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[まるで棒読み、或いは抒情詩。
どちらにとるかは、“ちょう”次第。]
伊達に長らく生きちゃいねぇよ。
お前さん、何も変わらず生きる気かね。
そいつぁ、良い子息、良い血筋、良い手本よ。
[一代で財を成した彼の親の集大成。
生まれながらの貴族を作り、彼はその様に育った。
決められた運命、彼の介入を許さぬ未来、永遠の鳥篭。]
だがな、お前さんは花籠へ訪れた。
[せせら笑う男の笑みは深くも悪質。
頬を唇で舐めるように迫れば、吐息が稜線を下っていく。
彼の美しい金色の羽は鑑賞されるためにあるのか。
格子越しの空以外を知らぬまま、永劫を生きるのか。
―――彼は永遠の孤独に耐えうるのか。]
――…来いよ、ニコラス坊や。
俺はお前さんのことを買っているんだ。
俺と出会っちまったが、運の尽きと、諦めな。
[傲慢な夜蛾の囁きが、淡く染まった肌に懐く。
何も知らない彼を染めるのではなく、壊してしまう程、勁い悪辣。]
以前の"丁"の話は、耳にしております。
[舌這う感触に息を呑んだ。
きゅ、と触れる指先を軽く握る。]
……ええ。
丁は、蝶では御座いません。
真似事をしても、決して飛ぶ事は出来ぬ花。
[首に痕残す感触にさえ、逆らえずに居る、哀れな花。]
[彼が何を思い"特別"だ等と告げるのか。
気付ける程に彼や"丁"を、己は知らず。
この己を閉じ込める花籠の主を、好ましく思う事は無く。
けれど、逆らい立場を危うくする賭けに出るでもなく。
行きません、とは言わず。
この花籠の外を望む唇で]
花は、飛べはしないのですよ。
[とだけ、繰り返し。]
[そうして拾わぬものから目を背け
それは『大事(しあわせ)』ではないと、謂い聴かせるのです。]
もし、違えば。
縁起でもないことをと、櫻の花を叱ってください。
[何故、探すことが出来ないのか。
何故、謂い聴かせねばならぬのか。
何故、大事な物を持ってはならなかったのか。
判らぬなりに拾う言葉と、判らぬ僕に聴かせる言葉で
綾取りのように完成した言葉を紡ぎました。]
―――藤之助さんに、何かございましたか?
[きゅうとその身を少しばかり
強く抱きしめたのでございます**]
明日の明け方。
沈丁花に降り積もる雪は。
それは多くあるだろうねえ。
[丁は“蝶”に在らず。
花は飛ぶに在らず。]
[しかし綿毛持つ蒲公英なれば―――… **]
なにも、変わらず…
[鸚鵡返しに彼の言葉を繰り返す。
きっとこれから僕は許婚と結婚して新しい姓を得る。家の稼業を継いで親の築いた財を富ますことに老いるまで執心することになる。子もできることだろう。
そんな人生を今までと変わらず…
何一つ不幸の無い幸福だと思っていた生が改めて眼前に突きつけられ、途端に虚無感を覚えた。
頬を息が吹く。
自分よりも長く、そして異なる生を送ってきた男の匂いが僕を囲っているような気がした。
彼の纏う空気は一体どんなものを積み重ねて得られたものなのだろうか。
羽ばたき方を識りたくて。
やっと得られた理解への渇望と共に、
僕は悪辣たる毒蛾の誘いに頷いた。]
…はい。
[無知ゆえに毒を喰らうのではなく、
毒と判っていながら溺れる危うさで。]
【人】 営利政府 トレイル
(65) 2014/09/20(Sat) 10時半頃 |
[彼の人生には、安寧という言葉以外は存在しないのだろう。
恵まれた、と言えば聞こえは良いが、定められた生だ。
敗北の味を、従属の甘美を彼は知らない。
最初は傲慢な上流階級然とした態度に些細な興味。
次は蝶になりきらぬ横顔への好奇心。
果ては初体験に憧れる乙女のような彼に喉が渇いた。
深窓で育てられた彼の期待は、何処か幼く危うい。
されど、熟した果実のように蜜を滴らせ、己を誘う。
彼の傍が似合うのは白馬の王子様でも、可憐なお姫様でもない。
羞恥を掻き立て、下卑た悦びで彼を穢す、悪徳な支配者だ。]
[もしかすれば最初から彼の毒気に
魅かれていたのかもしれない。
家の者が見れば眉を顰めるであろうこの男に
恐れどころか好意を抱いたのは何故か。
未知への興味だけか?
