217 【突発誰歓】幸福の壷【十二支騒動記】
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邪気からもたらされた眠りより目覚めて 常と変らぬ辰の翁が居ってくれたは……
なにより心強かったし嬉しかったのう。
[にこり笑う酉の頬。 化粧施さずとも淡く紅さし、本音が花弁の如くこぼれた。]
(122) 唐花 2015/02/20(Fri) 22時半頃
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[禊よ、祝いよ、と差し向ける酒杯。
今ばかりは似合わぬ照れがあっても 見過ごせとばかりに芳醇滴らせる*]
(123) 唐花 2015/02/20(Fri) 22時半頃
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―悪餓鬼どもとの昔話― [ひらりかざす緋色羽。 ようよう馴染んで落ち着き始めた頃のこと。
巳が午を殴っただの騒ぐ小童どもの群れに>>103 すたすた押し入り、
食らわせる拳骨は二人分。]
(126) 唐花 2015/02/20(Fri) 23時半頃
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殴る方も悪いが嫌がることをする方も悪い。 周囲で囃し立てたも同罪ゆえな。
[呆気にとられる小僧たちに容赦なく同じように制裁くだし、 ああ、爪が歪んでしまうわ、と嘯いた。]
午よ。 正直が悪いとは言わぬがな。 嘘も方便、他者の傷つかぬ言の葉選びにそなたはこころ砕け。
――で、巳よ。
(127) 唐花 2015/02/20(Fri) 23時半頃
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この馬鹿者。 名前一つでお主が矜持と巳のお役目が地に落ちるほど安くはないわ。
己をしかと保て。 胸を張れ。 さすれば、他者の評価など後からついてこようて。
[にこり笑っていい諭す。]
(128) 唐花 2015/02/20(Fri) 23時半頃
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[――が、]
したが、主の尊の御前騒がせたは重罪ゆえの。 御老のお叱りはたんとうけよ。
[微笑み、悪がきどもへと示すは先代の亥の大老。 酉の一喝で多少は雷も威力も和らごうこともあるやもしれぬが。 小童どもにはその加減とて分かるまい。
たっぷり叱られ、涙目になったちびどもを 改めて抱きしめてやれば、小さくごめんなさいと聞こえて。
その無邪気さに微笑み返す。
そんな昔の小さな思い出話よ。**]
(129) 唐花 2015/02/20(Fri) 23時半頃
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[ふと聞こえた辰の声に>>134、小さく指先が跳ねる。]
なれば…次はもう少し抗わねばのう。 泣くを見るは切ないゆえ。
[片手でもゆとりあるほど小さなひよこ。 抱き上げてくれた温もり思いだし、 せめて涙零さず済むほどには傍にあろうと、 そっと思った。
久方ぶりに頭に触れた手のひらは、 やはり大きくて温かくて、 顔を隠す仮面があってもなくても、慕わしいのだと 笑みを浮かべる。]
(138) 唐花 2015/02/21(Sat) 00時頃
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[それは遥か昔のこと。 初めて緋色の衣身につけ、 皆へお披露目して。
けれどまだまだ童ゆえ、 すぐに体力尽きて大きな龍の膝で微睡んだ。
ぱちりと目を開いた時には先達は皆酔いつぶれ、 仮面つけた龍もまた、夢うつつ。
好奇心と悪戯心。両手に宿って伸びたは仕方ない。]
(141) 唐花 2015/02/21(Sat) 00時頃
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[傷痕を醜いとは思わなんだ。 初めて見た素顔に、じっと視線注いで。
その瞳が開いたのが嬉しくてにっこり笑った。]
「お顔が見えても、見えなくても、大好きよ」
[困惑した表情に、年上の男を初めて可愛いと思うたは内緒。
ちらりとこちら見やる視線に>>139 その折の面影重ね、微笑むばかり。]
(142) 唐花 2015/02/21(Sat) 00時半頃
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[赤き血潮に染まった頃も。あったという。
怨嗟の声が止まぬ夜も。あったという。
お伽噺にするには新しい、昔ばなし。]
………だれ?
[岩陰の、奥から人の声が聴こえた気がして。
少年は足を向ける。]
[血に染まり、怨みに染まる事もあった上佐川。
そうと知っても其処に佇み、飽くることなく泣いたのは、其処にいれば己の持つ名を持った人に、必ず逢えると思ったが故。]
逢いたいわ 逢いたいの……
[何時までも何時までも泣いていると、誰かが此方へ来た気配がして。]
誰なの……? 『しんしょう』……?
[それは、そうであってほしいという、願いにも似ていて。
肩までの長いとも、短いとも言えぬ黒髪を靡かせながら振り返る。]
[振り返ったその少女は。
川面の光を黒髪に受け。まるで光の輪を冠しているかのよう。
初めて聞く声が、初めて聞く名を呼んでいる。
それは誰の名?]
[いや。
己の名だと―――信じることができた。]
なつひ!
