197 獣ノ國
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…………、
[――と。 アンティークの棚に置かれたそれに、ジャニスの視線は縫い止められた。
蜘蛛の巣の様に広がる文字盤に、白い蝶がぽつりとあしらわれている。どうやら長針に飾り付けられたゴールドの小さな蜘蛛が、時を刻む度に蝶に近付いていく様だ。長針が12を指す、その時に。まるで蝶に襲いかかる様に、二つが重なる。 決して、趣味の良い物だとは思えなかった。作りもチープだし、本当であれば、贈り物に相応しいとは口が裂けても言えない。
……けれど、気付いた時にはそれを手に取っていた。鎖がじゃらりとてのひらから零れ落ちる。 ネックレスになっているらしいそれは、幾ら小さいといっても"彼"には到底似合わないだろう]
……ま、我慢してもらいましょ。
[ぽつりと小さく呟けば、代金を払って店を出る。 新しい手袋に、綺麗なピンブローチ。そうして、"蜘蛛"のあしらわれた時計。それらを大事そうに身に付ければ、ジャニスはゆっくりゆっくり歩き出した。
――最後に一通だけ。彼へと宛てた便りを電子の波に乗せながら]
(337) 2014/10/09(Thu) 00時半頃
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―――――――――――――― 差出人:ヨハン 宛先:ルーカス ―――――――――――――― 無題 20xx年 10月3日 ――――――――――――――
ねえ、時計を集めてるんだったわよね? お土産に一つ買って行ってあげる。 アナタが気に入るかどうか、分からないけど。
――――――――――――――
(338) 2014/10/09(Thu) 00時半頃
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測量士 ティソは、メモを貼った。
2014/10/09(Thu) 00時半頃
測量士 ティソは、メモを貼った。
2014/10/09(Thu) 00時半頃
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―回想・家を出る直前―
[忘れ物はないか。と辺りを見回した時、目に止まったのは黒い傘。 道すがら返しに行こうかと悩んだけれど、 暗くなった今、明確な『目的地』に辿り着くのは不可能な気がして 代わりに一つ、通信を送る]
(339) 2014/10/09(Thu) 01時頃
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―――――――――――――― 差出人:カリュクス 宛先:シメオンさん ―――――――――――――― 昨日はありがとうございました。 20xx年 10月3日 ―――――――――――――― 昨日は傘を交換してくださって ありがとうございました。 しばらく急な用事で出かけないといけないので 返しに行くのが遅くなってしまいそうです。
シメオンさんがもしよければ、うちの玄関に 扉を開けてすぐのところにありますので
(340) 2014/10/09(Thu) 01時頃
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扉の鍵はあいているので、 ご自由にはいっていただければ助かります。
家の場所は地図を送りますね。
勝手なお願いで本当にごめんなさい
[添付ファイル.地図jpg] ――――――――――――――――――
[手短にメールを打ち終えると 傘立てに傘を置き、住宅街を歩き出した]
―回想・了―
(341) 2014/10/09(Thu) 01時頃
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[仕事の邪魔をしていないという言葉には、安心したように笑って。勉強熱心と言われたら、嬉しそうに無邪気な笑顔を見せるだろう]
できがよかったら褒めてくれるんじゃ無いかと思って 褒められると頑張れるから
[犬は褒められるのが好きなのよ?と運転手には聞こえないように彼の耳へと囁いて。 休息を取れていないことを心配しながらそっと腹に添えられる手に、ふと腹の中の子供を心配しているようだと空想の翼を広げて、一人クスクスと笑う]
大丈夫、体調に問題は無いわ。何かあったら言うって言ったでしょう?
