94 眠る村
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フィリップ、壊れたんだ?
それほど、大事だったんだね。
[シメオンという存在そのものが、彼にとって光だったと――
そんなことも知らず、軽く軽く、奪い続ける命。]
使えなくても、じゃまさえしなきゃまぁいいよ――……。
手持ちの"駒"に期待だね。
[ブローリンは、敵。
ケヴィンとティモシーは果たして。]
シメオンの死体から離れたくなさそうだったからねェ
なんだったら、見て来たらァ?
[扉の前で佇むゼロへそう伝えて]
じゃまかァ。
あーいった人間が、何仕出かすかが
一番読めないからァ… ね。
危なっかしいっちゃあ、危なっかしいよねェ。
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[老人は夢を見ている。]
…あなたは僕を殺した。 …ハナとの幾年月は幸せだった? …僕があいつを連れてきたとき、あなたは祝福してくれたね。 …でも、どこか不機嫌そうだった。 …ローズが生まれたときも、そうだったね。 …そしてハナが生まれて…あなたはあいつを殺したんだ。 …そして僕も。 …ハナとローズはあなたのものになった。 …幸せだった? …あなたはハナをどこにも行かせたくなかった。 …だから子供のままにしたんだね。あなたがそうしたんだ。 …幸せだった?
…返してもらうよ。 …報いは、受けなくては…
[それは事実ではなかった。だが、老人には真実でないと言い切れない。 老人はこの悪夢から覚めたいと叫ぶ。現実に、何があるのかも忘れたままに。]
(54) 2012/06/18(Mon) 19時半頃
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−回想・霧の晴れた頃に−
…あなたはローズを守りたい。 …でも、ローズの幸せを守りたいんじゃないんだ…
[老人は肩を揺すられて目を覚ます。 まるで霧の前後がなかったかのように、ローズマリーを見て言うのだった。]
儂は、おまえの幸せを守りたいんじゃよ…
[老人は、自分の言葉に打ちのめされる。]
(55) 2012/06/18(Mon) 19時半頃
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…昨日の夜の話じゃよ。
[一言、老人はローズマリーに告げて、弱々しくも笑って見せた。]
リサ坊…リサ坊は無事じゃろうか。
[置かれた葡萄酒もそのままに、老人は蹌踉めくように立ち上がった。**]
(57) 2012/06/18(Mon) 20時頃
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[扉を開けたクラリッサに老人は近寄ろうとする。]
リサ坊や… 怖かったろう。ブローリンの言葉はほんに怖かったろう… ほんに……
[次の句を継げようとして、老人は思った。 気付かなかった頃には、もう戻れない。ハナを見た後では。と。 老人は誤解している。誤解しながら、正しい答えを得ていた。]
儂を呪うたらええ…呪うたらええんじゃ。儂は皆に恨まれとる… そうして…生き抜いたらええ…
[驚愕と消沈と、筆舌しがたい表情で、老人は後ずさっていった。 >>49の呟きを老人は知るよしもない。自分の心は定まった。と、思った。]
(59) 2012/06/18(Mon) 21時頃
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[幼馴染の、従兄弟はこれから一体どうするのだろうと]
ふふ、
[状況は、こちら側が有利]
[そういう風に動いてきたのだから]
[所詮 加護 なんて]
[人の心次第で、どうにでも操れる]
―― 残念だったねェ、ご先祖様ァ。
――加護で、人も殺せてしまう時点で、
酷い片手落ちだと想わない?
["ご先祖様"のしかけた術は、
疑心暗鬼と罪悪感――狂気を呼ぶ最高のショーだった。]
所詮其の程度だったってことさ。
今よりうんと力を持っていたその昔でさえ、ね。
無駄だったんだよ、何もかも。
加減ができない魔術だったのか
それとも、ご先祖さまは子孫を信頼してたのか
くくくっ
[信頼][そう言えばどこか可笑しくて嗤う]
所詮は ボクらの前では意味のない存在ってことさ
――信頼が仇になるなんて、
滑稽なことじゃないか。
[エイトに寄せる信頼
知らず、寄せている絶大な信頼――。
おとぎ話はその宿主に夢を見せるのだろうか。]
[ゼロがすること]
[それは、クラリッサを、演じきること。
エイトが――かしこいエイトがうまくやると。]
[粉々に砕いた心はただただ空虚。]
[ゼロが宿主を壊す理由――
成り代わりに感応しすぎて、
意志を奪わねば感情のコントロールが、効かない。]
[エイトに語らぬ、秘密。
これまでそれで、うまくやってきた――今度もきっと。]
[――――朝]
[恋人と触れ合う、女を演じる間]
[一寸だけ意識が途切れた瞬間があった]
[それはほんの一瞬]
[刺青に触れ、触れられたときの]
[エイトはまだ、それが 何かは解っていない]
[顔を背けたブローリン。]
おや?
