151 雪に沈む村
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ご老体。世話になった。
[改めて素の口調でオセローに朝食の礼を言う。そうしなければ気が済まなかった。
“カルヴィン”は礼儀を欠いた子供だが、ピーターは筋を通す男だ]
また――
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また一緒にメシ食おうなー! いってきまーす。
[行っておいで>>24と見送るバーナバスに、ぶんぶん手を振って店を後にする]
ううっ。さぶい。
[ぶるり、と身体を震わせウォーレンの後についていく。 身体を動かすのがすこぶるだるかった。 普段ならウォーレンと子供らしく雑談に興じるところだったが、今はその元気がない。 ふと自分の手を見ると]
―――ひっ。
(39) 2013/11/25(Mon) 22時頃
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その手はびっしりと鱗で覆われていた。
(40) 2013/11/25(Mon) 22時頃
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……あ。あ。
[息が詰まった。苦しい。 もうそこまで魔力が消耗しているのだ。 人間の形を保てなくなるほどに]
……っ。
[ウォーレンに気付かれないように、そっと両手のポケットの中に入れる]
なあ、ウォーレン。お願いがあるんだけど。 工房に着いたら手袋を貸してくれないか。
[いつも通りを装ったつもりだったが、声が震えていた]
(41) 2013/11/25(Mon) 22時頃
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[さくさくと雪を踏み鳴らし歩く。 工房まであと少しというところで、カルヴィンの小さなうめき声が聞こえた。 振り向くと、カルヴィンは手をポケットに突っ込んで。]
――手袋な。かまわんよ。
[そう言って工房への足を速める。 ちらりと見えた鱗には、あえて触れずに。
ドナルドが、己の――火龍の鱗のブーツを渡したがった理由が、何となく分かった。]
(42) 2013/11/25(Mon) 22時半頃
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[工房ではソフィアとカルヴィンと何を話しただろう。 カルヴィンも炉の火が煌々と燃える、暖かな工房では多少元気を取り戻したかもしれない。
ソフィアから茶葉を受け取る。 今度は正しく、一冬分――より少し多いのは、おまけだっただろうか。
ほかに誰か尋ねてきたならば、その者とも世間話をしながら、旅支度をする。 とはいえ、昨日のうちにカバンに必要なものはつめていたし、たいしたことではない。 ブーツを履いて、外套を羽織る。
用意ができたなら、教会に立ち寄り、ドロシーに挨拶してから村を発つだろう。]
(43) 2013/11/25(Mon) 22時半頃
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―回想・―
(まったく…不器用な奴よ。)
[聞こえてきた囁きに、やれやれと嘆息する。
どちらの振舞いでも結局互いの背中に手が届かないその振舞いに。]
……やれやれ。
[少年の姿をした同族を見送って、
ずずり、とスープを一口すすった。]
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―教会への道程―
[バーナバスはかつて、東の果ての国で出会った男に、友情の証として髪の毛を一房いただいたことがある。バーナバスはお返しに、龍の血を一杯贈った。空が続く故郷の冬は、龍にとって悩ましき問題だったからだ。 男の髪を編みこんだ外套を作り、若き日のバーナバスは…バルナは冬でも活動できるようになった。 その外套のお陰で、群れからはぐれた有翼族の子を救えたこともあった。 そんな外套も、幾年もの時代のなかで劣化し、繕い直された今では腹巻き程度にしかなっていない。]
うぅっ…流石に寒いのぅ…
[カルヴィンは大丈夫だろうか。 しかし、この村には『紅蓮の龍の加護』がある。 同族だから助けるだろう―――などと希望的観測はしないまでも、 あの男なら、見捨てることはしないだろう、と老龍は考えていた。]
(44) 2013/11/25(Mon) 23時頃
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『――手袋な。かまわんよ』>>42
[ウォーレンの返事にひとまず安心する。 工房へ向かう足が速くなったのは気のせいだろうか。 やがて工房が見えてくると]
おー。ソフィア昨日ぶり!
[工房の玄関に突っ立っているソフィア>>21に、軽く手を振ろうとして――自分の今の手の状態を思い出しぐっと堪える]
なにボーっとしてるんだよー。って、あー!!
[ソフィアの背後に見えたのは。二組のブーツ。一組には鮮やかな赤い宝石が、もう一組には煌めく黄色い石が丁寧にあしらわれている]
(45) 2013/11/25(Mon) 23時頃
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すごいすごい!履いても良い?
