308 【R18】忙しい人のためのゾンビ村【RP村】
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人
狼
墓
少
霊
全
ワットに1人が投票した。
ヨーランダに3人が投票した。
ヨーランダは村人の手により処刑された。
時は来た。村人達は集まり、互いの姿を確認する。
ヘイタロウが無残な姿で発見された。
村人達は自らの過ちに気付いた。
人狼達は最後の食事を済ませると、新たな犠牲者を求めて無人の村を立ち去っていった。
少しずつ世界を蝕んでいく絶望のなかで、
人々は、悔いのない選択ができたのだろうか
(#0) 2020/10/27(Tue) 00時頃
戦った者、守った者、逃げた者
壊れた者、助けた者、救われた者
失くした者、託された者
愛した者、愛された者
(#1) 2020/10/27(Tue) 00時頃
その先に、緩やかな滅亡が待っていたとしても
懸命に生きようとする人々がいた
(#2) 2020/10/27(Tue) 00時頃
電子の海には、その記録が 今も確かに残っている
(#3) 2020/10/27(Tue) 00時頃
ヤカモト ―― gurik0
フローラ・ムーア ―― アリス
兵太郎 ―― kulenahi
串谷 秋 ―― さねきち
ビアンカ・エドワーズ ―― nabe
竹内 美代子 ―― sainos
瑚宮 瑠璃 ―― matsuko
ミケーロ ―― Pumpkin
秋野 春路 ―― nordwolf
夜灯 縁 ―― kaomozi
四浦 ユキ ―― 葵
和田 努 ―― rinco
(#4) 2020/10/27(Tue) 00時頃
忙しい人のためのゾンビ村 **
(#5) 2020/10/27(Tue) 00時頃
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生きてるぅ?
「…………………死んでる」
ははっ、まだ息あんね。
[がらん、と血にまみれたネイルハンマーを 取り落とした。 ショッピングモールの入り口。
枯れ葉みたいに積みあがるゾンビの亡骸をわき目に 死にかかった俺と元帥は 鉄柵に凭れかかって空を見上げてる。 どんなに世界が滅亡に瀕したって空は青いままだ。 いや、いっそ、人間の営みが無くなった分、 こうなる前より明るく澄んで見えるくらいだ。]
(0) さねきち 2020/10/27(Tue) 06時半頃
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[綺麗ね、とぼやいて、体中の痛みに呻く。 噛み痕もたくさん。ひっかき傷もたくさん。 出血が多すぎてゾンビになる前に死にそう。 今動けているのは脳内麻薬のおかげだろう。]
お前とも長い付き合いになったなあ、元帥
「おっ、お別れモードか? まあほぼ死にかけみたいなもんだしな」
[騒動があってからずっと冷たい目をしていた元帥は 今になって、以前の穏やかな顔つきに戻っている。 ゾンビを殴るうちにつきものでも落ちたのか。 ……諦めがついたのか。
ポケットから錠剤の瓶を取り出して俺に見せる。 睡眠導入剤、と書いてあった。]
(1) さねきち 2020/10/27(Tue) 06時半頃
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元帥知ってるかにゃ。睡眠薬じゃ自殺ができない 「知ってる。単純に死ぬなら寝ながらがいいだけだ。 お前もどうだ?」
あーー…………そうね。 俺にもちょーだい。 [俺はその錠剤を受け取る。 水もなく薬を飲むのは苦労した。
いくらか噎せた後、ネイルハンマーを拾い上げた。 入り口に置かれた自販機を無理やりこじあけて 中身を物色すると、 そこに残っていた一缶だけを携えて戻ってくる。
笑って元帥にそいつをぶん投げた。]
(2) さねきち 2020/10/27(Tue) 06時半頃
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「あ?」
[真っ赤な外装。 映画鑑賞によく合う甘いお味のジュース。 コカ・コーラの缶一つ。]
(3) さねきち 2020/10/27(Tue) 06時半頃
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[「いいのか」って目で見てくる元帥に 顎で「さっさと飲めよ」と指示してやった。 生ぬるい炭酸が噴き出す様子に 元帥は慌てて飲み口に口をつける。
俺は少しの間それを眺めていたが、 元帥がコーラを飲み切る前に、缶を奪って一口。 生ぬるい人工の甘さが口の中に弾けた。]
(4) さねきち 2020/10/27(Tue) 06時半頃
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「おい、お前回し飲みはやべーって」
一缶しかないんだから仕方ないだろー それに、感染っつってももう今更じゃん
「……それもそうかあ」
[ぎゃはは、と俺達は笑う。
たった十数日前は何の感慨もなく飲み干していたそれを すぐに干してしまうことはせずちびちびと、 一口飲んだら相手に渡し、 一口飲んだら相手に渡しを繰り返した。]
(5) さねきち 2020/10/27(Tue) 06時半頃
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[ほんとうは、秋葉原のどこかの店に赴いて 酒なりなんなり飲みたいような気分だったんだけど これも悪くない。 人類の滅亡にコカ・コーラはよく合う気がした。
元帥が「ノート、持ってるか」と言うから 背中のリュックに放り込んでおいたそれを手渡す。 元帥はぺらぺらとよれたページをめくると まっさらな頁に「クシャミ&ネコ元帥参上」と書いた。 やたら可愛い猫の絵も添えて。
俺はそれをやっぱり笑って眺めて、 ショッピングモール入り口の窓辺に置いてみる。 少しくらいは、雨風をしのいでくれるといいけど。]
(6) さねきち 2020/10/27(Tue) 06時半頃
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結局、お前、名前なんていうの?
「んー? 神崎。神崎元信。 リアルの名前なんか意味ないだろ。」
あは。神崎。神かあ。ネコと和解せよ? 俺には意味あんの
[柵に座っていた俺は、立っているのもだるくなって ずるずると地面に座り込む。 もう一口しかなくなったコーラを元帥に渡そうとすると 元帥も元帥で地面に倒れてしまっていた。 諦めて残った一口を飲み切ると、 真っ赤な缶を俺達の間に置く。]
(7) さねきち 2020/10/27(Tue) 06時半頃
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元信ー。もとのぶ。 俺達、友達って言っていいんだよな
「少なくとも、俺にとっては」
へへ、そっか。ありがとう。 「今更なんだよ。気持ち悪い」
うわ辛辣ゥー。モテませんわよ。
(8) さねきち 2020/10/27(Tue) 06時半頃
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なー、元信。目ぇ覚めたら全部夢だった、なら、 最初に何する?
「見たものをSNSに投稿」
ブレなすぎ
「あとは、……あいつに会いにいくかな。お前は」
恋人さんか。そりゃ会いにいかなきゃな。 俺はーー……うーん。母さん父さんに電話して、 そっから、やっぱ友達に会いにいくかなあ。 お前含めて。 感謝したいことも謝りたいこともたくさん
「ラップみたいなこと言ってんなよ」
うるせえよバカ こっちは真剣なのー
(9) さねきち 2020/10/27(Tue) 06時半頃
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……なあ、元信。空、めちゃくちゃ綺麗だな
「…………ああ、そうだな。 見た事がないくらい、青くて、綺麗だ」
SNSに上げたらたくさんgoodが貰えちゃったりして ……でも、上げなくても、きっと、見えるよな。
世界のどっからでも、この空は見えてるはず 「……………きっと、そうだよ」
(10) さねきち 2020/10/27(Tue) 06時半頃
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なー。元信。元信、もとのぶ。
…………元帥。
[答えはない。 傍らの人を見ることはしなかった。
ただ、最期の返答のように、 俺の手にいつのまにか触れていた元帥の手を握って どこまでも青い、蒼い空を見上げた。]
俺達、ひとりじゃ、ないよな。
[SNSをのぞき込めばいつも誰かがいたように、 この青い空の下死んでいく俺達は、きっと一人じゃない。 だから大丈夫。怖くなんかないよ。]
(11) さねきち 2020/10/27(Tue) 06時半頃
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[静かに笑って目を閉じた。*]
(12) さねきち 2020/10/27(Tue) 06時半頃
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[習慣めいた仕草で スマホの電源をいれてパスワードをいれる。
相変わらず、飽きもせず、 サングラス野郎はレイバンのサングラスを売りつけているし、 SNSを始めたばかりの推定おっさんは騙されかけてるし それを遠巻きに眺めるように 海外や日本の女の子たちが別のことを話してる。 秋葉原にある店の宣伝。 今日の晩飯に使う肉のアンケート。 最近新作がでたマジモンの絵。
そういう日常らしい投稿の間に 風にそよぐ広大な大豆畑の写真や 晴天の下笑う紛争地域の子供たちの写真。 ねこじゃらしで遊ぶ愛らしい猫の写真に、 庭で遊ぶ犬の写真が流れて行ったりする。]
(13) さねきち 2020/10/27(Tue) 06時半頃
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@_SneezeΣ:3X 謎の猫X 本日×時からゲーム配信します。コラボで。 見に来てね!Σ:3
[って、俺は相変わらずの様子で投稿すると、 ゲームの画面を起動して配信をはじめた。]
……っでさー、長年の片思いは幕を閉じたってわけ
「言わない方が悪いな。そりゃ」
元帥〜!傷ついている人に 正論言っちゃ駄目って教わんなかったのかよー!
[げらげら笑いながら俺達はサバイバルゲームをしている。 俺達チームが生き残ったのを見て、2人してくだらなく喜んでから 「悪い、そろそろ時間だ」と配信を切り上げた。]
(14) さねきち 2020/10/27(Tue) 06時半頃
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「なんか用事があったか?」
あー、ごめんごめん。
友達の結婚式なんだ。 参加はしねえんだけど、見に行かなきゃ。
(15) さねきち 2020/10/27(Tue) 06時半頃
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[結婚式って何着ていきゃいいんだ? 結局、いつもの猫耳パーカーを着たまま 俺はいつもの公園の方角に向かってる。 公園があった場所はいつのまにか教会になっていて 真っ白な石畳の上に新郎と新婦が立ってる。 俺はそれを、夕暮れを眺める時みたいに眩しげに見つめた。 2人に近づいていく。 2人は、俺を見て昔のように笑ってた。]
(16) さねきち 2020/10/27(Tue) 06時半頃
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おめでとう。 やっぱ、沙良はドレス似合うなあ。 ……いやいや嘘じゃねえって。ほんとに。 青空の中の太陽みたいな……やっぱ可愛いな。 進さあ、いいヤツだけど寂しがりで優柔不断だから 沙良がちゃんと支えてやってくれると嬉しい。
……進。 色々、当たってごめんな。 でも勝てなくて悔しいって思ったのが本当。 俺が沙良を譲ったんだから 泣かせたら絶対許さないからな。 …………なんて、な。お前なら大丈夫だよ。 ちょっと衣装には着られてる感じあるけど。 ちゃんと新郎やれよぉ?
