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―孤児院へ行く前―
[路地裏で一匹、何をしていたのだろうか、レッドキャップを見つけた。
最初の狼よりも人に近いそれに、男は逡巡を見せなかった。
一度跳躍した男はベランダの手すりに降りたった。高綱などまともに練習した記憶もないが、なんとかなる。おそらく向上しているのは身体能力もなのであろう。
手摺伝いにレッドキャップの真上へ向かい、溜めるのはほんの一瞬。]
[地面に向かって飛び降りる。
半端にあけた牙は下降の際、目測を誤って、首ではなく赤い子鬼の肘から先を貰った。
一瞬遅れて噴きこぼれる血。レッドキャップの悲鳴と罵声がその間に滲む。
咥えていたものを地面に吐き捨てて、男は眉を寄せる。
狼の喉を食い破った際に出来たペイントは、レッドキャップの血でさらに赤みを濃くした。]
悪い、間違えた。
もっと楽に殺そうと思った。
[何も気負う様子無く近づいて右手を伸ばす。警戒したレッドキャップが距離を取った。
わずか細める目に男は何を映すのか。伸ばした手は急に引っ込んで、代わりにしゃがみ込みから蹴り上げる。顎を狙った蹴りだったが、パフォーマーとして体は鍛えても格闘技はずぶの素人、狙いをわずかにそれた。
それでも怯ますのには十分だったよう。
顎を上げたレッドキャップの無防備な喉に、体勢を直した男が噛み付き食い破る。
ぶち、と何かが切れる音がして―それはきっと血管の一つだったのかもしれない―血が噴き出す。]
[噛み千切った肉を暫く咀嚼して、飲み込んだ
唇に付いた血をぬぐうよう舌を蠢かす]
なにか、足りない、よなあ
お菓子は出ないし
なにが……足りない?
[赤く染まる口元は横に横に伸びて頬が裂けたよう。
クラウンメイクじみた血化粧で、男は静かに聞いてみた。
もちろんレッドキャップは答えない。
死体は答えない決まりになっている、グロテスクな世界でも]
…ん。
何かの比喩かね、「お菓子」。
なあ、お前何を持ってんの?
[そのまま少女の顔に唇を寄せて、囁く。
白い頬に飛んだ血を、ぬらりとひと舐めして、その体を床に投げた。]
探して、みちゃおかね。
[白いワンピースを、襟ぐりから裾まで縦に切り裂く。
露になったその腹――鳩尾の辺りに、ナイフを当てた。]
あれ…
変わらないじゃねえか、普通の人間とよ。
[ひとしきり「探した」後、彼はぼそりと呟いた。]
なんだ、バラし損か。
…夢中になって散らかしちまったなあ。
[そう言って、辺りを見回して溜息をついてからゆっくりと立ち上がり、ベッドに腰掛けて、もはや頭部以外は殆ど原型を留めていない少女を暫くの間、愛でる。]
さっきのあれ、なんだったんだろうなあ。
[彼は新しく手に入れたナイフを眺めた。
何の変哲もない、普通のナイフだ。
…ふと、思い立って。
右手をすっと、ナイフを投げる形で動かした。
――とすん。
小さな音がして、立ててあった少女の首が転がる。
その柔らかな場所に、小刀が突き刺さっていた。]
――ああ、良く解んないけどそういう事ね。
[男はニイと唇を引いて、笑った。]
― 独白・どうでもいい幕間 ―
初めて殺しをやったのは、21の時だった。
俺が初めて殺した女。
あいつは娼婦だった。それなりに気に入って、何度か買った後。仕事を済ませたあいつは、俺に言った。
『――お得意様が、さあ。あんたよりよっぽど金払いのいい奴。
あたしの客にあんたが居るの知って嫌がってんだ。悪いケド、今日限りにしてくれるかい?