[ウォーレンの返事を聞かずに、工房に上がり込んでブーツを履き始める。子供なのだから、我慢できないのは仕方ないのだ]
じゃーーーーん。
[どや、とばかりにソフィアとウォーレンに見せつける。 足がポカポカと温かい。これならあと少しは]
――保つかな。
[心の中の呟きが漏れて、はっと口を噤む。 ウォーレンから手袋を差し出されれば、]
ありがとう。
[2人に見えないようにササッと手袋をはめると、ようやく生きた心地がした。 緑色の鱗に覆われたそれは、子供には不釣り合いなものだったから]
(46) 2013/11/25(Mon) 23時頃
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―教会―
[はたして神父は居ただろうか。 既に冬支度をすませ教会を離れていたかもしれない。 何の因果か教会で会ったとすれば、『いつ来ても姿の変わらない』二人なら、お互い何かを察して会話をすることだろう。]
ああ…花を持ってくるのを忘れてしまったな…
[手ぶらの手を見て、今更気付いたかのように呟いた。 神父が見ていれば、いつかも同じことをしていたと笑うだろうか。]
まあ、いつも挨拶に花なんか持っていかんかったしのぅ…
[自嘲気味に優しい笑顔を作りながら、教会の裏手へと回り込む。 裏手の墓地に先客がいたのなら、会釈をして目的の墓石の前へ。]
(47) 2013/11/25(Mon) 23時半頃
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―教会裏の墓地― >>33 …うん、そーだな。
[応援するように背中を叩いてくれたクシャミに、少々顔を紅くして頷く。 彼がついてきていたことは承知していたが、今の話をすべて聞かれていたかと思うと、急に照れくさくなる。 はぐらかすように、話題を変えた。]
つきあってくれてありがと! そろそろいかねーと。 クシャミにいちゃんはどこまで?
[荷物を持ってくれるのはありがたいが、小屋まで付き合わせるわけにはいかないだろう。 甘えるのは、彼の目的地までだ。]
(48) 2013/11/25(Mon) 23時半頃
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靴磨き トニーは、メモを貼った。
2013/11/25(Mon) 23時半頃
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―回想・工房>>28 ジリヤ―
[こちらが爺さんに頼みごとをする前だっただろう。 彼女に火種の話を持ち出されれば、あぁ、とすぐに合点が行く。]
あぁ、そうだったな…
[呟くと、指先に炎を灯すのだった。 その火種をドリュアスに差し出せば、くいっと首をかしげるようにして口角を上げる。]
はいよ。 後は、任せて良いんだろう?
[火種を提供するのは全く区ではないのだが、その扱いとなれば、どちらかと言うと破壊専門の男の得意とするところではない…早々に押し付けるが勝ちだろう。 ドリュアスの方も、それを知ってか知らずか手早く処置をしてくれるのだった。
…いつ見ても、見事だ。 あんな精緻な魔法は男には扱えない。]
(49) 2013/11/26(Tue) 00時頃
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―回想・工房>>10 ウォーレン―
[要件が終われば、工房を後にしようとする。 段々と勢いの増す雪を見れば、速いところ眠る準備も整えた方が良いだろうと思った。 それと…眠る前に、会っておきたい相手がいたから。
長い時をくり返しくり返し生きてきた男にとって、一年の眠りなどはそう大きな意味をなすものではないのだが、今年辺りは、もしかするともしかするかもしれない。 そう、漠然と思う。]
じゃぁな、爺さん。 恩に着る。
[ブーツの件を快く引き受けてくれた相手にそう挨拶をすると、工房を辞そうとして…ピエールの店に行くことを聞けば、軽く頷きのみを返したことだろう。]
(50) 2013/11/26(Tue) 00時頃
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…そういえば、あの神父はここの教会の神父だったのか。
[つい昨日(>>3:48)レストランで会った神父と教会が、老人の脳内で符合する。 違う場所で見たから思い出せなかったものの、教会にいればなるほど確かに何度か顔を合わせたことがあるような気がした。]
[墓石に刻まれた名は、最早文字が潰れて読めないほどにボロボロだった。 思えば、これを教会の隅に置かせてもらったことがこの教会に足を踏み入れたキッカケだったかもしれない。]
(51) 2013/11/26(Tue) 00時頃
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キャロライナ・ディズディモーナ、ここに眠る…
[文字の体をなしていない、石の表面のでこぼこが本来何を意味していたかを、この老人は知っている。 何故か。何故なら。]
まったく、アレから何年経ったんだろうねぇ… もう数えとらんよ。
[200年近く前のこと、それまで誰の手も触れられなかった彼女の墓が、突然野犬に荒らされるようになった。 それは隠蔽の魔術をかけていた老龍の、衰えの顕現の一つ。 慌てた老人は村の教会へ棺と墓石を納め、墓場の隅を間借りしたのだった。]
(52) 2013/11/26(Tue) 00時頃
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―回想・夜・レストラン―
[ウォーレンの言葉を誘いと受け取り、ピエールの店へと顔を出す。 特別何かを食べるという事もないが、ドワーフと酒を酌み交わしたかもしれない。 勧められれば何かを食べることもしただろう。
男にとっての食事とは、完全に娯楽行為でしかなかったのだが。
そうして夜も更ければ、独り、山へと姿を消すのだった。 この冬を、眠って過ごす場所を見つけるために。 その巨大すぎる身体故、男はこもることのできる洞窟などは持たなかったのだ。]
(53) 2013/11/26(Tue) 00時半頃
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あ、ウォーレンさん、お邪魔してます! ……あれ? カルヴィンも一緒だったんだ。おはよー。
[待っていると、ウォーレンがカルヴィンを引き連れて帰ってきました。持ってきたお茶の葉を渡します。今度は何も言われないと良いのですが。]
……え、と…すいません、ウォーレンさんはお出かけでしょうか? 雪は、その……。
[ウォーレンが工房でいくつか荷物をまとめているようで、気付いて声をかけます。彼が寒さに強いのかは知りませんが、暖炉の感じから察するにそれほどでもないのでしょうか、しかしこの時期にお出かけとは下手すると帰る時困るのでは? と考えます。]
あの、あのあの…ウォーレンさんももしかして旅に出るのですか……?