[明日なんかこなければいいって思った。 それ以上に、俺は2人のことが大好きで ……幸せになってほしかったよ。]
(17) さねきち 2020/10/27(Tue) 06時半頃
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[秋、秋君、って2人が呼びかけてくる。 スピーチをしてほしい、なんて言ってくるものだから 俺は笑って首を横に振った。
ごめんな。 俺は、たくさんたくさん殺したから、そこにはいけないんだ。 たくさん、人だったものを殺してしまったから。 ひとごろしじゃない、って言ってくれた人はいたけれど。]
進。沙良。――どうか、どうか幸せにな。
[どうか君たちの最期の思考のひとかけらが 幸せなものでありますように。]
[祈りを捧ぐ。 ――――晴れ渡った青空に、教会の鐘の音が響いた。]*
(18) さねきち 2020/10/27(Tue) 06時半頃
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[蠅の羽音がする。]
(19) さねきち 2020/10/27(Tue) 06時半頃
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[真っ赤な缶のふちをそぞろ歩いていた蠅を 緩慢な動きの手指が叩き潰した。
窓ガラスが割れ、入り口が壊れ、 雨風の侵入を許して見る影もないショッピングモール。 その入り口で、ひとつ、ゆらりと人影が起き上がる。
傍にあった死体を一瞥すると 何か食欲でも耐えるようにガチガチと歯を鳴らし そのまま踵を返して歩き出した。]
(20) さねきち 2020/10/27(Tue) 06時半頃
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[蠅の羽音が響いている。]
(21) さねきち 2020/10/27(Tue) 06時半頃
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[黙示録の鐘が鳴った後のように 荒れ果て、人通りすらない都内を その人影は――動く死体は、影法師のように歩き続け ふと、空を仰いだ。
人の営みの耐え失せた青い空。 たなびく白い雲が煌めいて、 まるでウェディングドレスの裾のようにも見えた。]
(22) さねきち 2020/10/27(Tue) 06時半頃
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…… あ゛
(23) さねきち 2020/10/27(Tue) 06時半頃
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[死体は笑った。 無邪気に、まるで子供のように笑って 誰もいない終わった世界をひとり、歩き始めた。]
(24) さねきち 2020/10/27(Tue) 06時半頃
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[――――――――After Zombie Apocalypse 滅亡のあとに残ったものは、]**
(25) さねきち 2020/10/27(Tue) 06時半頃
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[ どうしたって、日常はやってくる。]
(26) sainos 2020/10/27(Tue) 17時半頃
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[ キッチンのテーブルに置かれたカセットコンロ。 その上に置かれた鍋に私はレトルトカレーを入れる。 少し水を足して、折ったバスタを入れると コンロに火をつけた。]
ガスそろそろ終わりかな。
[ そう独りごちると、カセットコンロの火から 器用にタバコに火を移す。 この家に転がっていた、セブンスター。 恐らくは、この家の父親が隠しておいたカートン。]
(27) sainos 2020/10/27(Tue) 17時半頃
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[ パスタを一本割り箸で取り出し、食べる。 火は通っているようだ。]
───よし。
[ カセットコンロの火を止めて鍋を下ろす。 タバコは灰皿がわりの夫婦茶碗に置いて、 ハフハフいいながらカレーパスタを食べた。]
(28) sainos 2020/10/27(Tue) 17時半頃
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[ ──あれから。
あれから、どのくらい経ったのかわからない。 私は焼け跡のマンションの部屋を、 さらに隣の真新しい建売の一戸建てを。
そのあとは、もう順番に。
鍵が開いている部屋へ入って、食べ物を探す。 3つ隣の部屋で見つけたアウトドア用の 小型シャベルと折りたたみピッケルは 割とありがたかった。
時々家主だった"それ"に出くわした。 その時はなるべく逃げた。 あいつら動きはとろいのに力は強くて、 一度死ぬかと思ったから。]
(29) sainos 2020/10/27(Tue) 18時頃
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[ 住宅街はあらかた住民が逃げたか、 あるいは───"あれ"になったか。
何せ、存外人がいなかった。 生きてるのも、死んでるのも。
たまにガチガチにバリケードを固めた家や、 よくわからない物音を立て続ける開かずの部屋、 クローゼットに大量のガムテープが貼ってある家。
恐らくその住民が、"あれ"に何とか対抗した痕が 生々しく残っていた。]
(30) sainos 2020/10/27(Tue) 18時頃
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[ 今いるこの家は、比較的綺麗だった。 恐らく家族で鍋でもしてたんだろう、 カセットコンロが戸棚にあった。
丁寧に整理された食料庫。 大きな冷蔵庫には綺麗にタッパーに分けられた 常備菜やらハンバーグのタネが入っていて──
───尽く、腐っていた。]
(31) sainos 2020/10/27(Tue) 18時頃
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[ カレーパスタを食べて満腹になった私は セブンスターを取り出して、 またカセットコンロで火をつけた。
しげしげと部屋を見ると、そこかしこに幸せの 痕跡が残っていた。 2LDKの真新しいマンションの一室。
───みんな平等に。]
(32) sainos 2020/10/27(Tue) 18時頃
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[ フィルターぎりぎりまで吸ったのは、 私なりの弔いだった。 線香なんてきょうび置いてる家の方が珍しい。
この家の住人が戻ってきて、 料理の残骸を見て顔をしかめるのを想像する。
割といい絵面だ。 戻ってきてくれよ、住民。]
(33) sainos 2020/10/27(Tue) 18時頃
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「あ"───」
[ "あれ"の声がする。 カレーの匂いにつられたのだろうか。 ここには3日ほどいたが、そろそろ頃合いだろう。 私はシャベルを手に取り立ち上がった。 カートンの中からセブンスターを一箱、 ポケットに拝借する。]
……行くかぁ。
[ 声は玄関側から聞こえる。]
(34) sainos 2020/10/27(Tue) 18時頃
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[ 窓から逃げるか、玄関を突破するか。 考えを巡らせる。 怖い、怖いし、死にたくない。 腹が立つ。悔しい。死にたくない。
どこにも居場所がなくても、 どこにも居場所を作れなくても。 なんにも持っていなくても。]
(35) sainos 2020/10/27(Tue) 18時頃
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[ それでも。]
(36) sainos 2020/10/27(Tue) 18時頃
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[ どうしたって、日常("それ")はやってくる。]
(37) sainos 2020/10/27(Tue) 18時頃
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[ ああ……かすかにエンジンの音が……、]
(38) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ ……見送りにいかなくちゃ。]
(39) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ わたし、ゆっくりと立ち上がったの。 ああ、割れるように頭が痛い。 けれどなんだか体は軽かったわ。 きっと齧られて質量が減ったせいね。 視界が曇った日の空のように、 薄く白く濁って見えたわ。 わたし、今、何者なのかしら。 ぼんやりとした心地で廊下を歩いた。 どのくらい時間が経ったのかしら。 ほんの数分、数秒のようにも、 ずいぶん経ったような気もする。]
(40) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ 玄関の扉を開いた。日が差している。]
(41) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ ……ふと空を見上げたら、 本当に気持ちよく晴れ間が広がっていたのね。]
(42) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ あの子がガレージから出ていくのを、 わたし、門扉のところまで出て、 見えなくなるまで見送るのが日課だった。]
(43) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ ゆっくりとした足取りで門扉へ向かったわ。 ほかのことはなあんにも気にならなかった。 がしゃんがしゃんと、 門扉が激しく揺れていたのね。 なんでだったかしらねえ。 ……なんだっていいわ。 ただ、いつもみたいに門扉を開いた。 ぎゅうづめに押し寄せる何かが、 扉の奥めがけてなだれ込むように動いたわ。 わたし、その流れの中に立っていたの。 どれだけ押し戻されそうになっても、 立っていたの。そこに。前だけを見て。]
(44) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ そのとき、深い深い緑色がひとすじ、 びゅんと走り抜けていった気がしたの。 まるで光の尾を引くように。美しかった。]
(45) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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……い、ってらっしゃい。 くれぐれも気を付けるのよ。
(46) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ ああ、なんだか音が歪んで聞こえる。 ……年のせいかしら。やあね。 でもわたし、 確かにそう言ったつもりだった。 そう言ったはずなの。いってらっしゃい。 気を付けてね。さようなら、ジャーディン。 旅立ちを見送ってあげたかったの。 Nanaとしての心が残っていたのかしら。 それともしみついた繰り返しをなぞる本能? ねえ、どちらだと思う? ……ああでも、答え合わせはできなさそうねえ。]
(47) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ こんなに気持ちの良い晴天だもの。 わたしはお庭で読書でもしようかしら。]
(48) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ 今日もここで帰りを待ってるわ。]
(49) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ ……でも振り返らないでね、ジャーディン。*]
(50) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ *** ]
(51) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ 悪い人たちではなかったのだと思う。本当は。]
(52) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ ただ、居合わせた状況のせいで、 本来しなくていいはずの選択を迫られただけ。]
(53) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ 祖母がたった一人を守るため、 犠牲を厭わなかったのと同じように。]
(54) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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──とある青年の独白── [ 駆け込んだ先は、一見して無人に思えた。 大窓の面した庭の奥では、 木戸がぎしぎしと軋んでいて、 今に破られてもおかしくはなさそう。 体ごと扉にぶち当たるような鈍い音に混ざって、 意味をなさない低く醜いうめき声が響いている。] ──ウィレム! ゾーイ! [ 咄嗟にそうやって名前を呼んだら、 キッチンのシンク下の扉がガタッと揺れて、 中から小さな頭がひょこりと覗いた。]
(55) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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……隠れてたの?
