167 あの、春の日
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ヒーロー。
僕には、なれなかったもの。
今度こそ、僕はヒーローになれるのだろうか。
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― 食堂にて ―
[―――時は少し戻って。 マユミたちと一緒に食堂に来た時]
きつねそばおねがいしまーす!
[元気に注文して、にへへ、と笑った。 食堂に集まっている人々の姿を見渡して。 いつもよりも少し綺麗に見えるジリヤとフィリップの姿を ちらりと眺めて、眩しそうに目を細めた]
……いいなぁ。
[つぶやきとため息は小さくて、誰の耳にも入らなかっただろうけど。]
(158) 2014/03/06(Thu) 10時半頃
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― 校庭 ―
[さくら散る春の頃、同じ陸上部の1年生女子グループが、 「どの先輩がかっこいい」などと きゃっきゃっと騒いでいた時期がありました。
人気だったのはジェレミー先輩とか、 図書委員長のベネット先輩とか、 同級生だけどルーカスも「顔はいい」なんて。
フィリップ先輩も優しそうで素敵な先輩、と言われていたのだけど、 とある女の子が「本気で恋した!」と騒ぎ出し 陸上部3年女子と1年女子の間で揉め事が起こったり……
この1年間、まぁ高校生らしいいろいろがありました。]
(159) 2014/03/06(Thu) 11時頃
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[だから、ひとりきりの練習は、なんとも言えぬ爽快感。 土を蹴る音とマットに沈みこむ音、 そしてときどきバーを落とす音がグラウンドに響く]
恋とはどんなものかしら………
[マットに体を沈めて、天を仰いでつぶやく。]
マドカも恋、してみたいなぁ。
[それは「なぜ」と聞かれると答えに困ってしまう。 みんなの気持ちがわからないから。 話についていけないから。 自分の中に眠っているそんな気持ちには、おこちゃまマドカはまだ気づいていない。]
(160) 2014/03/06(Thu) 11時頃
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……ううんっっ、
マドカは、空、飛ぶの!
[そう叫んですっくと起き上がった。 卒業する頃にはきっとわかるだろう、 軽やかに現実逃避をしながら棒を持ち、再び駆け出す。]
(161) 2014/03/06(Thu) 11時頃
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[そんなこんなしていたら、時間はあっという間に夕方。 夕飯(雑炊!)のことを考えていたら、 ふと、突然、思い出す]
あああああ〜〜〜〜! 追いコンの準備〜〜〜〜〜〜〜!!!
[1テンポではすまないほど遅れて思い出し、 グラウンドにこだまする声。 急いで練習道具を片付けて、ぱたぱたと走りながら 校舎へと戻っていくのだった**]
(162) 2014/03/06(Thu) 11時頃
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エルゴット先輩
卒業おめでとうございます。
先輩の未来がどうか、キャンバスの上の色彩と共に明るくありますように。
――――― 檀
ジリヤ先輩
卒業おめでとうございます。
生徒会の凛々しい先輩も好きでしたが、寮で一緒に過ごした先輩がもっと好きでした。
――――― 檀
フィリップ先輩
卒業おめでとうございます。
これから先も、皆にも動物にも優しい先輩でいてください。
――――― 檀
ゴロウ先輩
卒業おめでとうございます。
先輩の育てられた花、これからも大切にいたします。
――――― 檀
追伸:先輩は眼鏡がよく、お似合いになると思いますよ。
ジェレミー先輩
泣いてしまったお話し、ずっと忘れません。
これからも、よろしくお願いいたします。
――――― 檀
キャサリン先輩
華やかでしなやかな先輩が眩しくて、あこがれるばかりです。
これからも、よろしくお願いいたします。
――――― 檀
シーシャ先輩
先輩の褐色の眼差しは、どんな絵画より鮮やかで素敵です。
これからも、よろしくお願いいたします。
――――― 檀
[ハルカへ綴ったカードも、
他の皆と同じく紺碧の封筒に入れた。
言葉にすれば伝わってしまう今、少し気恥ずかしいけれど、
もしも未来が変えられたのなら彼女にはきっと伝わるだろう――]
マドカさん
あなたが空を飛ぶその姿を、眼に焼き付けさせてください。
これからも、共に頑張りましょう。
――――― 檀
ルーカスくん
籤の神様がまた、現れてくれますように。
これからも、共に頑張りましょう。
――――― 檀
[そして、ルーカス宛ての空色の封筒の中にはもう一つ。
彼の手によって撮影された、寮から見たいつかの星空が**]
[決意を秘めた声音は、小さく囁く。]
私、……もう大丈夫です。
一人で目覚めたとしてもきっと、もう――
後悔は、しません。
[きっと彼女には、この声は届くから**]
[それは、いつのことだったか。
過去を変えたい。未来を変えたい。そんな同じ願いを持った友の声を聞く]
そうか。
なんでも協力すると言ったのだが。
マユミは、一人でやり遂げたのだな。
[ハルカは、まだ成せずにいる。
決意を秘めたマユミの声音は、今のハルカに眩しく響く]
君は、強いな。
[いつまでも続くものだと錯覚していた。
振り向かなくても、確認しなくても、シーシャはハルカの背を追いかけてくると。
それが、錯覚だったのだと気づいたのは、いつだっただろう……?]