[だから大丈夫、と安心させるために腹の上の手に自らの手を重ねて]
『ネックレスはどんなのが好き?』
[苦笑した顔に、運転手に誤魔化してるのと判断しながら、ふと彼の名前を思い出し、名案だと柔らかく笑う]
錠前の形のものがいいな チェーンの、銀色のもの
[名前で繋ぎとめられるのはとても素敵だと、彼に繋がれている気がするからと、少し甘くなった声でねだって]
(342) 2014/10/09(Thu) 01時頃
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抜荷 錠は、メモを貼った。
2014/10/09(Thu) 01時頃
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―――――――――――――― 差出人:カリュクス 宛先:ヤニクさん ―――――――――――――― ありがとう。 20xx年 10月3日 ―――――――――――――― 少しだけですが 私、飛ぶことができましたよ。
この分ならいつかは 囀れなくても唄えるかもしれません。
そのときには、約束の 私の好きな曲を――――
たくさん練習しておきます。
またいつか、お話できる時まで。
(343) 2014/10/09(Thu) 01時頃
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[引き結ばれた口元。視線の先>>330を辿っても逃げる白い後ろ姿があるだけだ。]
そんなに怖い顔しないでちょうだい。せっかく被ったおばあさんの皮が剥がれるわよ、狼失格ね。
誰かれ構わず手紙を振りまく程尻軽ではないので……これで充分です。
[悪戯そうな笑みを浮かべて、端末の後ろに付いているレンズを相手に向ける。
パシャ。水溜りに態と踏み込んだ時と似た音が響く。…から見える液晶画面には、相手の顔が映り込んでいるだろうか。 映り込んでいたのなら、端末をそそくさとポケットに隠してしまって。……後でこの写真をカナリアさんに送ろう。 下手な文章よりも、何倍もいい筈だ。
恐らく、相手の顔は嘘ではないだろうから。]
[写真が撮れようが撮れまいが、端末は仕舞う。 言い訳が欲しいのか>>332という問いに、浅く息を吐き出した。 目の前では、噴水が落ちてはけたたましい音を立てている。]
言い訳が欲しいのは貴方なんじゃないの? もう耳を隠さないのは、誰かに自分の事を糾弾して貰いたいから?
(344) 2014/10/09(Thu) 01時頃
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目に見える呪いを貴方は手に入れたのよ。誰にも解けない呪い。 たぶん貴方だけでは、貴方の望む物では、もしかしたら他の誰にもどうすることも出来ない………
[言い過ぎた、と。 視線を伏せて隣を見る。]
………代わりたいわ、貴方の全てと。 貴方は、今、その姿で幸せ?
(345) 2014/10/09(Thu) 01時頃
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[月の光の差し込める薄闇の中、ぼんやりと月を眺めてどれ程の時間が経っただろう。 傍に置いた懐中時計の針を見たのなら、思いの外時間が過ぎていて――"とんだ時間泥棒だ"、と月に喩えたかの人へと捧げる恨み言を胸に。 そうして漸く、その月から目を離したのであれば。図ったように、携帯端末が音を立てて震えはしただろうか。]
……、土産か。 それは嬉しい。どんな時計を…贈ってくれる?
[そろそろ見慣れたその名とアドレス>>338に、知らずのうちに顔を綻ばせ。返信の代わりにぽつりと言葉を零しながら、眉を寄せて目を伏せる。 ――嗚呼、折角。今宵の月が、恋しさをほんの僅かにだけ慰めてくれたと言うのに。 このタイミングで送って来るとは…これじゃあ本当に、ひと時たりとも彼を浮かべぬ事など出来ないじゃあないか。]
(+20) 2014/10/09(Thu) 01時頃
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………、あの時は、太陽が昇らなければ良いと思ったものだが。
[あの夢の一夜へと、想いを馳せて。あの時話したささやかな趣味の話を、彼が覚えてくれていた事に歓びを。 彼のくれるという時計は、果たして如何なるものなのだろう。年甲斐も無く踊る心を宥める気など、今はとてもありはしなくて。 全て置いて来たあの時計達も、また集め直さねばなるまい。そしてその最初の一つが…彼からの土産であるのなら。 それは何と、幸せな事だろう。]
……今は、太陽が昇るのが…何よりも、待ち遠しいよ。
[呟いた声に、最早皮肉も余裕もありはしない。只々その身を焦がす恋しさだけを滲ませて、最後にひとつ呟いた名は、月明かりの中へと溶けて行きはしただろうか。]*
(+21) 2014/10/09(Thu) 01時頃
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―――あゝ、夜が更けて行く… 彼の姿も見えぬまま。
(346) 2014/10/09(Thu) 01時頃
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愛人 スージーは、メモを貼った。
2014/10/09(Thu) 01時頃
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