[ ウィレムはこくりとうなずいて、 狭苦しい収納の中から這い出した。 開いた扉の隙間からオッドが飛び出して、 ウィレムが隣の扉からゾーイを引っ張り出す。
怖いことが起きたら、 ここに隠れてじっとしてなさいって。 おばあちゃんが言ってた
内緒話でも耳打ちするように、 ウィレムは俺の耳元でそう言った。 そっか。と目線を低く合わせて答える。]
(56) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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いいか、急いで支度して。 大事なものだけ持って。 ここから逃げるんだ。 ゾーイ、おまえのふわふわ≠ヘ? あのうさぎがなきゃ困るだろ。 もう取りに戻ってこれないんだから。
[ チビたちにそう告げながら、 ためていた水のボトルをいくつか取る。 それから残り僅かなクラッカー。 おやつがわりに舐めた蜂蜜。 犬のフード、食べれそうなもの何でも。
慌ただしく動き回っていたら、 ウィレムが困惑した様子で俺を見た。 なんで?≠チて聞いてくる。 なんで? 隠れてればいいんじゃないの? そう言いたげなのがありありと伝わってきて、]
(57) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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隠れてじっとしててもな、 どうしようもならないからだよ。
(58) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ だから早くって俺は急かした。 ゾーイがうさぎのぬいぐるみを抱いている。
あとは何が必要になるだろう。 火を起こす道具。ライト。ラジオは? 映画だと壊滅しそうな世界の中で、 他人と繋がるツールはいつもラジオだけど。 キッチンにあった適当な袋に、 めぼしいものを片っ端から投げ入れた。
誰かに確かめるように、 あれはこれはと独り言として呟いて、 部屋の中を行ったり来たりする俺を、 ウィレムはまじまじと立ち尽くして見ていた。
そして不意に身体の向きを変えて、 ソファに向かってダッシュしたかと思うと、 ソファの座面の下に細こい腕を突っ込んだ。]
(59) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ ごそごそとそこを漁るようにして、 引き抜かれた手は小さな端末を握っていた。 そのまま、たたたっとこちらに駆けてくる。
袋を背負って、オッドを抱いたところだった。 これも。というふうに差し出された掌に、 スマートフォンがひとつのっかっている。
差し出されたそれを手に取った。 ウィレムは俺の動向をまじまじと見ている。 いくつかボタンを押してみても反応はなく、 とうに充電が切れてしまっていることだけわかる。]
(60) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ ささやくような声で、 ウィレムはだめ?≠チて聞いてきた。
うん、だめ。もう電池がない。 どこかで充電できたら別かもしれないけど。
そんな正直な答えでも、 幼い子どもを気遣った嘘でもなく、 気づけばウィレムをじっと見下ろして聞いていた。]
──これ、隠してあったの?
[ ひとつ、ウィレムはうなずいた。 そっか。とか、相槌を打つより早く、 続け様に言葉を吐いている。]
(61) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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……誰が? ……ああ、いいや、知ってたの?
[ ウィレムが少し困ったような顔をして、 みっつ目の質問にもこくんとうなずいた。 不安そうに視線を泳がせている。 俺はそのまるっこい頭に手を伸ばした。]
……そっか。 おまえは本当になんでもよく見てるね。
[ 俺が嬉しそうではなかったからかもしれない。 誤魔化すように伸ばした手に撫でられながら、 ウィレムは自信なさげに俺を見上げて、 言ったほうがよかった?≠チて聞いた。]
(62) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ ……どうなんだろう。 そうしてくれていたら、何か違っただろうか。]
(63) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ だとしてもこの世界は一本道なのだ。 何を言ったってしょうがないじゃないか。]
(64) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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……大丈夫だよ、ウィレム。 オッドを抱いててくれる? ゾーイと手を繋ぐからさ。 ほら、こっち。もう行くよ。
[ 抱いていたオッドをウィレムに預けて、 俺はゾーイの小さな手を握った。 キッチンを抜けて、 ガレージのほうへと二人を誘導する。 わおんわおおおおんと、 相変わらずあいつらは騒がしくって、 今すぐ駆け戻ってどうしたのって、 一匹一匹の瞳を覗きこんでやりたかった。 そうしたらあいつらの黒目がちな瞳は、 いつだってちゃんと何かを伝えてくれる。]
(65) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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|
[ 思いを断ち切るようにして、 ふたりと一匹を後部座席に押し込んだ。 助手席に膨らんだ袋を放り込んで、 自分も運転席へと滑り込み、キーを刺す。 鳴きやまないあいつらの声に紛れさせて、 シャッターリモコンのボタンを押し、 ブレーキペダルを踏んだ。キーを回す。]
(66) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ ブォンと、いつかと同じ音がする。]
(67) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ いつか。]
(68) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ マシュマロの入ったチョコレートアイス。 クリスマスのプレゼントとケーキ。 この深い緑色が運んでくるもの。 誕生日を祝いにやってくる父方の祖父母を、 空港まで迎えにいくのもこの車で、 入院が長引いた母をときどき、 乗せて帰ってくるのもそう。 休暇に少し遠出をした帰り、 後部座席で寝こけているだけなのに、 祖母がふいに振り返っては嬉しそうにするから、 なんだかこっちは気恥ずかしくて、 家に着くまでずっと寝たふりをしていた。]
(69) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ この車が好きだった。]
(70) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ 今日みたいな日には似合わない、 いつかと同じ音を立てて走り出す。]
(71) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ どこに行くのって幼い声が問う。 うごめく化け物が住み慣れた家に、 吸い込まれるように押し寄せるのを見た。 あおおおおんとガラス越しにも声がする。 どこか遠くへ行こう。どこまでも遠くへ。 もう二度とここに戻ってこられないように。 まっすぐに前だけを見据える。 ハンドルを切りながら、西へ≠ニ言った。*]
(72) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ 西の果てに一体何があるというのだろう。]
(73) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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──as a credit cookie──
……うーん、だめだな。
[ あれこれ試していた手を止めてつぶやくと、 ウィレムが手元を覗いてだめ?≠ニ言った。
どうにかスマートフォンの電源をつけられないか、 充電器具や電源をとれそうなところを見つけては、 とりあえず一度試してみてはいるんだけど。 今回も拾ってきた充電器は使い物にならなかった。
ウィレムが同調するように、 残念そうな顔をしてため息をついた。 それを見ていたゾーイが不思議そうに言う。]
(74) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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ついたら誰に電話するのぉ?
[ そうしてから思いついたように、 パパとママ?≠チて嬉しそうに聞く。 正直なところこういうとき、 どう答えればいいのかわからないままだ。]
……電話じゃないよ。 世界中の人に見えるように、 メッセージを書くんだ。
[ あまり長く車を停めていたくなかった。 すぐ近くにゾンビがいないことを確認して、 一度止めていたエンジンをかける。
ガソリンもどこかで調達しなくちゃ。 路上の車から燃料をとる方法を、 道中出会った親切な人に聞けたのは幸運だった。]
(75) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ 一体何がぶつかったのか、 へしゃげて崩れそうになっている標識で、 行く先を確認してアクセルを踏んだ。
なんて書くの? ゾーイが後部座席から尋ねてくる。 さっきの家で見つけたココアの粉のおかげで、 ずいぶん機嫌がよく、元気になったらしい。]
……こんにちは。って、
[ 何か大切なものを見落とさないよう、 注意深く運転していたいんだけれど、 ゾーイはさらに言う。それから?‐
(76) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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えーっと、そうだな。 僕はジャーディンです。 ウィレムとゾーイも一緒です。
……ウィレム、なんて書く?
[ 何がおもしろいんだか、 ゾーイはきゃらきゃらと笑っていた。
急に矛先を向けられたウィレムが、 戸惑ったように口を開く。
えー……僕たちは元気です
ゾーイはいよいよじたばたと、 後部座席でひっくり返るように笑っている。 オッドがそれを非難するように小さく唸った。]
(77) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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──あはは、いいね。 ゾーイ、ちゃんと座って。
(78) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ ミラーで後部座席を確認しつつ、 路上に捨てられた車や、倒れた木や、 人だったはずのものを避けて走る。
到底この状況に似つかわしくない言葉に、 気付けば口元を緩めて笑っていた。 それなのに目頭が熱いのはなぜだろう。]
(79) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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[ そこに何を書こう。]
(80) nabe 2020/10/27(Tue) 19時頃
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Nana
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こんにちは。見ている人はいますか?
僕はジャーディンといいます。
Nanaの孫で、17歳です。
××地区から西に向かっています。
どこかに避難所や、
シェルターはありませんか?
まだ無事な人を探しています。
一緒に7歳と4歳の子がいます。
まだ小さな子犬も一緒です。
食べ物ももうあまりありません。
助けが必要です。
親切な人からの返事を待っています。
どうかお願いします。助けて。
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[家に帰れば、腕や服に浴びてしまった血、 というよりは妙に粘っこいそれを 井戸の水でしつこいぐらいに丁寧に洗い流した。 それでも、あの手に響いてきた ぐにゃりとした嫌な感触はとれそうになかった。 今朝、町長は何も言ってなかった。 ということは、今朝は雷門さんの家と 連絡がとれていたはずだ。 あそこは他にも息子と嫁がいたと思うが。 ほかの二人も感染してしまったのだろうか?]