ていうか、さあ…。聞いたよ、あんた貴族サマなんだって?人間堕ちりゃ堕ちるもんなんだねえ。なんで良家の坊ちゃんがそんなんなっちまうのさ。
気持ち悪いんだよ、あんた。自分より弱い奴しか相手にできないんだろ。蛇みたいな目ェしやがってさ。いや、どっちかというと小っちゃい蜥蜴ちゃん、か。
ま、悪く思わないでおくれよ。――弟子が同じ女と寝てんのは気に入らないんだってさ。
あんたがクリストファーの弟子だったとはねえ…。道理で似てると思ったさ。
くく、あんたも色々仕込まれてんだろ?あの変態に、さあ。』
その日の記憶は、そこで途切れている。
翌朝の新聞で、その娼婦―名はノーマ、といった―と、鍵師、もとい、便利屋の師匠が死んだことを知った。
否、理解した。
洗面台に投げ捨てられた血染めのシャツの理由を。
【人】 小娘 ゾーイ[風の音が聞こえる (43) 2011/10/21(Fri) 10時頃 |
それから、俺は便利屋の仕事をしながら、ちょくちょく趣味で殺しをやるようになった。
元々素質はあったのだ。それが、ふとしたきっかけで解放されただけ。
「――渇く…な」
さっきのビスケットのせいだろうか、やけに喉が渇く。そういえば昨夜出会った奴の中に、俺の好みの標的が、いた。ひと目見た瞬間に、解った。こいつは俺の獲物だ。
そういう奴に出会うと背筋がぞわりとして、気分が高揚する。あいつが苦しみ泣き叫ぶさまを、見たい。許しを請う姿を、殺してくれと乞う姿を。
このわけのわからない世界で、夜に紛れる必要はないだろう。曇り空の下、獲物を求めて歩き出した。
【人】 小娘 ゾーイ[質問があると言われ、 (50) 2011/10/21(Fri) 13時頃 |
この方は、なんだかとぉっても固そうですねぇ。
ええ、ええ
爪はすこぉし、刺さりましたが。
刺さっただけですね。
[継ぎ接ぎだらけを見下ろしながら思考する]
[お菓子……お菓子の、香りがする……。
彼女を突き動かすのはその衝動。
道中のお化けは、気にも止めない。
お化け同士戦いたいなら戦っていればいいのだ。
彼女の衝動は、それ以外のものを麻痺させていた。
恐怖、疑問、躊躇。
人として欠けてはならぬ感情を。
ひときわ大きなお化けを公園に見止め、お菓子に臭いを嗅ぎつける。
あいつらを倒せば、きっとお菓子が手に入る。
でも、どうやって?
彼女は、様子を窺った]
殺したら、お菓子は―――
出てきますかねぇ?
【人】 小娘 ゾーイ[次々と現れては消える血文字 (92) 2011/10/21(Fri) 22時頃 |
【人】 小娘 ゾーイ[そして、孤児院で起きた事を思い出す (93) 2011/10/21(Fri) 22時頃 |
【人】 小娘 ゾーイ ヒホッ!(コリーンさん!) (103) 2011/10/21(Fri) 22時半頃 |
[見渡す。
建物の隙間から見えた、人の姿
道化は息を飲んだ。
演じることを忘れた男は呟く]
人、か……?
それとも、吸血鬼、みたいな……?
――あれ、普通に人、だよな…
[そこにいたのは若い女。自分の他にも同じ境遇の者がいたのだろうか、と、ぼんやりと考え。]
どうせ殺すなら…
化け物より女の方が、色気があっていい、ねえ。
【人】 小娘 ゾーイ[血液が体内に戻ろうとする光景は異様だが (113) 2011/10/21(Fri) 23時半頃 |
【人】 小娘 ゾーイ[頷かれれば表情がぱっと明るくなる (120) 2011/10/22(Sat) 00時頃 |
【人】 小娘 ゾーイ ヒホ……。 (131) 2011/10/22(Sat) 00時半頃 |
【人】 小娘 ゾーイ―路地裏― (133) 2011/10/22(Sat) 01時頃 |
[不自然な色のお菓子を見れば、胸が締めつけられるよう]
ああ、あれ が
[小さく喉が鳴る]
ほしい
奪えばいいか、
それとも殺せばいいか
[麻薬の禁断症状のように思考を圧迫する。
「お菓子を集めればいい」だとか何か、言われたことは思考の隙間に埋もれてしまった]
【人】 小娘 ゾーイ[暫く呆然としていたけれど (142) 2011/10/22(Sat) 01時半頃 |
【人】 小娘 ゾーイ[死者に哀悼の意を表していたかと思えば (150) 2011/10/22(Sat) 01時半頃 |
【人】 小娘 ゾーイ[クラウンがひーほ。と言うのが聞こえる>>148 (153) 2011/10/22(Sat) 02時頃 |
【人】 小娘 ゾーイ[黒猫が白猫のポーチを抱きしめて (160) 2011/10/22(Sat) 02時半頃 |
[大げさな身振りで話す中、考える。
負傷した左手、背中、アバラ
2体と戦って無事にお菓子を奪えるか否か。
一つ瞬きをする間に出した答えに従って、道化はまだ動かないことにする]
[近くから香る甘さに、酔ったように曖昧な笑みが引き出されるが――
見える姿は三日月の笑い、気付かれることはない]
【人】 小娘 ゾーイ[肩を落とした道化に目尻を下げて (163) 2011/10/22(Sat) 03時頃 |
【人】 小娘 ゾーイ[道化を見て、黒猫を見て、もう一度道化を見る (172) 2011/10/22(Sat) 04時頃 |
【人】 小娘 ゾーイ[殺人現場を離れて、孤児院へと続く道を歩く (177) 2011/10/22(Sat) 04時頃 |
【人】 小娘 ゾーイ―孤児院― (178) 2011/10/22(Sat) 04時頃 |
あの死体、舐めとけばよかったかな。
[甘いにおいが鼻に残って、物欲しそうに死体を見やる。
けれど本当に欲しいのは違う。きっとそうだと、道化は確信している。
ほしいのは、お菓子や、それから―――……ね?]