案外、泣き落としでいけるのかな。
[ここまできても、なおも楽観的な声。]
フィリップは――クラリッサを救いたいんだって、さ。
[落とす余地はあるかとめぐらせる思考。]
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居る… …にん居った…まだ……
加護は綻びとったんじゃ…加護は…
[もはや廃人と形容しても良かったかもしれない。 ふらつきながら、よろめきながら、老人は誰にも聞き取れぬ声で呻く。 それでも悲しいほどの習慣にまもられ、老人はいつもの席に座り、 ローズマリーの会話を聞いていた。]
(83) 2012/06/18(Mon) 22時頃
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[ゼロの語らぬ秘密は、知らずのまま]
[エイトは宿主の魂の欠片を残し弄んだまま]
[その宿主を演じきって魂の叫びを聞くを愉しむ]
――― ゼロ、…
ボクはきみを呪いたくなんて ない。
[同時に、仲間を失うことを忌み嫌う]
―――――――――。
[死にたくない、と 言ったはず。
けれど、クラリッサの叫びが、 いやに近く 聴こえた。]
僕、今―― 変なこと言った?
[呪いたくないと、聴こえた声のタイミングがよすぎて
はたと、考えるけれど]
―――― … 、いや?
[聞こえていないと、返す言葉]
…ち。
フィルはいい駒には ならなさそうだな。
[エイトは獲物を見極める]
[本物様は憎い、けれど――いい聲で 啼く]
邪魔、になっちゃったね。
じいさんも、何だか使い物になりそうにないな。
[そう漏らす、裡の裏側。
魔女がもらす声は、暗くて くらくて。]
[ なにか、][嫌な予感がする]
[ 護れないのではないのかと、いう 思いが ]
[ 『重なる』 ]
悪いけどさ…、年寄りは美味しくない。
[だから殺すとしても最期くらいに思考する]
[食べる気もあまりないといった口調]
ローズなら、まだ、
あのお爺ちゃんはァ つかえるかもしれないしねェ
五月蝿い――――
[ぼそり、つぶやく 声]
壊れたくせに、
壊れたくせに、
[おそらくは初めて聞かせる、イライラとした声――
乱されているのは、魔女に引きずられる前兆。]
エイト、 どうしよう。
[困り声で助けを求めたまま、ゼロの感情が乱される]
――― …ゼロ、?
[緊張の糸を張ったような聲]
おい、 クラリスはもう いないんだろ?
ゼロ、どういう ことだ ッ。
[護りきれない状況だと冷静に判断するエイト]
[このままでは ゼロを救えないと]
だめだ、諦めるな。…、ゼロ。
壊せ、クラリスの魂を完璧に 喰らえ。
[――――引きずられる。]
[魔女の 暗い 感情に。]
[ひとりで死にたくない]
[エイトはそれがゼロの言葉ではないと解る]
[だから]
クラリス、聞こえてるか。
おまえが一緒に死にたいと願うのは
目の間のその男、―――ブローリンか?
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[老人には、崩れる音が聞こえていた。 過去の出会い、別れ、何気ない会話。そこに寄せた想いのすべてが偽物。 ただ自分に酔うだけの為に紡ぎ出された言葉の数々が、いま崩れていく。
赤の他人を孫と呼び、信じてもない孫娘の恋人を息子のように言い、孫娘を愛す自分の為に使われた言葉の数々。それが彼の記憶のなかで崩れていく。]
リサ坊や…。 儂を呪うてくれ。呪うてくれ。それでええんじゃ…
[老人は絞り出すようににクラリッサを見る。]
(114) 2012/06/18(Mon) 23時半頃
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エイト――
ごめんね、
魔女様に、逆らえなかったよ。
[同胞の問いには、 ゼロの口からYesを *返す*]
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