(81) rinco 2020/10/27(Tue) 21時半頃
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[こみるりさんの投稿を思い出す。 噛まれた、という投稿のあとにも しばらく意識があった。 同じような人が他にもいたようだが もしかしたら、個人差があるのだろうか。 電話帳のページをめくり、 固定電話から雷門さんの家にかけてみた。 それほど時をおかずして、ガチャリ、と 受話器を持ち上げる音が耳に届き、面食らう。] も、もしもし? あー…… えーっと、和田、です、けど、 [でた。普通に。いともあっさりと。 むしろ、こちらの心の準備ができていない。]
(82) rinco 2020/10/27(Tue) 21時半頃
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あの、……実は、さっき、 雷門さん、と、会ったんだ。 [途端に、電話口の向こうから、 緊張した息遣いが聞こえてくる。 たとえ感染していたとしても、 彼らのかけがえのない家族を、 俺は、殺してしまったのだ。 今更ながら、その事実を なんと伝えていいものか考えあぐねていれば、 先に向こうが口を開いた。] ……仕方なかった? [何が? 俺の行動が? そのまま言われたことを口にすると、 誰にも我々を責める権利などないはずだ、と 今度は喧嘩腰にわめきたてる。]
(83) rinco 2020/10/27(Tue) 21時半頃
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[そこまで言われてようやく、何が起きたのか理解した。] …………、そうか。 [口減らしにあったのか。雷門さんは。] そうだな。 [わからない。 何が正しくて、何が間違っているのか。 少なくとも、責める権利は俺にはない。] ……雷門さんに、止めをさしたのは俺だ。 [端的に、それだけ告げて、受話器を置いた。 雷門からは、ひどくすえた臭いがしていた。 一体いつから彼は外にいたのだろう。 そのままずるずると電話台の隣にしゃがみこみ、 両手で目を覆った。**]
(84) rinco 2020/10/27(Tue) 21時半頃
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[生き残りの人間は、居ないわけではなかった。 生きるために安全な土地を探す者も居れば、 安らかに命を絶てる場所を探す者も居た。 自分の家族がまだ生きていると信じて、 危険を顧みずにあちこちを回っている人も居た。
僕達は、生き残りの人に会うたびに、 自分たち以外の人間と話せるのが嬉しくて。 荒れた廃墟から発掘してきた食料を交換しながら 色んな話をしたし自分たちも惜しみなく情報を渡した。
情報交換を嫌がる人はいなかったけれど 皆、ここまで生き抜くために苦労してきたらしく 例外は無く、服は汚れ、憔悴しきった様子だった。]
(85) kaomozi 2020/10/27(Tue) 22時半頃
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[けれど。僅かな希望を胸に、 今まで通って来た道について尋ねれば。 全ての人は暗い目で、口を揃えて言ったのだ。]
(86) kaomozi 2020/10/27(Tue) 22時半頃
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[あの頃の平和はもう、どこにもないのだと。]
(87) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時頃
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[僕が拾った男の子は、名を理央と言った。 毎日、学校が終わったら17時になるまで、 友達と時間いっぱいまで遊ぶような子だったようだ。
僕のことを臆病者と馬鹿にしては笑ったり いつも強気で、ゾンビに挑発したりもしてたけど。 段々、生き残りの人間に会うことも少なくなり、 この世界はもう滅びるだけだと悟ってしまって。
両親や兄弟がどこかで生きている……と、 そう信じることも出来なくなってしまった彼は バイクで走っている最中に、 僕の背中に顔を押し付けて、声をあげて泣き出した。]
(88) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時頃
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[満点の星空の中。 僕は、周りにゾンビが居ないことを確かめ、 その場にバイクを止める。]
「もう、皆、ぞんびになっちゃったの? かーちゃんも、とーちゃんも、 にぃちゃんも、けーたくんも、さやちゃんも」
[背中から聞こえる問いかけの答えは、 もう、彼自身、知っているんだろう。
そのまま黙ってしまった彼を見やって、 どう答えるべきかと、考える。
嘘を言いたくは、無かった。 でも……なら、どうすればいい。]
(89) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時頃
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[冷えた風が、僕達の身体を撫でていく。
今もきっと家の中に居る兄貴を想う。 懐かしいと思ってしまうことが酷く哀しい。 僕の母親も父親も、もう。 ゾンビになってしまった。 もう、会うことはできないけれど。
(皆…………か。)
皆に共通して言えることが……あるじゃないか。 僕はバイクを下りると、理央の頭を撫ぜた。]
(90) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時頃
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…………理央。 いいもの、みせてあげるよ。 [ポケットから取り出したのは僕のスマホだ。 電源をつけても、電波を拾う気配は全くない。 ……電波についてはとっくに諦めていたし、 僕が見せたかったのは、そんな事実じゃない。
あるアプリを立ち上げて、彼に渡す。 理央は、怪訝そうな顔で僕を見たけれど、 スマホを受け取り、画面をのぞきこんだ。]
(91) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時頃
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[最初こそ、不思議そうにしてたけれど 段々と、食い入るようにそれを見つめる。 指先は画面をスクロールして行く。 それもだんだん、早くなって。
「がんばれ」とか「すごい、」とか そんな声も聞こえるようになっていき―――]
(92) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時頃
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[……端末に保存されていたSNSのログを 最後まで見終わった直後だ。 >>4:*18僕の発言のあたりで 先に進まなくなった画面に痺れをきらして]
「皆は……皆は、どうなったの!? まだ……負けてない人が、いるの?」
[もう更新されなくなったタイムラインの 続きが見たいと、興奮した様子で僕にせがむ。
「えーちゃん、絵、上手いんだね」 それから、ライブラリを勝手に開いて 保存されてた僕の絵に夢中になり始めた理央に 僕は笑って言ったんだ。]
(93) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時頃
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……ねぇ、理央。 僕の両親も、兄貴も。 理央の知ってる人も…… もうどこにもいないかもしれない。 でも。世界のどこかには――― まだ、さっき見た投稿の人達みたいに 頑張ってる人がいるかもしれない。 ほら。理央の前で、僕はまだ生きてるだろ? ……"世界中の皆"がゾンビになった訳じゃない。 まだ僕達は、生きてる。 それなら―――
(94) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時頃
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『―――僕達は僕達の生きた証を、世界に遺し続けよう。 後を通る人が、今の理央みたいに勇気を貰えるように。
大丈夫。皆じゃないよ。 僕は、ゾンビにはならない。 ずっと、理央と一緒にいてあげるから。 』
[できるかどうかわからない約束だなんて そんなことは、考えてなかった。
ただ、僕がそうしたいから、言った。 ただそれだけのことで。]
(95) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時頃
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[最初に理央と会った時のような、 情けなく震えた声なんかじゃなく。 強く凛とした声に。 彼は目をごしごしと擦って、強く頷いた。]
(96) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時半頃
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[それからは、理央の提案で。 立ち寄った町から、ゾンビに襲われかけながらも 水や食料やガソリンの他に、 生き延びるには到底節つようなものを漁って来た。]
(97) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時半頃
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[それはゾンビの濁った血の色よりも明るい、赤。] [澄み渡る晴れやかな空のような、青。] [眩しい日の光のような、黄色に。] [焼け焦げることも血を浴びることもなく生える、緑。]
(98) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時半頃
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[バイクが走り去った後には、 滅びゆくこの世界に似合わない、色が残る。
色とりどりのスプレーを使って描かれたそれは 雨にも風にも負けることなく、 永い、永い間、残り続けるだろう。]
(99) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時半頃
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[ 僕達は ゾンビに負けない ]
[ひび割れたコンクリートには そんな言葉が大きく描かれていて。
その横に、子供らしく力強いタッチの なんでも倒せそうな、怪獣と どこまでも走っていけそうなバイクの絵は
色んな場所に、色んな色で。時には形を変えて]
(100) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時半頃
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[彼らの生きた足跡のように、残って居た。]**
(101) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時半頃
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[たった28年間。 わたしという人生において 何か、成し遂げられただろうか?
大切なひとを守り通すことも 最後まで己を喪わずに居ることも 命の限り戦うことも 苦渋の決断を下すことも
なにも。
あまりにもわたしの人生は、平凡で、平坦で お粗末な最期だった。]
(102) matsuko 2020/10/28(Wed) 22時頃
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[だからね、今もほら]
ぁ … ぅあ"…
[先に出ていったははの跡を追って通りに出てみれば そこには「おなじひと」がいっぱいで。]
「いたぞー!」「頭を狙え!」
[ゆうかんなひとたちが、わたしたちを殺していくのを ただ、ただ、ゆらゆら揺れながら 見ているの。]
(103) matsuko 2020/10/28(Wed) 22時頃
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[振り上げられた鉄パイプは スローモーションみたいにゆっくりで。
見上げた空は、どこまでも青い。]
(104) matsuko 2020/10/28(Wed) 22時頃
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[ぐしゃり]
(105) matsuko 2020/10/28(Wed) 22時頃
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[青から、黒へ。
暗転した世界は わたしに呆気ない終わりを告げた。
折り重なる幾人もの屍の、ひとつとして。**]
(106) matsuko 2020/10/28(Wed) 22時頃
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―― 終幕 ――
[ヴゥン、ヴヴゥン。
鄙びた雑居ビルの一室で、 空調が低い唸り声を上げている]
この地区は まだ電気が来ているのか。
[迷彩服姿の男が 物珍しげに天井の空調を見上げた。 その手には、自動小銃が握られている]
(107) gurik0 2020/10/28(Wed) 22時頃
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[昭和めいた雑然とした灰色のビルディングは 見る影もなくなっていた。 打ち捨てられたその街に立ち入る者もなく ただ、建物は朽ち果てようとしている]
……いる。
[油断なく辺りを見回していた男が、 立ち止まる。
そうして、その扉を、蹴破った]
(108) gurik0 2020/10/28(Wed) 22時頃
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『お"、おおおおれだよぉ。お"れぇ』
(109) gurik0 2020/10/28(Wed) 22時頃
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[親しげに、肉塊が男に話しかけてくる。 そのオフィスには、腐臭が満ちていた。 思わず男は、鼻を塞ぐ]
…………………。
[喋る肉塊から、目を離せない。 身に纏ったスーツからかろうじて 男性だということが判別できた。
奇妙なのは、その腕が 壁の配管に手錠に繋がれていることだ]
(110) gurik0 2020/10/28(Wed) 22時頃
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[眼球は腐り床に落ち、 ところどころ骨が見え隠れしている。 それでも、残った喉で、舌で、 こちらに懸命に話しかけてくる。
感染したこの人間を、誰かが閉じ込めたのか。 それとも周囲に危害を加えぬように、 自らここに閉じこもったのか]
意識は、まだあるのか?
[あるわけがない、と決めつけつつも 聞かずにはいられなかった。 自動小銃を、向ける]
(111) gurik0 2020/10/28(Wed) 22時頃
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『ここここうつうぅ、じこぉ。 ごひゃぁ……くまん。けいさつがぁ。 ごひゃく、くくく、ごひゃくまん えんえんんんんん』
(112) gurik0 2020/10/28(Wed) 22時頃
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[――500万円。
壊れたラジオのように繰り返す言葉は ほとんど理解できないものだったが、 唯一その単語だけは理解できた]
金なんて この世界じゃもうなんの意味もねえ。
[銃口を向けたまま、 耐えられずに目を逸らすと]
(113) gurik0 2020/10/28(Wed) 22時頃
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『しってるよ』
(114) gurik0 2020/10/28(Wed) 22時頃
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[突然、ちゃんとした単語が返ってきた、 驚き顔を上げても、 そこには嗤う肉塊がいるだけだ。 割れた窓から、 冬のから風が吹き込んでいた]
知ってるか。ならいい。
[引き金を、ひいた]
(115) gurik0 2020/10/28(Wed) 22時頃
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『あは、あはははっははははっはは』
(116) gurik0 2020/10/28(Wed) 22時頃
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[頭に一発、二発、三発。 そうしてようやく、笑い声は止んだ]
……良い顔で笑ってやがる。
[動かなくなった肉塊に近付き、 軽くブーツの爪先で蹴飛ばして 仕留めたことを確認する。
床に大量に転がったサングラスに目を遣り、 そのひとつを拾い上げた]
(117) gurik0 2020/10/28(Wed) 22時頃
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じゃあな、伊達男。
[眼球が零れ落ち 銃弾で穴だらけになった顔面に サングラスを掛けさせてやる。
なかなか似合ってるぜ、と笑いかけて 迷彩服の男は去っていった]
(118) gurik0 2020/10/28(Wed) 22時頃
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[動かなくなった肉塊。
まばらになった頭の黒髪が、 窓から吹き込む北風に揺れていた。
その口元は、やわらかに微笑んでいる]
(119) gurik0 2020/10/28(Wed) 22時頃
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[神さま、見ていたかい。
誰を襲うこともなく、 誰の迷惑になることもなく。
最後くらいは、 まっとうな人生を送れただろう?]**
(120) gurik0 2020/10/28(Wed) 22時頃
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[その日はどうにも探しに行く気にはなれなかった。 ゾンビを殺したら、やっぱり人殺しになるのだろうか。 謎の猫X君が残していた問いかけをぐるぐる自問する。 もしも健司たちが無事だったとしても、 どんな顔をして会えばいいのだろうか。 それに。
『みんな人間だったんだよね。誰かの大切な人だった。』 今はもう投稿が途絶えてしまったアカウントが たくさんあるが、そんな言葉があったはずだ。
もしも、健司たちがそうなっていたら。 ――俺は殺せるのだろうか?
