311 【RP】妖怪温泉『百夜の湯』
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[誰に語り継がれることもない
とある梅の木における譚でございます。]
[一昔を百ほど重ねて更に古く、
神泉のほとりで唯一つ芽吹いた梅がありました。
泉の精気を取り込みながら育つ梅の木は
ある年、初めて花を咲かせました。
まだ小さな梅の木です。
つけられる蕾の数も知れたもので、
それでもようやく咲かせられた花でした。
けれど泉を訪れるものはなく。
このまま何に見られることもなく散るのだろうと
梅の木は諦めていたのです。]
[一輪、一輪と散り落ちて
とうとう最後の花を残すだけになった時、
泉を訪れるものがありました。
陽が西の空端に沈み切る頃、
どこからか飛んできた繡眼児が一羽、
梅の細い枝にとまったのです。
どこから来たのだろうか。
たった一羽でいるのだろうか。
意思を伝える口も術も持たない梅の木は、
幹に寄り添って夜風をしのぐ繡眼児に
何も尋ねる事ができません。
羽を震わせて寒さを耐える繡眼児を
一晩留めてやる事しかできませんでした。]
[朝も明け切らぬ内に、
繡眼児は羽根をはばたかせます。
枝から枝へと跳んだ先には
最後の一輪がひっそりと咲いていました。
どこへ飛んでいくのだろうか。
何かあてはあるのだろうか。
その糧に、僅かながらでもなるのなら。
梅の木はまだ動かせぬ枝を力み
繡眼児に蜜を飲んでいくよう訴えました。]
チチチ。チチ
[繡眼児は花弁の端をつついただけで、
蜜を飲みはしませんでした。]
[一晩の宿を感謝するように
くるりくるりと三回円を描いて飛んだ繡眼児は
すぐに何処かへ消えてしまいました。
一輪の花を枝に残したまま、
梅の木は何も見えなくなった空を
ずっと、見ていました。]
[風で揺らがぬ立派な枝を伸ばそう。
夜露を防ぐ洞を作れる立派な幹を育てよう。
気兼ねする事なく蜜が飲めるほど花を咲かせよう。
出立をただ見送るのではなく、
囀りに応えられるような「かたち」を作ろう。
ほとりに唯一萌え出づる事が適った梅の木の想いを、
神泉は長い時間と共に叶えました。]
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