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― 玄関口 ―
[とたとたと走りながら寮に帰ってきたところで、 マドカが最初に見たのは夕日に照らされたマユミの姿。>>194]
あ、マユミちゃぁぁああん!!
鍋よ!鍋よ!追いコンなのよ! いそぐのよ〜〜〜〜!!
[マユミの腕をとってぶんぶんと振り回そうとする]
(209) 2014/03/06(Thu) 23時頃
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春風の花を散らすと見る夢は
覚めても胸のさわぐなりけり
……私は、私自身は。
心の奥底で、気がついていたのでしょうか。
[その歌は、かの人に過去のマユミが送った歌。
ただ、“花”というキーワードと美しい響きを持つそれを選んで記したそれは、その当時には気がつかずとも後に気がついた感情を色濃く映している。
それに彼が気がついたか、気がついていないのか。久しぶりに顔を合わせたそのときには聞きだすことができなかった。
ただ眼鏡を掛けていた、不思議に思ったそれを口にするだけにして――。
慕う想いは桜の色より淡く、尊敬と信頼という名の下に薄められていたのだろう。
けれど、それでいいのだ。
そうでなければ、いけないのだ。]
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[マユミの手がマドカの手をつかむと、 マドカはにこっと笑った。
マユミの様子には気づかない、気づけない、 マドカはまだまだ子供すぎて]
お鍋、きっと美味しいよね! たのしみね! ふふふふ、マユミちゃんったら食いしん坊なんだからっ
[お腹の虫を聞きつけて、マドカのお腹の虫もくぅくぅ鳴いた。 ふたり連れ立って食堂へと向かう]
(217) 2014/03/06(Thu) 23時半頃
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すみません。
[謝罪の言葉は、小さく呟かれる。]
でも、ハルカ先輩は……
私の手助けなど必要ないでしょう。
[強くなどはない。そう告げようとした。
幸せな夢をいつまでも、見ていたい。そうも思った。
それでもいつか、終わりはくるのだ。]
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[食堂の入り口をくぐるまえ、ふとマユミへ振り向いた。 マドカにとっては思いつきの、 とてもとても、些細な一言]
あのね、マユミちゃん、 もうすぐ2年生になるけど、よろしくね。 マドカとずぅぅっと友達でいてね!
[それだけ告げて、つないだ手をぱっと放した。]
雑炊〜〜〜〜〜!!!
[マユミを置いて、叫びながら鍋へとダッシュ]
(219) 2014/03/06(Thu) 23時半頃
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どうかな。
実際、僕はまだなにも成していないのだし。
[夢なのだから、何だってできると思っていた。
後悔する未来を知っているのだから、何だってできると思っていた。
けれど今のハルカは、結局10年前をトレスしているだけ。
もう戻れない日々を懐かしみながら繰り返し。
これでは何も変えられない]
僕も、マユミを見習わなくてはいけないな。
[清水の舞台から飛び降りるくらいのことを成さなければ。
きっと、あの腐れ縁は変えられない]
マドカは、ハルカの手元から鶏団子を奪おうとした。
2014/03/06(Thu) 23時半頃
私にできて、先輩にできないはずがありません。
それに、何をしたってこれは……夢、なのですから。
[過去は変えられるのか、変わらないのか。
そこまでは、未だわからないこと。
しかし後悔せぬようにと励ましてくれたのは、今近くのテーブルで鍋を食している彼女自身だ。
口元に近づけた箸を止め、微笑む。]
……美味しいですね、お鍋。
あの居酒屋でも、こんな美味しいお鍋、食べたいですね。
マドカは、ハルちゃん先輩と勝負!41(0..100)x1
2014/03/07(Fri) 00時頃
そうだな。
ただの、夢だ。
[キムチ鍋をつつきながら、そっとマユミの顔をうかがう]
ああ、そうだな。
何も成さずに夢から覚めては、せっかくの鍋が台無しになってしまう。
[口元にひそやかに笑みを浮かべ]
ああ、目が覚めたら鍋を食べよう。
僕は、そのあと10年後の寮の様子を見に行くことも、諦めてはいないからな。
……はい。
お鍋、食べましょう。
……そう、しましょう。
[どうしてだろう、悲しいことなど何もないのに、]
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