114 bloody's evil Kingdom
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嗚呼、退屈だ。
死ぬ程退屈だ。
『なら死んでみる?』
冗談。俺はまだまだ遊び足りないんだぜ。
『はいはい、お子様お子様』
餌抜くぞ、クソ鳥。
『その辺の人間の目玉突いていいの?』
――チッ
[その眼の色は真紅《クリムゾンレッド》
かつて王女の密命を受けて旅に出ていた彼女。
人に混ざってこの国に溶け込んでいたのだった――]
…そもそも……。
[思う事は一つ。]
そんな戦が始まる前にこの国は終わることをよくわかっていないらしい。
[呟く言葉は小さく、ただ小さく…。]
愛しのロゼの手に、体に触れた男が目の前にいるというのにな…。
[眼帯の奥、触手が苛立ちを覚えて蠢いた。]
[フィリップ・レックリングハウゼン。
その名は騎士位を得る時に授かったもの。
狩人を生業とする父親と何の変哲もない母親の間に生まれ、当時はまだ幼い乳飲み子だった。
住んでいた場所がセウ国の国境付近であったことが災いしたのだろう。
セウ国から流れ出たモンスターの手……いや、触手だろうか。
いずれにしても母親は凌辱の限りを尽くされ、父親もまた生気を吸いつくされた。遺されたのは鳥と言葉を交わし、意のままに操る術を持ったフィリップだった。
両親を犯したモンスターの名前はバルバロッサ……フィリップの肩に乗るベルベットだった。
ベルベットに理を教えられ育てられたフィリップにとって、モンスターは敵ではなく家族のようなものだった]
あ、そーだ。
『どうせ碌でもないことを思いついたんだろ』
そうでもないさ。
城内のトイレを全部壊したら面白くないかな。
[阿鼻叫喚間違いなし]
『誰が壊すんだい』
ベルベットが
『糞便臭くなるからヤ!』
えー……確か構造が……。
孕ませる?
『そうしよう』
お前、好きそうだもんな。
アイリスだっけ、あの子も好きそう。
雌なのに女好きって珍しい――。
『胸が大きいと母乳がいっぱいでるのさ』
ああ、そう言う基準なのね。
そーするとソフィアは?
『お前はぺったんの方が好みなのか?
あたしゃ悲しいよ、ヨヨヨ』
……クソ鳥め。
「国境で」
「眼帯の男が」
「暴れているよ」
「チガウヨ」
「チガウヨ」
「女がアヘったんだ」
「なんだ、いつものことか」
「いつものことだよ」
「構わないよ、餌をくれれば」
「撫でてくれれば」
[いつもの伝言ゲームに苦笑する。
間に2,3羽挟めばもう役に立たない情報になる]
お前ら、そろそろ言葉忘れてんじゃない?
「ウルサイよ」
「おじちゃん撫でて」
「ちがうよ」
「ちがうよ」
「おじいちゃんだよ」
俺はまだ24だっての……。
「旦那からデンゴン、デンゴン」
「旦那じゃないよ、鬼嫁だよ」
「おい、バカ、死ぬぞ」
で、なんだって?
「任務とか法螺ふくな! あたしもアイリスたんとちゅっちゅしたい」
「だって」 「だって」
はぁ、良いから仕事してくれって伝えてくれよ。
「ヤだよ」
「ごはんちょーだい?」
「梟怖い」
こちら“ムーンチャイルド”聴こえるかしら?
[魔術を媒介にして簡単なテレパシーを送る。]
ちょっとね……確認なんだけど。
貴方達、記憶を弄るような魔術は使えないわよね?
[尤も、使えたとしてもわざわざ記憶を消すようにも見えなかった。
それは姫君だって同じ事だろうと。]
多分だけどね、あたし達の遊び場でおいたをしてる子が居るわ。
伝えるだけ伝えておくわね、あんまり愉快じゃない事だし。
魔術じゃないが…。
[一言だけ前置きをする。]
記憶を弄る術はもっている。
まあ悪戯しているのがいるのは知っている。
今日、国境付近で下級モンスターが暴れた跡もあったしな。
[自身の情報を出しながらも、もう一つ、思い出したように]
ロゼ……王女様自身も遊び始めているから、そっちじゃないのか?