答えの出ない問いを胸に、畑の世話だけして、 日が暮れる前には家に戻った。]
(121) rinco 2020/10/28(Wed) 23時頃
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[本来なら朝陽が差し込む仏間も、 今は雨戸を閉めきっていて 朝になっても真っ暗なままだ。 家の中の空気まで、 すっかり澱んでしまっているように思う。
線香に火を灯し、お鈴は鳴らさないまま そっと手を合わせる。 日課の美奈子への報告も、何も、話す気になれなかった。 どうしてこんなことになってしまったのだろう。 本当なら今頃、健司と美香さんと一緒にここにきて チビ達も一緒に泊まっていたはずだった。 たった二週間ぽっちで、 世界がこんなにも様変わりしてしまうなんて。]
(122) rinco 2020/10/28(Wed) 23時半頃
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[不意に、電話のベルが静かな家の中に鳴り響く。
ああ、町長だ。 そういえば、雷門さんのことを 何にも伝えていなかったが、 一応、伝えたほうがいいのだろうか。
……なんて言おう。 彼らの、息子さんや嫁さんのことも 伝えるべきだろうか。 思考を巡らせながら、のろのろと立ち上がり、 緩慢な動作で受話器を持ち上げた。]
(123) rinco 2020/10/28(Wed) 23時半頃
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『―――親父か?』
(124) rinco 2020/10/28(Wed) 23時半頃
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[その、声に。 思わず息をするのを忘れた。 聞き間違えるわけがない。 わなわなと震えだしそうになる唇を 一度ぎゅっと引き結んで、ようやく声を絞り出した。] ……け、健司か? [どもっちまった。 向こう側で、安心したような吐息が 零れるのを受話器が拾い上げる。 ああ、と確かに聞こえてきて その場に膝から崩れ落ちた。]
(125) rinco 2020/10/28(Wed) 23時半頃
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よかった……っ、 あぁ、よかった……! 生きてたんだな……、 [こみ上げてくるものを抑えきれずに 肩口でぐいっと頬を拭う。
今まで、たいして信じていなかったが、 今日ほど神に感謝した日はない。
向こうの言葉を聞き漏らすまいと、 嗚咽が漏れる口を手のひらで覆いながら、 受話器を耳に押し当てた。]
(126) rinco 2020/10/28(Wed) 23時半頃
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『親父、手短に言うからよく聞いてくれ。 山の中で事故が起きて、車は捨てた。 スマホも圏外で、歩いてそっちに向かってたんだが、 ゾンビに襲われて、川を泳いで逃げた。 おかげでスマホも壊れたけど、 アイツら、泳げないみたいなんだ。 少しずつ川沿いに移動して、 ようやく生きてる公衆電話を見つけたんだ。 ……迎えに来てほしい。 住所は――』
(127) rinco 2020/10/28(Wed) 23時半頃
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[慌てて健司の言う住所を、メモに書きつける。]
わかった。 ……全員、無事なんだな?
[力強い肯定を聞けば、すぐに受話器を置いて、 準備に取り掛かった。
大丈夫、健司たちがいる場所まで、 どの道が通れて、 どの道が通れなくなっているかは もうすでにわかっている。 赤印と付箋がたくさんついた地図を片手に、 武器代わりのスコップと懐中電灯。 それから、きっと腹もすかせているだろうから、 おにぎりと水筒をもって。]
(128) rinco 2020/10/28(Wed) 23時半頃
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……まるでピクニックみてぇだな。 [用意した荷物を前に場違いな感想を零し、 リュックにそれらを詰めていく。 それから一度スマートフォンを取り出した。 今はもうすっかり手慣れた調子で、 一つぽつりと投稿する。
今はもう、どれぐらいの人が 見ているのかわからないけれど。]
(129) rinco 2020/10/28(Wed) 23時半頃
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もう、誰も見てないかもしれませんが、
息子たちが、生きていました。
探してくれた方、ありがとうございましたm(__)m
皆さんも、諦めないでください。
アイツらは、泳げないみたいです。
水辺に逃げたら、助かる可能性が、高いのかもしれません。
少しでも、皆さんが、生き延びれる道が、見つかりますように。
#ゾンビに負けるな
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[この町で、世界中で、 まだ戦っている人々がたくさんいる。 きっといる。 それぞれの戦い方は違うとしても。 大丈夫、大丈夫。 こんな世の中になっちまったけど、 それでも俺たちはまだ生きている。 あきらめてなんかやるものか。 この命がつきるまでは。]
(130) rinco 2020/10/28(Wed) 23時半頃
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[―― さぁ、迎えに行こう。**]
(131) rinco 2020/10/28(Wed) 23時半頃
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[頸を刎ねるか頭を潰すかすれば、ゾンビはくたばる。 但し少しでも襲われれば、今度は己がゾンビ化するのは免れない。 だから、少年たちは決めていた。]
全員無傷で、なんてのは到底無理な話だろうしな!
[もし、仲間が襲われ瀕死となったら。 助けたりせず、チェーンソーでその首を刎ねてやれ。 そして、運よくこの局面を乗り切ったとしても。 もし、怪我を負っていたなら。 その時は、最期の武器が用意してある。 工業高校には、こっそりと馬鹿な教師がひとりやふたりいるものだ。]
(132) nordwolf 2020/10/29(Thu) 01時半頃
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ッしゃオラぁブッ潰せ!!
[ゲームではない、リアルな化物退治。 もとはみんな人間だし、躊躇いが出るのではと思ったが、生きるか死ぬかの土壇場どころか、99%以上の死地に立たされている現状、もう突き進むことしか考えられなかった。 なんつったっけ。 アドレナリンだか何だかが出まくってる状態? 化学の時間に習ったような気がする。
とにかく、一体でも多く潰す!!]
(133) nordwolf 2020/10/29(Thu) 01時半頃
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[真っ先にやられたのは、自作の剣を振るっていたレンだった。 かわいい女の子のゾンビを前にして、攻撃が鈍ったらしい。 シュンタロが、頭を斧で割ってやった。
そのシュンタロも、斧の柄が折れたところでゲームオーバー。 最期の意地で、ゾンビ二体を巻き込むようにして自衛隊の戦車の前に飛び出し、しっかりと轢き潰された。
チェーンソーを振り回していたニシとケイイチは、混乱の深いところまでいってしまったので、どうなったかは分からない。 ただ、アイツらのことだ。最期はきっちりキメてくれただろう。
フウタは脚をやられ、動けなくなった。 その場で虎の子の自作手榴弾を炸裂させ、襲い掛かってきたゾンビもろとも自爆した。 自作とは思えない爆風と爆音のデカさと威力に、ちょっとヒいた。 最期になんてモン作りやがったんだアイツは!]
(134) nordwolf 2020/10/29(Thu) 01時半頃
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[周囲のゾンビの数は、だいぶ減った。 尤も、こんなものは一時的で、暫くすればまたどこからともなく現れるのだろう。
だから、傷を負った少年は、覚悟を決めた。 部室棟3号室。 ミリタリー部の顧問が、絶対に内緒だからなと言って、見せてくれた例のブツ。 ソレは、いかにも『ただのモデルガンです』というふりをして、壁際に飾られていた。 縁起悪く、4発の弾丸が込められているソレを手に、屋根に上る。 死体のくせに死に切れていないゾンビが二体、視界にうつった。]
へっへ……一度言ってみたかったんだよな。
[銃を構え、引金に指をかける。]
(135) nordwolf 2020/10/29(Thu) 01時半頃
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っしゃ脳漿ブチまけやがれ!!!!!
[ズガァーーーーーーン!! 両手で持っていても、支えるのがやっとの反動。 だが、目論見通り、ゾンビの頭は吹っ飛んで、腐った脳漿が湿った土の上にぶちまけられた。
マグナムにダムダム弾とか、あの教師なんで逮捕されなかったのか不思議だ。]
(136) nordwolf 2020/10/29(Thu) 01時半頃
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もういっちょ、ッ……!
[調子に乗ってもう一発放ったが、腐った肩を砕いただけ。]
クソっ、腕、痛ってぇ……!