僕は無意識に自分の求めているものが
分かっていたのではないか。
純白の処女雪然とした己の人生を穢す
荒々しい足跡を望んでいると。*]
【人】 営利政府 トレイル
(85) 2014/09/20(Sat) 18時半頃 |
【人】 営利政府 トレイル
(86) 2014/09/20(Sat) 18時半頃 |
【人】 営利政府 トレイル
(87) 2014/09/20(Sat) 18時半頃 |
[優しくしているのは、きっと己の為。
好き好んで花籠に咲く訳ではない己を慰めるための。
せめて、愛無くとも優しさが在って欲しいと望む、傲慢な花。
錆色の蝶の真逆に。]
……叱らないさ。答えは否だから。
何かあったわけじゃない、良くある話だ。
花籠から花が一輪消えるなんて、何度もあったろ?櫻子。
[日が昇ってから嫌な胸騒ぎは収まる気配は無く、むしろ増すばかり。
一目藤の花を見ようと訪れた時には、部屋は『何も無くなって』いたのだ。
『どうして』そうなったかまでは察せない、解らないが。
花がどうなったかなんて、想像するのは簡単だった。]
【人】 営利政府 トレイル
(116) 2014/09/21(Sun) 00時半頃 |
【人】 営利政府 トレイル
(117) 2014/09/21(Sun) 00時半頃 |
【人】 営利政府 トレイル ――だけど。 (118) 2014/09/21(Sun) 00時半頃 |
[年期がいつか明けたなら。俺自身も、彼の年期も明けたなら。
本当の名前をそっと教えるつもりだった。
柔らかな音で奏でられる名の音を聞きたかった。
雪山にかかる月も、『本物の朧月』も共に眺めたかった。
身に余る望みは砕け散り、砂のように落ちていく。]
【人】 営利政府 トレイル[ 嗚呼、月が堕ちては花開いた、と。 (132) 2014/09/21(Sun) 02時頃 |
【人】 営利政府 トレイル
(133) 2014/09/21(Sun) 02時頃 |
[胸に過る痛みを見ぬように視線は一度だけ地に落ちる。
濡れた地面を彩る数々の秋の彩り
誰の手によって植えられたものなのか。考えずとも鮮明に脳裏に思い浮かばせ、青年は顔を顰めた。
おとつい自分との出会いを「しあわせ」だと口にし
数々の教えを伝えてくれたその人自身を裏切る行為なのだろうから。
『花』としての振る舞いや心を苦労して見守ってくれた先生や
同じ年の瀬であることから砕けた調子で言葉を交わしていた青年のような世話になった恩を仇で売るような選択でもあるのだろう。
それでも儚き一夜の夢で終わってしまうかもしれなくとも。
この身が朽ちてしまおうとも、繋ぎ合った指の絡まりを見下ろせば、唯々幸福そうに口元は弧を描く。]
…ごめんなさい。
[囁きは雨の中、消えていき
その姿はもう花籠にて揺られることは、無い*]
【人】 営利政府 トレイル― 館→ ― (134) 2014/09/21(Sun) 02時頃 |
【人】 営利政府 トレイル
(135) 2014/09/21(Sun) 02時頃 |
【人】 営利政府 トレイル ―――必要なもの、集めて来るから。 (136) 2014/09/21(Sun) 02時頃 |
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