(54) 2013/11/26(Tue) 00時半頃
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―朝―
[何とかその巨躯の収まりそうな場所を見つけて一晩、過ごしてみる。 その場所に満足が行くと、男は再び村へと姿を見せるのだった。
男の歩みは迷わず、昨晩過ごしたピエールの店へと向かう。 男がその気配を間違えることは、絶対になかった。 店へと入れば、彼の姿を目にする。
カルヴィンも、ウォーレンも立ち去った後、一人残っていたであろう、老龍。]
…やぁ、爺さん、久しぶりだな。
[男はどこか、懐かしむような、慈しむような、柔らかい表情を目元に浮かべる。 同じ龍である以上、己よりずっと昔から生きてきた彼は、男にとっては敬い慕う対象であったのだ。]
(55) 2013/11/26(Tue) 00時半頃
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店番 ソフィアは、メモを貼った。
2013/11/26(Tue) 00時半頃
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なぁ、爺さん。
[穏やかな口調で話しかけつつ、老龍の向かいの椅子に腰を下ろす。 老龍が覚えていたかどうかは分からないが…男にとっては前の生、転生前にも男は彼に会っていた。 それは、一度や二度ではなく、繰り返した生の中で度々、彼に会うことはあったのだ。それはどんな状況であったか、その時どんな姿であったかはわからない。けれど。 いつも変わらず、男の方が後に生まれ、そして先に死んでゆくのだ。]
…また、先に逝きそうだよ。 この冬は超えられると思うが…万一もありうるかもしれねぇ。
[そう、ぽつりと漏らす。 肉体の死に対して恐怖や忌避はまるでない。 けれど…どうしたって何か思わずにはいられないのだった。]
もし、春になっても俺が降りてこなかったら…きっとその時だったんだと思ってくれよ。 でも…また、会いに行くからさ。
[そう、小さく笑って見せた男の言葉は、もしかしたら老龍にはたわごとに聞えてしまったりするのだろうか。 なんにせよ、自己満足ではあるのだが…]
(56) 2013/11/26(Tue) 00時半頃
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[老龍以外には、別れのような言葉を言うつもりは無かった。 まだその時ではないかもしれなかったし、転生というものを他の者がどう受け止めるか分からなかったからである。 死ぬのとは少し違う、しかし相手によっては湿っぽくなってしまう。 それを男は嫌った。
老龍と何らかの言葉を交わした後で、男は再び山へと帰る。 そして、真の姿へと戻ると、その曲を山間に横たえた。 ゆっくりと閉じられたその瞳は、右は紅だが左は黄金。 何度生まれ変わって姿が変わっても、鱗の色とその瞳の色だけは変わらない。
畳まれた翼、ゆるりと丸められた尾の上に、しんしんと雪が降り積もる。]
(57) 2013/11/26(Tue) 00時半頃
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むぅ、別にボーっとしてなんか……あ、その靴カルヴィンのだったんだ。いいなぁ。
[喜んでブーツに足を入れるカルヴィンを見て羨ましそうな声をあげます。使っている皮はなんでしょう? あまり見覚えのないものです。]
随分丈夫そうなブーツだね……。雪が染みたりしなさそうだしこの宝石も……ん?
[ブーツをつけてはしゃぐカルヴィンに近寄り、足元にしゃがんでブーツを観察します。が、ふと気づいて顔を上げ、下から彼の顔を見上げます。]
カルヴィン、顔色悪いよ? 風邪?
