94 眠る村
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[仲間を呪うなんて ―――― できるわけが、ない]
[クラリスが][ゼロごと燃えていくのをただ、見ているしかできない]
ボクは、"また"―――
――― ゼロを救えなかった。
[それは誰にも言わなかったエイトの名の由来に繋がる物語]
ごめんね…、ゼロ。
ボクがいたのに、――― 守れなかった。
ゼロ、返事をしろよ。
また、嗤えよ。
……ッ、―――― くそ。
[それでもエイトは演じ続ける]
[それがエイトの信念のように]
[内なるものを秘めていても]
[それを覆い尽くす冷たい氷のように]
[この男の手を取り続けることが]
[危険だとは、まだ、知らない]
ずぅっとケヴィンと、こうしたかったんだろォ?
なにを拒む必要があるっていうんだ。
ボクは ローズマリー、だよ。
[同じだからこそ][残酷なのだと知っている]
[――― そして、村に深い霧が覆い始めると]
[どんな状態であろうと、人は皆 眠る―――]
眠れよい子よ 庭や牧場に
鳥も羊も みんな眠れば
月は窓から 銀の光を そそぐこの夜
眠れよい子よ 眠れや
――― ねむれ
[眠りに落ちる男たちを見る瞳は冷たく]
ボクはやさしいねェ
…、シメオンの元に送ってあげるんだから、さ
[亡骸と共に泣いていたフィルの前でぽつりと落とす言葉]
あの世でクラリスに、振られちゃえば…いいよ
[クラリスの願いは叶えない]
[駒は残す]
[エイトは迷うことなくフィルへ牙を向けた]
さァて、本物様は どうするかなぁ
[裡で聞こえる嘆きの聲にくっくと喉を鳴らして嗤う]
ローズ、キミは弱くてェ、甘い
だけど …人を殺し続けても、もう、…慣れてきただろ?
[いたぶり続けるエイトは魂をがりりと削るように言葉を紡ぎ]
[――― 夜を、愉しむ]
[―――これは夢か][それとも唯の幻か]
はじめまして「ゼロ」
はじめまして「ゼロ」
キミの
ボクの
名前は
『ゼロ』
…ゼロ、
ボクをおいていくなんて
ほんとにキミは勝手だ。
[けれどエイトはそんなゼロが好きだから]
でも 大丈夫。
ボクの中に ゼロは無限に広がって存在している。
だから、
――― ボクは エイトなんだ。
[無限の闇の鎖に繋がれたまま]
[人に寄生し生き続ける獣]
[夜も自らが眠る事はない]
[やすらかに眠ることなんて]
[許されない]
[夜の眷属]
魔女様に逆らえなかった、か。
[仲間の最期の言葉を呟いて]
[自分の裡にもいる魔女]
…、ローズ
[成り変わって演じて]
[その境目が][狂い始めそうになる]
キミの大切なものを
沢山奪ってやったのに
沢山嘆かせてやったのに、
絶望しないんだ。
諦めないんだ。
キミなんて、
何もできない弱い女だってのにさ。
…、弱いくせに。
弱いくせに。
――― 人間の、くせに。
[望む死が与えられず、生き続けられる苦しみ]
[奥歯を噛む姿は誰かと重なる]
[それでも][エイトは、――― 宿主を演じ続ける]
[―――たとえ、どんな状況であろうとも 演じるのが]
[どこまでがエイトで]
[どこまでがローズか]
[解らなくなるほどに]
ローズ、…ボクはねェ
ケヴィンを"人狼"と知っていて
それを護ろうとしているローズを"演じている"
それを完璧に、成り変わって最後までやりきるだけだよォ?
[その結末がどうであれ、と][エイトはくつりと小さく嗤う]
人は大切なものを護るために 嘘をつく。
だけど、ローズ。
…キミはそれが とっても下手だよねェ。
ち、がう
違う、こんな はず。
[エイトは知らない]
[知らない故に]
ッ、 ――――――― ローズマリィッ、貴様 …
ちがう、全て筋書き通りだった、はずだ
いつだ、いつから狂った
ゼロが正体を暴かれたときか、
あの弱い魔女が喋ったときか、
いつから、いつから、
――― 一体、…いつから だ
ボクは、こんな甘い女に負けたっていうのか
ありえない、ありえない
人間ごときに、負けるなんて
殺すのはボクらの方だ
…、ありえない
……、人間 ごときに ―――。
[言葉が消え入り始める]
ッ、 …
[バァン、と跳ね除けられる感覚が身を襲った]
ッッぐ、… な、んだ。 何が、――。
"エイトがわたしを演じきるならァ"
"今度は、わたしが エイトを演じてあげる"
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