[しゃがみ込み、反動で痛む腕と指を、両膝で挟み込むようにして強引に固定し、三発目を放つ。 衝撃で後ろに転げてしまったが、どうにか顔を上げると、しっかり頭を吹っ飛ばせていた。]
……よし、これで、おわりだな。
[寝そべったまま、空を見上げる。 いい夕焼けだ。 明日はきっと、晴れるだろう。]
(137) nordwolf 2020/10/29(Thu) 01時半頃
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……あーぁ。
いい空、だよなぁ。
[ダチのこと、家族のこと、ネット仲間のこと。 いろんなことを思い出していた。 けれど、きりがなさそうなので、途中でやめた。
やめて、銃口を咥えた。]
(138) nordwolf 2020/10/29(Thu) 01時半頃
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[しずかな、夕焼け空の時間だった。]
(139) nordwolf 2020/10/29(Thu) 01時半頃
|
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[
────────ズガァーーーーン
**]
(140) nordwolf 2020/10/29(Thu) 02時頃
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親愛なるミケ
あなたの来ない夏が三度過ぎました。 元気にしてる? こっちは相変わらず天気のことばかり考えているよ。
キャロルが遠くへ旅立ちました。 いつもあんなに煩かったのに、静かになっちゃった。 キャロルは畑じゃなきゃヤダって最期まで騒いでたけど、やっぱり街近くの墓地でみんなと一緒に眠ってもらうことにしました。
もしこれを読んだあなたがミケでないのなら、どうかこの手紙のことは忘れてください。 あるいは少しでも気にしてくれるのなら、今あなたが住んでいる部屋に昔住んでいたミケーロという男にこのことを伝えてくれたら嬉しい。
最後まで読んでくれたあなたに、幸運が訪れますよう。
シーシャ
追伸。 せめて連絡先くらい教えてよ。
(141) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 05時半頃
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[結局ミケは、その後も連絡をよこさなかった。 ミケーロさんと見かけたのは本当にただの偶然だ。 駆け足で追いかけた長い足が折り畳まれていても、 繰り返し見て来た後ろ姿はあの頃のままだった。
すぐに継ぐはずの畑をルパートおじさんたちに託した。 街へ飛び出した背中にかけられた怒鳴り声を覚えている。 もう帰ることはできないだろう。 しかし後悔はなかった。
だって、たとえ下っ端でも、 ミケーロさんと一緒に仕事ができることは それらを手放すに値する時間だったからだ。
そう感じるたびに、あの日のことを思い出す。]
(142) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 05時半頃
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― 秋葉原異聞・ありえたかもしれない話 ―
[ゾンビ対策に明け暮れる秋葉原。 そこに颯爽と舞い降りたのは1台の武装ヘリだった。]
やあ、ブラザー。 よく来てくれたな。
[乗ってきた金髪の外人とハイタッチを交わし。 アタッシュケースを手渡していた。
全部終わればヘリを返却する約束で。 要するにレンタル料だった。
こんな脱法行為が認められるのも非常事態だからだろうか。]
(143) 葵 2020/10/29(Thu) 05時半頃
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[暑い夏の日だった。 太陽が日陰のない平面を容赦なく焦がしていく。 青々と広がる畑でも例外ではなく、 土の上で熱に悶える芋虫をじっと見ていた。 こめかみから垂れた汗が恵みの代わりに落ちる。 芋虫はそれを受け、捩るように身を躍らせた。
ミケと母は何か難しい話をしているようだった。 少なくとも子どもだった自身には理解できないことだ。 言葉を交わし、母が笑い、ミケが頷く。 なんてことない光景の中、唐突にミケは膝をついた。 そして当然のように、母へ向かって胸の前で手を組む。 母はそれをつまらなそうに見ながらも何も言わない。
それは、祈りだった。 これまで繰り返され、これからも続いてくであろう、 祈りだった。
以来、あの光景を目にしたことはない。]
(144) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 05時半頃
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[それなのに、 鼻につく肥料の匂いも、見慣れたトウモロコシの葉も、 鮮明に思い出せる。
ミケの前に立つ母が羨ましかった。 母に首を垂れるミケが怖ろしかった。 それに嫌悪と恍惚を見出した瞬間、囚われたのだろう。]
(145) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 05時半頃
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[幻影に手を伸ばし続けている。]*
(146) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 05時半頃
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[SNSに投稿をいつものようにしていた。
#堀井隊 #ゾンビに負けるな #アキバにヘリがやってきた
そして、武装ヘリは天に舞う。 四浦と堀井。 そして、帰ってきた堀井隊の面々と共に。]
(147) 葵 2020/10/29(Thu) 05時半頃
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― 初日、あるいは3日目の朝 ―
[舌打ちと共にスマートフォンから耳を離した。 そこからは何度も聞いた冷たい電子音声が聞こえる。
マスタが投稿した写真と目が合ってから3日が過ぎた。 心許ない充電具合の画面を落とし、助手席へ放り投げる。
同僚が死んだ。豹変した上司に襲われ、腹から喰われた。 上司は倒した棚に頭を押しつぶされて、 虫みたいに手足を痙攣させた後で動かなくなった。 周囲には消化途中だったものの酷い匂いが渦巻いていて、 そこにいた皆が吐瀉物と悲鳴に塗れた。
はじまりは雨に似ていた。 ぽつぽつ降り始めに気づくと、途端雨足が強くなる。 実際、最初の手頃な地獄から異変が街全体に広まるまで、 1日とかからなかったように思う。]
(148) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 05時半頃
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「ねえ、核は本当に持ってきたの?」
いや、Miss“R”に頼むからやめてくれと言われてな。 君は自分の国を済めなくするつもりかなんて言われたらまあ……な。
[後部座席でクスクスと笑うメイドたち。 誰も本当に核を持ち込むなんて思ってなかったけれど。
以前に四浦が『いっそ核ミサイルでも打ち込んでやるか』と言っていた事を受けてのジョークだった。
機銃による斉射で地上のゾンビを蹴散らし。 立てこもってるビルがあれば通常弾と火炎放射で焼き払う。
自分たちは秋葉原の新たな希望になるのだと。 スマホを向ける人々に手を振りながら、戦っていた。]
(149) 葵 2020/10/29(Thu) 05時半頃
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[そう。 新たな希望となるはずだった。
堀井隊の1人の掌の傷。
それにさえ気が付いていれば――**]
(150) 葵 2020/10/29(Thu) 06時頃
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[皆が食料を買い占め、奪い、建物の中へ立て篭もる。 車に燃料を積み、ここではないどこかへ向かう者もいた。 それ以外は喰うか喰われるかどちらかの道を辿った。
二番目を選んだ自身は今、通い慣れた道を走っている。 普段なら人ひとり見かけないような時間帯だが、 今日はちらほらとミラーに車のナンバーが映る。 そのどれもがトラックを追い抜き、 東西へ伸びる道路をまっすぐ進んで行った。
大方、西に関する噂を聞きつけた者たちだろうが、 この先にある景色もきっと元の場所と大差ない。 この者たちに比べたら、 初日に移動した組はまだ冷静さと希望があっただろう。 死地へアクセルを踏む鉄の塊を平坦な瞳で見つめた。]
俺もあんたらと一緒なんだけどさ。
[段ボールひとつでもあれば経過した数日の言い訳にも なっただろうが、トラックの荷台は空っぽだ。]
(151) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃
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[怖ろしかった。 当然のように往来を闊歩する怪物が。 それが自身と同じ人間であったという事実が。 近づけば同じ存在に成り果ててしまうであろうことも 籠城に拍車をかけた。
幸い、扉の頑丈さだけが取り柄のワンルームは、 狭いながらも人ひとり分のシェルターとして有効だった。 早々に水道もガスも止まり、電気も使えなくなった。 たった2日、そう多くはない食料と止まる前に貯めた水で 凌いでいくだけで、簡単に絶望は育まれていく。
そんな時、人は何を求めるのだろう。 自身は救いだった。これは、それだけの話だ。 最低限の荷物と身ひとつを乗せ、トラックは西へ進む。]
(152) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃
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― コーヒーショップ『abbiocco』 ―
[救いは奇跡ではない。 それでも、もしかしたらと期待する自分がいた。 そんなはずないと予防線を張る自分もいた。
ストーブは沈黙している。 少しでも熱が篭れば、息が白く濁りそうな寒さだった。 息遣いが聞こえる。血塗れの左腕が見えた。
――見知らぬ男と、目が合った。]
(153) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃
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[豹変した者たちはゾンビと呼ばれた。 ゾンビは生きた人を襲い、時には喰らう。
大切な人を守るために人を殺すのは、ひとごろし。 ゾンビを殺したら、ひとごろし?
動かなくなった肉塊を見下ろす。 辺りには持ち去るつもりだった様子の缶詰が散乱した。 耳元で自身の呼吸と心臓の音が、警鐘のように響く。]
ミ……ケ、
[返事はない。顔色は蝋人形のように白く、 抉れたと思われる左腕は補う肉がひしめき合っていた。 呼吸と脈拍を確かめようとするが、次の一歩が出ない。
荒れた店内も、床に染み込んだ血の量も、 最初男が振り返った時、恐怖と覚悟が滲んでいたのも、 何もかもが”そう”だと告げている。 結局、もう一歩を踏み出すことはできなかった。]
(154) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃
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[XX月XX日。 底冷えするような朝、いつもの店で。 ゾンビを守るために人を殺しました。]*
(155) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃
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[死体は隣の家へ運び、ミケのベッドへ寝かせた。 外に放置した結果、 ゾンビを呼び寄せてしまう可能性はゼロではなかったし、 そういう意味も含めミケの前に放置したくはなかった。
小柄な男とはいえ、命の抜けた身体は酷く重かった。 やっとのことで移動を終えた頃には、汗が全身を包んだ。
雑に開いていたカーテンを閉めると、 隙間から差し込む光だけが肉の塊を照らす。 目を逸らすように踵を返し、大股で部屋を後にした。]
(156) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃
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[店に戻ると、蹴り破られでもしたのか 大きく破損し誰でも入れる入口を端材で塞いだ。 窓は端にヒビが入っている程度で無事だったから、 工具の持ち手を掴んでいくつか割った。 誰かやって来るかと警戒して息を潜めたが、 幸運なことに誰かがやって来る様子はなかった。 後ろを振り返る。 ミケは、朝と変わらぬ様子で目を閉じたままだ。]
一緒に寝るなんて初めてじゃない?