[彼女は目の前の人間を見た。
お菓子を食べた人間、その魔力に憑かれた人間]
ホウ……。
(ほう……。)
[これは、私と、一緒?
これが、私……?
無意識に彼女を突き動かしていた衝動は、急に小さくなった。
自分はこんなにも、何かに侵され、うかされ、動かされていたのだろうか。
こんなにも、醜い――]
私は、気付けば、あなたに、なって、いたのね。
[心に直接語りかけることができるはずだ]
――で、お姉サン。
なんでアンタ、お化けの姿してねえの?変身でもするんかい?
それともあれか、何か特別なお菓子でも、落としてくれんの?
――どっちにしろ殺すんだけど、さあ。
やっぱガキより野郎より、キレイなお姉サンの方が殺し甲斐がある、ってね。
いい声で、啼いてくれよ?
[男は狂った笑みを浮かべて、ナイフを構えた。]
へえ。言葉通じるのね。
さっき殺したフラスコ野郎はさっぱりだった、ぜ。
んじゃやっぱお姉サン普通のヒトなわけ?
――で、どうすんの、殺るの、殺らないの。
――逃げ出す少し前
いいえ。
私は、お菓子を、食べてしまったもの。
きっと、元には、戻れないわ。
あなたは……。
ほう……。
[そして]
私は、あなたは、殺したくない。
あなたからは、美味しそうな、血の匂いがするけれど……。
人殺しは、できないわ。
人殺し?
ああ、俺もなんか化け物に見えてんのかと思ってたんだが、違うんか。だったらもう、遅いんじゃねえの?
俺がさっき殺した化け物は『人間になりやがった』ぜ?
美味いお菓子をくれたけどな。
【人】 小娘 ゾーイ ヒホホッ!(うん、そうだよ!) (210) 2011/10/22(Sat) 22時頃 |
【人】 小娘 ゾーイ ヒホ?(どうしたの?) (211) 2011/10/22(Sat) 22時頃 |
ああ でもとてもうれしい!!
お化け同士で戦ってくれれば、ね、素敵!
【人】 小娘 ゾーイ[モニカの行動>>214で、同じだと言ってる様に見えた (222) 2011/10/22(Sat) 22時半頃 |
【人】 小娘 ゾーイ[非現実を受け入れやすいというよりは (238) 2011/10/22(Sat) 23時頃 |
【人】 小娘 ゾーイ[黒ネコみたいに耳が良くなっている訳ではない (247) 2011/10/22(Sat) 23時半頃 |
【人】 小娘 ゾーイ[入り口の辺りから、ネコの鳴き声] (264) 2011/10/23(Sun) 00時頃 |
【人】 小娘 ゾーイ[扉を蹴破る音が響いた (272) 2011/10/23(Sun) 00時半頃 |
ね、ね、甘いお菓子。
持ってるんでしょうか。
[僅か細まる瞳は、けれど、花々に埋もれて外に覗くことはない]
ああ もってると、いい です ね!
【人】 小娘 ゾーイ[炎は命中しただろうか (285) 2011/10/23(Sun) 01時頃 |
【人】 小娘 ゾーイ[ずりずり、と壁際へ後ずさる (294) 2011/10/23(Sun) 01時頃 |
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