ち去り あるいは死んでしまうような過酷な場所なら ラメトリーなんて誰も目指さない。 噂は本当だった。清らかな水はあった。 枯れかけてはいたけれど、 まだその時は訪れていなかった。
だけど、ラメトリーにたどり着くまでにも 食べなければ生きていけない。 悪夢を見せる果実を齧り、 ぶよぶよした卵を飲んで 少しずつ、汚染された世界に適合していた。 水の清らかさに耐えられなくなっていたのは、 人間の方だったとしたら。]
(65) kumiwacake 2023/01/11(Wed) 23時頃
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[甲高いヨナの鳴き声の中に、 カチ、カチ、という歯車の音を聞いた。
そういえば、ラルフお兄ちゃんが フェルゼお兄ちゃんは機械か何かで この泉か庭園を守ってるんだと思う、と 死の間際で言っていたっけ>>4:15。
長い長い時をかけて、 水は変わらぬままに人間が変化して 水の清らかさに耐えられなくなったなら── それをフェルゼお兄ちゃんが 数多の命を繰り返しながら守っていたなら あまりにも皮肉だ。]
(66) kumiwacake 2023/01/11(Wed) 23時頃
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[言葉にするつもりは無い。 どうせ、ただの仮定だ。 いずれにせよ、みんな死んでしまうなら 何があっても、残るのは無だけ。 それを、フェルゼお兄ちゃんは埋めている>>2;55。
それに、原因が水だったとしても きっとフェルゼお兄ちゃんのやることは変わらない。
楽園を求めて訪れた人のために、 安らぎを提供する。それだけのこと。>>2:23
おれはフェルゼお兄ちゃんみたいに 命を繰り返すことはできないけれど その心と行いは引き継ごうとしていた>>2:57。
今、この状態になっても おれが提供できるものは何だろう。]
(67) kumiwacake 2023/01/11(Wed) 23時頃
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フェルゼお兄ちゃん……
[覗き込む影がフェルゼお兄ちゃんだったのか そうでないのかは分からない。 けれど、おれの目には フェルゼお兄ちゃんが見えていた。]
おれ、物は何も持ってないけどさ…… ひとつだけ、あげられるものがあるんだ……
[口を開けるのがおっくうで、 言葉の代わりに何度もあくびが漏れた。 起きているはずなのに、 聞いたことのない変ないびきをかきながら やっとの思いで伝える。]
(68) kumiwacake 2023/01/11(Wed) 23時頃
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この、体……あげる。 フェルゼお兄ちゃんが埋めて。 きっと、心が軽くなると思うんだ。 おれで最後だと、思ってるんでしょ?
[埋葬には時間も手間もかかる。 正直に言えば、面倒な作業だとも思う。 それでも、必要なことだ。 フェルゼお兄ちゃんにとって。]
(69) kumiwacake 2023/01/11(Wed) 23時頃
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おれ……姉さんのこと、見捨てたんだ。 あれじゃあ助からない、仕方ないって…… 死ぬところも見れなくて、弔えなかった。
[だから、罪悪感だけが凝ったまま 今もこの体を嘘で包んでいる。 時折姉さんに見られているように 感じる時があるけれど それは見守っている、という感じではなくて おれのことを恨んで、見張っているように感じる。
実際のところは、もう聞けない。]
(70) kumiwacake 2023/01/11(Wed) 23時頃
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姉さんのことも供養できたら、 姉さんの魂と一緒に おれの心も養えたんだろうなって そう思うんだ…… マーゴお姉ちゃん達は、見送らせてくれたから。
[だから、フェルゼお兄ちゃんにも おれのことを見送って欲しい。 おれは来訪者の一人にすぎないから 悲しみを受け入れるためじゃない。
忘れてしまうほど長い時間勤め上げた大役の、 その終焉を実感するために。 肩の荷を下ろすために。]
(71) kumiwacake 2023/01/11(Wed) 23時頃
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[カチ、カチ、カチ。 歯車の音は一定のリズムを保ったまま。 一時も休まずになり続けるその音が、 おれには時の流れのように聞こえた。 決して乱れることなく、逆行もせず、 死に向かって流れ続ける時に。
その流れに身を任せていると 胸の奥底から湧いた言葉が、 泉のようにこぼれ出て、 おれはうっとりと呟いた。]
ああ、それにしても…… お水、おいしかったなぁ……
[──ごちそうさまでした、と。]**
(72) kumiwacake 2023/01/11(Wed) 23時半頃
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マリオは、ラルジャ!
kumiwacake 2023/01/12(Thu) 00時頃
マリオは、なでなでされて目を細めた。
kumiwacake 2023/01/12(Thu) 00時頃
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