[ミケが夏にやって来る時は日帰りが多かったし、 複数日に跨ぐ時も近くの街に宿を取っていた。
彼はいつだって自分たちから少し離れた場所にいる。 あの日の、祈る彼の背中を思い出した。 10フィートは離れた壁に凭れる。寝心地は最悪だ。]
(157) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃
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……おやすみ、ミケ。
[爛々と開く目を無理やり閉じ、膝の間に押しつけた。 真新しい現実を瞼の裏に描けぬよう、ぐりぐりと。 感触を覚えている掌は爪を立てて罰した。
人ひとり分の息遣いだけが聞こえる。 心細くて埋めた顔を傾け、ミケの左側を見た。 自分は彼に目覚めて欲しいのだろうか。 答えを見つけられないまま、眠れぬ夜が過ぎて行く。]*
(158) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃
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― 2日目、あるいは4日目の朝 ―
[ミケ、と呼んだらこちらを向いてくれた。 濁った瞳は同僚を喰らった上司によく似ているのに、 巡る眼球もざらつく呻き声も徘徊していた”それ”なのに。
名前を呼ばれる。>>3:+14 二種類の未来を提示された。>>3:+15
ミケは、間違いなくミケだった。]
(159) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃
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やだ。
[拒否を端的に述べ、顔を膝に埋めた。 そうでもしないと緩む顔を見咎められそうだった。
ほら。ほら。やっぱり。 ゾンビじゃない。これは、ミケだ。 世界が壊れだして初めて抱いた喜びだったかもしれない。
母の話>>4:+49をしたミケによって、 喜びはすぐに現実へ連れ戻されるのだけど。 跳ねた肩を宥め、彼の優しい忠告に耳を傾けている。]*
(160) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃
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― それから ―
[2人目と3人目は年若いカップルだった。 今回のことがあってすぐに西へ向かったが、 死ぬなら住み慣れた場所がいいと戻ってきたそうだ。
ミケを置いて一緒に行こうと言われたから、 お互いがひとりになる時を狙ってナイフで刺した。 ベッドは見知らぬ男に占領されていたから、 畑の一角を掘り起こし、2人一緒に埋めることにした。 匂いのきつくなっていた1人目にも別の穴を掘った。
この日の食事は最悪だった。 ミケに怪しまれないよう、後でこっそり吐き出した。]
(161) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃
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[4人目はヒステリックに叫び散らす妙齢のご婦人で、 ミケの前でゾンビだなんだと騒ぎ立てようとしたから 腰を抱き、頬を撫でた手で首を絞めた。 苦しかったのか、強い抵抗に腕が爪痕だらけになった。 お互いの為にも今後は気をつけなくてはならない。
5人目は浮浪者のような、恰幅のいい男性だった。 服自体はきちんとしたものを着ていたので、 すべてをなくしただけかもしれない。 女性の名前を繰り返し呼んでいたと思えば、 こちらをその彼女と誤解して腕を強く引いて来たので 咄嗟に振り払い、後頭部を力いっぱい殴打した。 父さんと聞こえたから、娘を呼んでいたのかもしれない。 誰かの代わりになんて、なれない。なるもんか。
6人目は……どうしてだっただろう。 必要だから殺し、5つ目の穴に埋めた。]
(162) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃
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[数日経ち、ミケは徐々にミケである時間が減っていった。 誰かが来たことすら認識できていないようで、 最初の日に交わした言葉を繰り返し呟くようになった。 だから何度も同じ返事をして、同じ沈黙を与える。
彼の世界には、もう多くが残っていないように見えた。]
(163) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃
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……――ミケは俺に逃げて欲しかったみたいだけど、 俺はミケに会いに来たのに。離れる訳ないじゃんね。
[彼にとってあの二択がどんな意味を持っていたとしても、 こちらにとっては最初から答えは決まっていた。]
もしミケがミケじゃなくなったら、 そこで終わりにしようと思ってた。 ミケでも母さんでもなく、俺が終わりにしようって。
それなのにさぁ、 何も知らない車に頭ぶちまけられちゃって。 全部集めるの大変だったんだよ。 草とか土とか混じっちゃってさぁ……。
(164) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃
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[7人目は何かぶつぶつと呟いていたが聞き取れなかった。 なぁにって言おうとして、もういいやって腕を動かした。
――だって、 この世界にはもう、かみさまはいないのだから。
ミケは、ずっとこんな気持ちだったのだろうか。 ずっと遠くにいた彼に、ほんの少し近づけた気がする。
そして、土の山は6つになった。]
(165) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃
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――♪
[名も知らぬ歌を紡ぎながら、車はまっすぐ東へ進む。 誰を傷つけても、やがて訪れる最期まで生き抜くために。
――それは、彼に唯一与えられた呪い(いのり)だった。]*
(166) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃
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[荒野にポツンと建つ気象観測所、その屋上にて]
[―――――タンッ]
[うつ伏せになった男がスコープを覗きながら静かに引き金を引く。 軍人の男は、スナイパーだった。 建物の近くへゾンビが近づいてくる前に、こうしてゾンビを倒しているのだった。
――――――タン、タンッ
[1体、2体。 肉眼でも、遠くで歩いてた人型のそれがどさりと倒れる様子がかろうじて見える。 よく当たるな、と感心しつつ、僕はスナイパーと空を後ろから撮っていた]
(167) kulenahi 2020/10/29(Thu) 16時半頃
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[ここに来てからもう6日経った。 ここにはスナイパーの彼と、 通信手段の修理を試みる軍人の女性と、 僕の3人しかいない。 生存者を探しに行こう、と提案した事もあったが、もう生きてる人はいないだろうというのが彼らの結論だった。]
『奴らの動き、見えるか』
[スナイパーとしての一仕事を終えた彼が、双眼鏡を僕に手渡してからタバコに火をつけた。 ヤニの匂いと煙が、風に流されていく。 僕は渡された双眼鏡を覗いた。そして自分が元いた街の方へと目を凝らす。]
………見える。まだけっこうな数いるな。 …みんなのそのそと、ゆっくり歩いている……
『そう、それが重要だ。 もしも生存者がいれば、奴らはそいつがいる建物を執拗に襲うだろう。 外にいるなら尚更だ、ゆっくり歩くことはない。 今はそんな気配が見られない。』
(168) kulenahi 2020/10/29(Thu) 16時半頃
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…つまり………………… 『もう生存者はいないだろう』
[言い淀んでいたその続きの台詞を、男はなんの躊躇いもなく口にした。]
……いや、まだ断定はできないだろう? 僕達の他にもまだ生存者がいれば、 力を合わせてこの状況を打破できるかもしれない
『は?馬鹿か? この状況を見てまだ生きられると思ってんのか? どうせ死ぬんだよ、俺も、お前も』
[あぐらをかいて呑気に煙草をふかす男の言葉に、少し苛立ちを覚える]
やってみないと分からないじゃないか 希望を捨てちゃいけない! [詰め寄って強い口調で諭す僕を、彼は鼻で笑った]
(169) kulenahi 2020/10/29(Thu) 16時半頃
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『いや、どうせ死ぬ。 俺はいつでも死ぬ覚悟はできてる。 ただ、ゾンビになって死にたくはねぇ。 それだけだ。 死に方くらい自分で選ぼうぜ、お前もそう思うだろ?』
[…暫しの沈黙。目を閉じて考える。そして結論が出る。]
いや…僕は死なない。 死ぬわけにはいかないんだ。
[ロケットペンダントをギュッと握りしめた。 彼女は日本で僕の帰りを待っている。ずっと。 だから僕は生きて日本に帰らなきゃいけないんだ。 彼の目を真っ直ぐ見つめて、言葉を紡ぐ]
死に方なんか考えない。僕は生き方を考える。 絶対に生きて帰るんだ。 …妻のためにも。
(170) kulenahi 2020/10/29(Thu) 16時半頃
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[スマホが電池切れになり、結局妻とは全然連絡が取れていない。 SNSの返事>>6:*2も確認できなかった。 それでも、彼女は生きているという根拠のない確信があった。 連絡が取れないことは不安だったし寂しかったけど、 絶対に生きていると信じていた。]
……明日香…
[ロケットペンダントを開いて、その笑顔を見つめる。 目を閉じて、彼女の声を思い出す。 そう、今度もまた、いつもみたいに空港で彼女が「おかえり」って抱きしめてくれるはずだ。 だから、絶対に生きて帰らないと。]
(171) kulenahi 2020/10/29(Thu) 16時半頃
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――その日の夜――
2人に相談がある。
[荒れ果てたオフィスの部屋に2人を呼び出した。月明かりの入る窓際にテーブルを移し、その上に地図を広げる]
僕達のいるのがここだろ? 西のこの街はもうダメだった。 南もおそらく既に生存者はいない…だろ?
[赤ペンで街の上にバツをひきながら、男に確認する。 男は腕を組みながら、こくんと頷いた。]
北は山脈で東は荒野だ。一見するとどこにもいけない。 だけど、東の更にその先に行くと…空港があるんだ そこまで行けば生存者もいるかもしれないし、 食糧もあるかもしれない。だから… 3人でこの東の空港に行ってみないか?
[地図上に現在地から東へ向かう矢印を描いて、2人をじっと見つめた]
(172) kulenahi 2020/10/29(Thu) 16時半頃
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『お前、馬鹿か?』
[男の反応は、十分に予想していたものだった]
『その空港、敵国のだろう? 国境はまず越えられないだろう。 そもそも距離がありすぎる。 どう考えても無理だ』
(173) kulenahi 2020/10/29(Thu) 16時半頃
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いや、この緊急事態だ。 紛争もおわってる。今人類共通の敵はゾンビだろう? 向こうの国の人達だって迎えてくれると思うんだ。 今度は一緒に力を合わせて戦う時じゃないのか?