[叫んだ。開いた口から飛び出た名前。
駆け寄り、腕の中に抱き締めて頬を擦り合わせた。]
夏日、夏日、なつ……ひ
[手は黒髪を乱す。光を払うかのように。]
[振り返った前にいたのは見知らぬ少年。
駆けてくるその少年が紡ぐ名は、聞き覚えのない、知らぬ名ではあったけれど。
其が己を示す名であることは、すぐにわかって。]
しんしょう……? 辰星なの……?
[尋ねなくとも、己の中で答えは出ていて。
駆け寄り、すりより、されるが侭に髪を乱れれば、今度は嬉しさで目が熱くなる。]
今度はちゃんと、忘れなかったわ
貴方もちゃんと、覚えててくれたのね
[抱き締め、その温もりが本物であると実感すれば安堵し。
やっと逢えたと、鬼灯色の目からまた涙を溢した。]
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[いつともなく居心地悪そうな南方に、小さく笑い。]
ほれ、お主も飲もうて。 独り占めしたくなるような甘露だが、共に飲むがよほどの美味よ。
[杯に注いだ透明な酒精押し付け、 まさか我の酌が飲めぬとは言わぬであろう?と小首傾げる姿はいつも通り。]
(163) 唐花 2015/02/21(Sat) 21時半頃
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[取りついていた翳りが既に遠ざかるを改めて見て、 そっと笑み深く。]
(あの子らとも――、 いつか誰ぞ飲み交わしてやれる宿縁巡ると良いて)
[とうに感じ取れない邪なる気の行く末思い、 己の喉灼いて滑り落ち行く酒の香に、こくんと白い喉が揺れた。]
(164) 唐花 2015/02/21(Sat) 21時半頃
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[酉は邪を飲み喰らうもの。 喰らいて退け、清めるもの。
胃の腑に落ち行く熱に、いつか邪気の浄化されるの願って。
今はただ、宴の声に微笑むばかり。]
皆の顔が、一番のつまみよのう。
[はしきやし、と零す呟きは誰ぞ聞いたか。 酔うた酔うたと笑いながら、 主の神へと他愛ない悪戯しかけ、 辰の背に寄り掛かって、杯掲げる。
見渡す座敷、思い思いに過ごす朋輩はどれも愛らしい者。]
(165) 唐花 2015/02/21(Sat) 21時半頃
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…ひと騒動あったが、こうして幸せを感じられるのであれば ま、幸福呼ぶ壺というのも全くの嘘ではないのやも知れぬの。
[尤も、主の尊の耳に入れば、また何を購うことやら。 一人呟くにとどめた声に、込められたは
何の変哲もなく、ただ常に溢れるばかりの
かけがえのない―――しあわせ、と呼ぶもの。**]
(166) 唐花 2015/02/21(Sat) 21時半頃
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[巳 火性 陰
その方角を司る神は『おそれ』を表し、凶とされ
司る星も凶星たる星『螢惑星』 別名『火星』
方角も、星も、司りし神も、己が名でさえも
凶事ばかりを示すもの
軈て来る吉事を、深く味わう為に在るもの]
[禍福は糾われる縄の如く、表裏一体を成すもの
何れ程願い、神にすがろうとも、大吉は何れ凶に還る
其は禍とて同じこと
身に振り掛かりし厄は、廻り廻って何れ吉へと還る
――だが、その何れも必要な事に非ず
大事は、禍福は神が決めるに非ずと云うこと
総て己が決めし事、と云うこと]
[己を不幸と思う者よ 己の禍を嘆く者よ
禍凶を知りし時、初めて幸福を知ると思し召せ
禍凶ありてこその幸福だと思し召せ]
[総ての禍福は意味あること
総ての禍も福も、己が決め、定めたと云う事]
[―――――――幸せだ、
と思えたのは久方振りだった。]
[その瞳は赤橙。
遠くからでも招き、誘う色。
胸焦がす名前を呼べる幸せは喉を震わせる。]
……あぁ、そうだとも。
僕が「辰星」だとも。
[遠い記憶。暗闇のなか。光のなか。
確かな感触、甘やかな香り、心地好い声。
なつひ。
其れ以外の名前など知らないとばかりに、繰り返す。
なつひ。 夏日。]
忘れさせるものか。赦さないと――言っただろう?
忘れるものか、忘れるなんて――…
もう一度喪うなんて。
……今度こそ離れず、共に生きていこう。
夏日。
君の全てが―――欲しいんだ。
生きる時間も、何もかも。
もう待たせないで済むように。
[奪わせて欲しい。
独りにしないで――と
請い願う。恋願う。**]
[己が紡ぎし名を肯定せし少年に、繰返し繰返し名を呼ばれ、幸を噛み締める。
赦さないという愛しい名を持つ相手に暫し目を見張るが、軈て笑みへと変えて]
そうだったわね 赦さない、と言っていたわ
[嫌だと紡ぐ口に、ふふ、と笑いを溢し。]
いいわ 全てをあげる
あの時叶わなかった、全てを――
[あなたに奪われてあげる。
其は、娘なりのもう二度と離れないという契り。]
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