記憶を消せだのの命令は受けちゃいないが。
ああ、そっか。
魔術じゃなくても、出来るわね。
それは失礼。
[姫君と言われると少しだけ思案してから。]
記憶を弄る遊び方はしないんじゃないかしら。
ま、あたしも一年ぐらい離れてたから趣向変わったかもしれないけれど。
[下級モンスターが暴れてたと聞くと苦笑して見せた。]
あたしのところまで来なければ良いけれどねえ。
あれでも源流辿れば一緒だし、あんまり殺したくないじゃない。
生憎魔術師じゃないからな。
俺は根っからの戦士体質のせいか、魔術の類は素寒貧だ。
[それに変わる術は持っているので、食事に事を欠いた事は10年前まではなかったのだから。]
王女様がどんな風に変わっているかなんて、俺なんざもっと分からん。
下級モンスターは頭が足りんのだから、やりたいようにやらせればいい。
この10年間、何匹も殺したから俺にはその感覚は分からん。
おや……声が聞こえる。
[されど人の身である自分に答える術はなく――]
ムーンチャイルド……宮廷魔術師様と……団長かな。
[紙片に短く言葉を綴り、「ヒュー――」音なき口笛で小鳥を呼び寄せると細い足に結びつけた]
ほら、いっといで。
[数分後、二人の元に小鳥が辿り着くことだろう]
『俺はそんな魔術は使えませんよ』
[書かれていたのは、ただそれだけ――]
そう、意外ねえ。
[普段の騎士団長の顔とは違う事は分かっていたけれど。
それでも、下級モンスターも見習い騎士のように大切に扱うかと思っていたが案外とそうでも無かったようだった。
やがて、小鳥から手紙を貰えば。
コリーンに魔術を使ったのは姫君かそれとも他の誰かとまでは特定できたのだった。]
意外?
[アホかと言わんばかりに溜息を漏らして]
自分を慕ってくれるなら、人間兵だって可愛がりはするさ。
下級モンスターは俺を舐めてかかってきたから殺した。
信頼を得る為にも必要なことだしな。
元々、清廉潔白な騎士様なんてのは、俺らしくないんだよ。
[役に立たない、特に以前の騎士団長の方を慕うような騎士には、既に種を埋めてあるところだが。]
ああ、そう言う事ね。
大変ねえ、上に立つような立場だと。
[基本的に一匹狼の自分にその辺の機微は分からない。
殺したくないと言った同じ口で、自分や自分の可愛がってる相手に下級モンスターが手を出せば魔術を詠唱して殺すのだから。]
そういう命令だったからな。
これが終わったら、しばらくのんびりと家畜を飼って、静かに暮らしたい。
[ここでいう家畜は当然ながら人間の事だが。]
…とりあえず、いい加減食事にありつきたいな。
昨日から淫靡な気配があちこちに漂いすぎて、俺の鼻を刺激する…。
[そう言いながらも、表情は変わらず。
騎士団長として場内の警備を見回って…。]
そこに、誰か、いるの、か。
[妻を捜す男は、視線を感じればそこに顔を向けた。]
あれ、殺しちゃっても良いのかな。
『さぁねぇ』
どうしようねー。
[この距離なら必中させる自信があり、こちらに注意を払っていない……内側を警戒している彼らに避ける術はないだろう]
[その視線はロゼに向けるそれ、そのまま。
斬られた刃に塗った麻薬が、彼女をロゼと認識させるように魅せていた。]
ロゼ……。
[小さく呟く言葉は、彼女には聞こえないだろう。
傷口の再生は難しくない。
もう……食事を堪える必要はないのだから…。
清廉潔白な騎士様は、いくら堕ちても構わないのだ。
堕ちきる頃には、この国は既にモンスターが蹂躙する楽園となるのだから…。]
それに……これであの娘の言葉は騎士の言葉ではなく…ただの村娘の言葉に堕ちた。
騎士の誇りを失えば、別の誰かに優しくされるだけで、薬の効果も相成って、容易に堕ちるだろうさ。
[空腹はあれども、昨夜のロゼとの交わりである程度は満たされた。
彼女のために、自分の欲求は後回しするだけなのだから…。]
何か言っているのかしら。
せっかくのお城の生活で晴れ晴れとした気分なのに。
気持ち悪いわ。
[顔を向けられたとしても、直ぐに顔を背けた。]
―道中にて―
なぁ、あの辺なぶよぶよしたのって殺したらダメなんだろうな。
『ダメなんじゃない?』
こっちに向かってるんだけど、ダメかな。
『ダメでしょう?』
じゃあ、逃げようか。
『正面突破すれば?』
俺掴んで飛んでくれれば良いのに。
『面倒くさい』
なんだよー、どうせジョークにしか取られないって
『あいつにはジョークかもしれないけど、
あたしにとっちゃホントなんだよ!』
それはそうだ。ってか乙女って。
『心はいつでも乙女なのさ。文句あるかい?』
いいえ、ありませんよ。
[くすり、くすり]
さてと………
[真っ黒な笑みを浮かべれば、周囲に自らの肉片だった触手をばら撒いて……。]
起きろ…下級モンスターども…。
人間のまま、死んだまま、それで満足する人生を遅れた奴なんて、そう多くないだろう?
[肉片は腐肉や遺体と重なって、結ばれて、連なって…。
ぐちょり…ぐちゃり……べた…べた……
壮観な風景に、緩い笑みを浮かべる。]
さて…と…暴れていいぞ。
オークども。
[あっさり笑って見せれば、静かに指示を出して…。]
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