『無理ね』
[冷淡な蔑んだ目で女が言う]
『少し前まで私達はあいつらに銃口を向けてたのよ? あいつらが迎えるなんてありえないわ。 それに、あいつらと一緒に食糧を分け合うなら 私は死んだ方がマシだと思うわ』
(174) kulenahi 2020/10/29(Thu) 16時半頃
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[2人共ここから出て行く気はないようだ。 2人の偏見は、想像していたよりも根深かった。 それでも何とか3人で出ようと、説得を続ける。]
生き残るためには 今動けるうちに行動したほうがいいと思うんだ。 食糧も残り少ない、銃弾だって限りがある。 いつまでもここで閉じ籠ることはできない。
『だが、出て行けばゾンビに襲われるぞ』
(175) kulenahi 2020/10/29(Thu) 16時半頃
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いや、荒野には元々人が住んでいない。 ゾンビもきっと多くはいないだろう。
『不確定事項ね。 完全にいない、とは言い切れないわ』 『それに、空港に食糧があるとも限らない。 空港に着けば助かるという考えは甘すぎる。』
行ってみないと分からないじゃないか
[話はずっと平行線のまま…]
(176) kulenahi 2020/10/29(Thu) 16時半頃
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…分かった。 なら、僕1人で行く。
『そうか、好きにしろ』
[男はぶっきらぼうにそう答えると、部屋を出て行った。
僕は地図を乱暴に畳んでザックに押し込む。 コンパス、2.3日分の食糧と水、電池の切れたスマホ等を背負って 久しぶりに入り口のドアを開けた。 月の明るい夜だった。]
(177) kulenahi 2020/10/29(Thu) 16時半頃
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『ちょっと待って!』
[建物から出発しようとしたその時、後ろから声がした]
『歩いて行くなんて自殺行為よ これ、持って行きなさいって』
[女が投げたそれは、宙を描いて僕の手の中に収まる。 …バイクの鍵だった。]
『どうせ私達は使わないから。 言っとくけど、ガソリンもそんなに無いからね それでもいいなら使いなさい』
…ありがとう。 空港に着いたら、すぐに君達の事を伝えるから。 救援が来るまで、待っててくれ。
[女は苦笑いしつつも頷くと、ひらひらと手を振って建物の中へと入って行った]
(178) kulenahi 2020/10/29(Thu) 16時半頃
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[バイクに跨り、エンジンをつけた。 アクセルを数回回してエンジンを温める。 …よし、まだ使えそうだ。
東に向かってスピードをあげる。 ふと、南東方面にどこからか迷い込んだゾンビを見つけた やばいと思ったその瞬間、ゾンビの頭に何かが当たったようで、ゾンビはその場に倒れ込む。
誰かが僕の背中を見ている気がした。 サイドミラーをちらっと見たけれど、建物の暗い影がどんどん小さくなっていくのが見えるだけだった。 心の中でありがとう、と呟きながら 僕は東へと土埃をあげながら進んで行った*]
(179) kulenahi 2020/10/29(Thu) 16時半頃
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[少年たちの行動は。 校舎に残る人々の目には、どのように映ったろう。
無謀きわまりない。 若さ故の過ち。 死に急ぎ野郎たち。 漫画の見すぎ。
そう揶揄う大人が多かったことは、事実だ。 だが、止めるものはいなかった。 それもまた、事実だ。]
(180) nordwolf 2020/10/29(Thu) 23時半頃
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[ーーーパシャッ
パシャッ パシャッ、パシャッ パシャッ]
(181) nordwolf 2020/10/29(Thu) 23時半頃
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[誰かが撮った写真は。
ネットの海に、流れた。]
(182) nordwolf 2020/10/29(Thu) 23時半頃
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ー 北関東某所 ー
[その画像のうち何枚かは、バスもめったに停まらない山村に新しい暮らしを求めた少年のもとへも、届いた。 少年は、大きな瞳から大粒の涙をボロボロ零し、ブツブツと切れる電波と戦いながら、それらの画像を拾い集めた。
集められた画像は、まとめて、SNSにあげられた。]
(183) nordwolf 2020/10/30(Fri) 00時頃
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☀KENT☀ ーーーーーーーーーーーーーーー 彼らは、ぼくの自慢の、友達です。 お願いです、ひとりでも多くの人が、彼らのことを、覚えていてくれるように
#キカンシャ工業高校動屍斃隊 #ゾンビに負けるな
[背を見せて笑う少年たち。 そして、誰かが撮った、たくさんの画像。]
ーーーーーーーーーーーーーーー
(184) nordwolf 2020/10/30(Fri) 00時半頃
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[ 拡散希望** ]
(185) nordwolf 2020/10/30(Fri) 00時半頃
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――中東、荒野にて――
[道なき道を走る1台のバイクがいた。 舗装されてないとはいえ、乾いた大地は思っていたよりも走りやすかった。
時々コンパスを取り出して、方角を確認する。 GPSが使えないから自分が今どこにいるかも分からない。 とにかく真っ直ぐ東へ進むしかなかった。
黄色い土と所々生えている雑草。 見渡す限りの地平線。 まるでこの地上に自分1人しかいないような、そんな錯覚がした。
そう、もしかしたら今までの事は全部夢で 次の街や空港に着いたら、普通に人々が生活しているかもしれない]
(186) kulenahi 2020/10/30(Fri) 16時頃
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[普通? ふつう、って、なんだっけ]
(187) kulenahi 2020/10/30(Fri) 16時頃
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[照りつける太陽と長時間の運転。 疲れていないわけがなかった。 変わりばえのない景色をずっと見ながら、色々なことを考える。
ふつう、ってなんだ?
それは、明日香と一緒にご飯をたべること お互いくだらない冗談を言い合いながら笑うこと 好きな歌を2人で歌うこと
そうだ、そんな日常が、日本で僕を待ってる だから早く東に行って、明日香に会いにいくんだ]
(188) kulenahi 2020/10/30(Fri) 16時頃
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[ゾンビだらけになった非日常の世界から抜け出して、 今はひたすら荒野を駆け抜ける。 夕陽が背中を押して、前方に影を作っていた。 そして徐々に空は赤、濃い青、黒へと変わっていく。
その頃、ついにバイクはスピードを出せなくなった]
くっ…、動け…!
[アクセルを回すも、 バイクはもううんともすんとも言わない ガソリン残量のメーターはEの下をさしていた]
ここまでか…………
[バイクを停めて、近くでごろんと大の字になった]
(189) kulenahi 2020/10/30(Fri) 16時頃
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[空には無数の星が見えた。 天の川の白い帯もくっきり見えた。 人口の灯りが無いと、こんなにも綺麗に見えるものなのかと感心した。いつもそこにあるはずなのに、見えていなかっただけなのだ。 きっと月が無ければもっと見えていたかもしれない]
明日は満月かな………
[月明かりがバイクと兵太郎を照らしていた。 ここでゾンビが来たら一巻の終わりだなと思いつつも 疲労困憊の身体は、迫りくる睡魔に抗えず ゆっくりと意識を手放した]
(190) kulenahi 2020/10/30(Fri) 16時頃
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[翌朝目が覚めた後、カロリーメイトを1本だけ食べた。 昼間は暑すぎるので、夕方になったら出発しようと バイクの小さな影の部分に座った。
そこで、ずっとペンダントの写真を見ていた。 彼女の笑顔が、何時間も兵太郎を見つめている]
待ってて… …生きて、帰るから…………
[力の無い声で、そう呟き続けた]
(191) kulenahi 2020/10/30(Fri) 16時頃
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[日が傾き始めた頃に、歩き始めた。 コンパスを手に、真っ直ぐ東へ向かう。
相変わらず変わりばえの無い一面の荒野。 地平線しか見えない景色に、一歩も進めていないのではないかという錯覚を覚え、気がおかしくなりそうになる]
…明日香、僕は…………
[僕は、諦めない 君に、会うために。 その気持ちだけが、生きる原動力だった]
(192) kulenahi 2020/10/30(Fri) 16時頃
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[そうだ、歌を唄いながら歩こう。 そうすれば頭が冴えるかもしれない。 明日香が好きな、明日香がよく歌ってた曲は なんだっけ]
…僕は、歩く
[そうだ、この曲…… 今の僕にぴったりの曲かもしれない。 掠れた声で、歌う。 歌うというより、呟く、に近いかもしれない]
…徒然な日 …新しい夜、僕は待っていた
[日が沈み、徐々に視界が暗くなる。 それでもまだ目的地には着かない。 休む事も億劫になって、ひたすら足を前に運んだ。]
(193) kulenahi 2020/10/30(Fri) 16時頃
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…僕は歩く …ひとり見上げた月は悲しみです
[今日は満月。 夜空で一番大きく輝くその星は、恐ろしいほど美しかった。 同じ月を彼女も見ているだろうか]
(194) kulenahi 2020/10/30(Fri) 16時頃
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…嘆いて 嘆いて …僕らは今うねりの中を歩き回る …疲れを忘れて
[同じ曲を、何度繰り返し歌っているんだろう。 もう声にも出ていなかったかもしれない。 それでも歩きながら、何時間も頭の中で同じフレーズがずっと流れ続けていた。]
(195) kulenahi 2020/10/30(Fri) 16時頃
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[空がだんだん明るくなっていく。 たとえ地球上の人間がどんな状態になろうとも いつものように朝はくるのだ。]
…この地で この地で …終わらせる意味を探し求め …また歩き始める
[朝日に向かって歩きながら、まだ歌っていた。 ふらふらとおぼつかない足取りで、それでもまっすぐ東に歩いていた。]
(196) kulenahi 2020/10/30(Fri) 16時頃
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[そして、地平線の彼方についに街のようなものが見えた。 あと、もう少し、と力を振り絞る。]
…何が不安で何が足りないのかが …解らぬまま
[もう、何かを深く考える力は残っていなかった 明日香と一緒によく歌った歌の歌詞をなぞり続けて とりあえず東へ向かえば明日香に会えると そう思っていた]
(197) kulenahi 2020/10/30(Fri) 16時頃
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[蜃気楼のように見えていた街の姿が、近づくにつれハッキリとしてきた。 石だらけの荒野の中に、舗装した道路が現れた。]
…僕らはまた知らない場所を …知るようになる …疲れを忘れて
[体力はもう限界だった。 ぶつぶつと、足を引きずりながら それでもゆっくりと歩き続ける。
あの街でなにをするんだっけ わからない、おもいだせない ああ、でも、行かなきゃ。明日香の為に]
(198) kulenahi 2020/10/30(Fri) 16時頃
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[その時。
街からふらりと、女性が歩いてくるのが見えた]
…明日香?
[そんなはずはない、と思いながらも 思わず立ち止まって名前を呼ぶ]
…明日香、なのか?
[名前を呼ばれた“それ”は、長髪を靡かせながら 兵太郎へとまっすぐ向かってくる]
(199) kulenahi 2020/10/30(Fri) 16時頃
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……! …………明日香!
[どさり、とザックをその場に落とし、 力を振り絞って彼女の方へ駆け寄る。 両手を広げ、残された最後の力で思い切り彼女を抱きしめた]
会いたかった…!!明日香…!!!
[彼女も強い力で兵太郎を抱きしめ、そして 彼の首元に、歯を突き立てて 喰 ら い つ い た ]
(200) kulenahi 2020/10/30(Fri) 16時頃
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[首元が、痛い。 背中も、痛い。まるで爪で引っ掻かれているよう。
それでも、気にならなかった。 明日香に会えた喜びが大きくて、その他には何も考えられなかった。
彼女の身体は信じられないほど柔らかかった。 彼女の長い髪が頭皮の一部と一緒に ずるり、ぬちゃりと地面に落ちた あらわになった頭蓋骨を、兵太郎が見る事は無かった**]
(201) kulenahi 2020/10/30(Fri) 16時頃
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@asuka.waka
@heytaro
兵太郎?私です。
私は無事です。
避難する為に近所の高校に逃げたんだけど、途中でスマホ落としちゃって…ずっと連絡取れていませんでした
ごめんね
@asuka.waka
@heytaro
学校もゾンビに囲まれててね、もうダメかと思ってたけど、勇敢な高校生たちが先頭きってたくさん倒してくれてね
おかげで出てくることができました。
[の画像を引用して投稿]
今は東京の職場にいます。
ここには自家発電機もあるから、当分は連絡取るのに問題ないと思う。
@asuka.waka
@heytaro
ここに来るまでの間にね、異様にゾンビの死体の多い場所があったの。
たぶん生き残った人達が頑張って戦っててくれたんだと思う。
ショッピングモールで食糧調達する時に、ノートとか武器とか色々見つけてね、
大切そうなものは全部回収してきた。
今後の役に立つ思って。
@asuka.waka
@heytaro
今夜は満月がとても綺麗です。
兵太郎も同じ月を見てるかな?
わたしは職場でこれからゾンビのメカニズムを研究しようと思っています
幸い(?)サンプルはそこら中にあるし
このゾンビ化の原因が突き止められれば
解決策もおのずとわかるはずだから
私はここで頑張ろうと思います
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