(58) 2013/11/26(Tue) 00時半頃
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[やがて、赤龍の鱗の上で一旦溶けた雪が、再び凍りつくと、巨大な赤龍は氷の中に閉じ込められた。
春が訪れ、暖かな日差しが氷を解かすまで、龍は静かに眠り続けることだろう。 誰にも妨げられることの無いままに…]
(59) 2013/11/26(Tue) 00時半頃
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[昼前には墓地に着いただろうか。
墓地にはピエールの店にいた老人がいただろうか。 軽く会釈をすると、一つの墓の前に佇み、その雪を払う。
行ってくるよ。
それだけで十分だった。 しばし感慨深げに墓標を眺めれば、くるりと踵を返す。]
(60) 2013/11/26(Tue) 00時半頃
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[旅支度のドワーフは、カバンをかけ、背負子を背負って、まだ雪の浅い街道を歩み行く。 数日で買い出しを終え、工房に戻れば、長い冬が始まるだろう。
工房の炎は消えない。 それは村に戻る者を待ち、新たな来訪者を待ち続ける。
(あと、何度冬を迎えられるかな。)
[ドワーフの寿命は250年から300年ほどだ。 自分はあと何度冬を迎え、何度人々を迎えることができるだろうか。
石畳の街道から空を仰げば、青いガラスのように澄んでいた。 これからもっと寒くなるだろう。**]
(61) 2013/11/26(Tue) 00時半頃
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-回想・ピエールの店を出る前-
[また、扉を開く音。 どうやら、老人は東の国に伝わる福の神というやつなのかもしれない…と自分のことを自画自賛してみる。 しかし、扉を開いて入ってきたのは、眼帯をした高身長の男。]
おぉ、『紅蓮』の…! ほぅ、また会ったのぅ。もう何度目だったかなぁ。
[気さくに応じる。 どのような容姿相貌であったところで、この龍の根本は変わらない。 何度も巡り合い、何度も別れた。思えば、一番この老龍と長く接してきたのはこの同族の者だったかもしれない。 転生の時が近いと口にする男に、明るい口調で答える。]
はっは、お互い長生きはしたくないなぁ。 気弱になるわ。
(62) 2013/11/26(Tue) 01時頃
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[バーナバスは快活に笑い飛ばすものの、目の前の男の気持ちはよく分かった。 バーナバスにも、己が境遇を恨み、呪いを呪い、冬を越せるのかと恐怖した日はある。 現存する龍族の誰よりも幾重もの冬を越えてきた年季がある。]
そうさなぁ…そのときは、カルヴィンが悲しむかものぅ。 旅に出たと伝えることにでも…するかなぁ。
[そんな、保険をかける。 目の前の男、ドナルドが『もしもの時のために』何か伝えたいことがあれば、バーナバスは聞き届けるつもりだ。]
(63) 2013/11/26(Tue) 01時頃
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またいつでも会いにこい。 私はずっとここに存在し続ける。 だから安心して―――眠れ。
[転生、ではなく、冬眠。老龍は敢えてそう表現した。 浄火を体に宿す紅蓮龍に一時の別れを告げ、レストランを離れる背中を見送った。]
………また、な。
[その声は扉の向こうに届くだろうか。 欲言わば、風に乗って、春先の目覚めにまで届かないだろうか。 残念ながら、老いたる存在に、そんな力は、無い。]
(64) 2013/11/26(Tue) 01時頃
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―回想:レストラン>>62 バーナバス―
[転生の時は、世の理に組み込まれた男には選べない。 生まれ変わるときも、空白の時間はさほど長くないとはいえ、やはり選べない。 そして、転生する時の姿も、場所も、また選べないのだ。 どこへともなく紅蓮の卵が現れ、そこから孵る。 そして、自由にどこへでも飛んでゆけるようになるには、数十年ほどかかる。]
そう…そうだな。 旅…そう、伝えておいてくれ。運命に導かれるまま、とでも。
[ほんの少し、寂しげな色が瞳に揺れればそう、言づけることにした。 それから少し考えて…]
もし、そうなったら… ウォーレンに、俺のやった種火を大きく燃やし続けてみてくれるように伝えてもらえねぇか。 もしかしたら…そこを目印に転生できるかもしれねぇから。
[それは、本能的な思いつき。 けれど、何故だか正しい気がして…]
(65) 2013/11/26(Tue) 01時頃
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[店を発つ男の背にかけられた言葉は、暖かな響きを帯びていて。 あぁ、会いに来て良かった、と男に思わせるのだった。]
おやすみ、爺さん…
[そう、小さく呟いた男の顔には、どこか穏やかな笑みが浮かんでいた。 体内に燃える炎とは別の温もりを胸に抱きつつ、赤龍は眠る…暖かな春を夢見つつ…]
(66) 2013/11/26(Tue) 01時頃
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