52 薔薇恋獄
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『あと……7人』
『間に合う、かしら』
[ *独り言は少し、不安気に* ]
[落雷の後か、耳に届いた声に眉間に皺を寄せる。]
……すまない。
人の心はままならないが。
俺は、俺の気持ちが一番ままならない。
[そして気がつく7という数字。
単純計算でいくものではないけれど、もし……―――。
そうなったなら、と、先を考えてふっと微笑んだ。]
『さあ』
『それがあなたの本心ならば』
『彼とてそれを責めないはず』
『あなたに本心を偽られるほうが』
『彼にとっては、残酷だと思うわ』
楓馬……―――。
[同じように見え聴こえる人の名を、心の中で呼ぶ。
見ないように聞かないようにしていながら、見聞きする理由を彼の所為にしていたけれど。本当は違うことに気がつく。
抑えることはできるけど、なくならない資質。
楓馬がいなければ、父がいない外では1人だ。
でも、楓馬がいれば1人ではないから。
――……だから。]
……多分、あまり時間がないのだろう?
もし、俺が1人飛ばされるようなことがあったら、
皆が無理なら、栖津井先生とだけでも話できるようにはならいか?
――……できれば、俺を選んでくれないのがベストだが。
[元々対人で喋るのは苦手で。
ともすれば傲慢ともとれる言葉を紡ぐ。
いつもはもう少し、それでも言葉を選ぶのだけれど、それすらも惜しむように。]
『ぎゃっ』
[ 上がる悲鳴はとても短く、低く、重く ]
『選ぶのはわたしじゃない』
『わたしが選べるのだったら、もっと早く楓馬と蛍紫を逃がしたわ』
[ こちらも言葉を迷う様子 ]
『……もし、あなたがいなくなったら』
『残っている人たちはわたシの声を聞くことができるようになるでシょうね』
『でもそれハ、ワたしと彼ラが近くナる証』
[ 女の顔に、無かったはずの痣がうっすらと浮かび始める ]
[ 今話しているのは、どちらの"日向"なのか ]
どうにか、彼らと喋れるようにはならないか?
[日向の言葉に、苦しそうに眉間に皺を寄せる。]
喋れないと、伝えれない。
なぁ、お前の望みは、唯、恋獄に魂を引きずり共に苦しむことなのか?
――……違うだろう。
[どちらの日向にしても、見方を変えれば救いに繋がりはするから。
それを信じてる。楓馬が信じていた彼女を。]
俺は口が上手くないから、お前の言葉を上手く伝えられない。
お前が誤解されたままであるのが、俺は哀しい。
『誤解だなんて』
『彼らの解釈はそう間違ってないわ』
『寧ろあなたたちが、わたしたちに好意的過ぎるだけよ』
『死んだ他人より、生きている大事な人を優先させて』
『皆救おうだなんて欲張ると』
『あなたが死ぬことニなるわ』
『わたしの目的』
『………………』
『なんだったかしら』
『モウ、思い出セないわ』
『たブン、たぶんね』
『一緒に泣いテくれる仲間がほシかったの』
『そうイう意味では』
『共に苦しむとイうのも間違いじゃナい』
『だッテ、苦しむ時でスらひとりぼっちなノは、さみしいモノ』
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