75 サプリカント王国の双子
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――お慕い申しておりました。
[心中呟いた言葉はそれだけ。
後は、締まるような想いに消えた。]
(私は、王女になるのだ。)
[首に。
細い、目に見えない糸が、絡みつくような。]
[女王がグラスに口をつけ、中身の液体を飲み下したのにゆったりと笑む。
その瞳は黒曜より昏く、とぷりと濁っていた。]
[そうすぐに変調を来たすものではない。
それで良かった。それが良かった。
時は、満ちた。]
―着替えの間―
…… ね、シメオン。
[衣装のズレなど、口実で。
実際は殆ど、手直しの必要はないだろう。
ただ、二人になりたかった。]
バルコニーから、国民たちの姿を、見たわ。
…… 本当に、たくさん、で。
"父さん"と"母さん"の姿、は… わからなかったの。
[この話を聞かせられるのは、自分付きの世話役ただ一人。]
きっと、見に来てくれてはいたと、思うんです。
でも、…… 上に立つということは、一人ひとりの顔までは、
見られないことなのですね。
[こんなことを言っても仕方が無いのは、わかっている。
けれど、胸に去来した空虚な寂しさは、どうしようもなく。
会いたいと、泣いた夜があった。
寂しいと、縋った夜があった。
王女としての教育を受け、歳を重ねるうちに、そんな事はなくなっていたが。
ミッシェルではなかった頃の、あの少女はもういなくなった、筈なのだが。]
これは、ひとりごと、です。
[幾度も彼に見せていた、弱い姿。
その前にくっつけていた、幼い言い訳。]
だから、すぐに忘れてくださいね。
[忘れろとまで謂うのは、本当に久しぶりだった。]
…… わたし、
母親に、なりたかった。
[もう二度と言うまいと、過去形にして。
妹王女には、決して許されぬ願いだった。]
[自分が生まれたときに、喜んでくれたという本当の両親。
養子である自分も可愛がってくれてはいるが、実の"娘"に対するグロリアの態度は、やはり何か違って見えて。
子を産むというのは、どんなことなのだろうかと、幾度も夢想した。
それが決して叶わぬと知ったときには、あまりの衝撃に涙さえ出なかった。
遅めの初潮を迎え身体が女になった、13歳も終わろうという頃だった。
普段は忙しくしている宰相レベッカが、二人になれる時間をつくり、神妙な顔で話してくれたのをよく覚えている。
王女なんてやめる、と言わなかった、言えなかったのは、本当の両親の思いや、シメオンの存在があったから。
衝動を踏みとどまるほど情緒が成熟し始めていた時期だったというのも、大きかった。
その点で言えば、身体の成熟が少し遅かったのは、良かったと言えるのだろうか。]
[自分の子を、腕に抱くことができたなら。
諦めることのできなかった願い。
その子を、本当の両親に見せてあげられたなら。
どんなに、二人は喜んでくれるだろうか。
わが子というのは、どんなに可愛いものだろうか。
くすぶる想いは、胸の中で成長し続けていたが。]
…… それだけ、です。
[王女なのだと、日々自分に言い聞かせて。
宰相になるのだと、頭の隅に追いやっていた願いは、
どうしても捨てることができずにいた。
こうして、もう言わぬと誓いながら、逃げられぬ、逃げぬと思いながら、なのに忘れ去ることが出来ずにいる自分は、なんて未練がましいのだろう。
自嘲の笑みを浮かべながらも]
…… あなたがいてくれて、本当に、よかった。
[謝罪の言葉を、飲み込んで。
これで謝っていたら、何度謝罪したって足りやしない。
ただ、礼の言葉に変え。
少し眉を下げた、笑みを浮かべた。]
――着替えの間――
はい。
[始めは、名を呼ばれて、それに対する返事。]
―― はい。
[二度目は、心の暗がりを肯定する、重い、重い返事。
"王女"の父と母は国王と女王でしかなく。
栄えたこの国の"国民"の、ひとりとひとりではない。
"王女"の見るべきが"国民"だとしても、その愛を注がれるのは特定の誰かであってはならない。
ミッシェルの静かな深い声に、もう何年も、何年も昔の、縋り泣く姿が重なった。
この、まだ本当は二十に満たぬ子の、何度数えてもただの四つしか歳の離れない子の小さな儚い背を、その度に宥めすかすしか出来なかった、力ない自分を思い出す。]
はい。はい。
[三度目は、ひとりごと、を受け入れた。
四度目は、忘れてください、を聞き入れた。
だから、あとは何も言わなかった。
言う必要はなかった。ひとりごとは、聞こえてなどいないのだ。
このただの十九歳の少女の、か細い呟きは耳には届かないのだ。]
――勿体無いお言葉です、私の、私だけのミッシェル様。
[瞳を伏せたまま、笑う。
愛おしいと抱き寄せることはしない。そんな事は、出来ない。
こんな汚れた身体では、彼女を汚してしまうから。]
[シメオンの出自は、知っている。
初めてあったとき、彼はどこまで使用人としての教育を受けていたか。
たとえ所作ができていても、噂話は耳に入ってくるもので。
己も、今は王女ではあるが、元は一般庶民だ。
木に登ったこともあるようなおてんばで、しとやかさとは縁がなかった少女からすれば、生粋の完璧な世話役がつくよりも、随分と気楽でありがたくさえあった。
だから、彼が自分を、汚れたなどと卑下しているなんて、知らなかった。
過ぎると言われるやもしれぬほど頼りにしていた彼の賛辞は、いつも、胸の奥を暖めてくれて。]
あなたがいなければ、今の私はありませんでした。
これからも、よろしく頼みます、ね。
[信頼と親愛を込めて。
彼のいない城での生活など、考えられない。
姉や母を、あまり待たせる訳にもいかない。
最後の弱音を流してしまえば、行きましょうか、と促した。]
[あの儚い少女の呟きは聞こえていなかったから、今から起きることはみんな自分のただのエゴだ。
盗人の最後の悪あがきだ。
静かに伏せた目の向こう、扉の奥を思う。
この国はどうかしている。
男を王女と着飾るのもそうだが、ただの庶民の子に責を押し付け、体裁を取り繕おうとしている。
きっと本当の王女が存命であったなら、いや、自分が王女つきの世話係などにならなければ、自分もまだ己の身が可愛いままでいられたのだろう。
だけれど、知ってしまった。
知らなくていいことを、きっと知ってしまった。
涙を、痛い想いを、本心を。]
[これから起こることはエゴだ。
何が起きても彼女の味方でありたいという、世話係としてのエゴイズムだ。
姫を救い出す騎士になんてなれなくていい。
これが自分の人生のピリオドでいい。
きっともうすぐだ。]
[あの女の肉を食べたら、何種類の薬の味がするだろう。]
[動揺しなかった理由の一つは、世話役の存在もあった。
今でこそ普通にして礼を言えるが、いつからだったろうか、
ずっとストレートに褒めてくれる彼の言葉に赤面したのは、一度や二度ではない。]
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