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[――そういえば、幽霊はこの世に未練があって、成仏できないとかいう。
やっぱり、そういうことなんだろうか。]
レイ姉は、なにかやり残し、あるの。
[聞いてみるけど、それは確信に近かった。
レイ姉には、夏休み中にどうしてもやらなきゃいけないことがあったんじゃないかって。]
[そして、勇気を出して、自分からそれを壊しに行こうとしてるんじゃないかって。]
【人】 双生児 オスカー俺は、ないなぁ、やり残し。 (125) 2019/09/09(Mon) 21時頃 |
[すでにどこへ行ったかもわからなくなった、あの溶けるほど焼け続けていた人が残り、あたしが幽霊をやめていたら、そうだったのかもしれない。彼女がいた時のIFはなんて、それこそあたしの理解の外だ。
だから「じゃあ、二度と2日は来ないの?」ときかれて
あたしは首をかしげていた。]
?
[あたしにとっては『ループ』はおまけ、或いは手段だった。
同じ日を繰り返せばいつか目的は達成できる。
邪魔なものことを排除して進めている。
そして、あたしには自信など元からないだけでなく、『叶うまで続ける』ことを体現し、続けることだけしかなかったから、それがいつ終わるのか、いつか終わるのか、はたまた終わらないのか、知ったことではなかったのである。
この街がずっとループし続けることと、宍井澪の願いが叶うことは、共存する。
8月に死んだ宍井澪が願いを叶えて、それを叶えることに用いられた街がそのままだったとして、別段、あたしはそれを問題視しなかった。]
[かわりに、
なにかやり遺したことがあるのかと聞かれた時に、
あたしは、随分優しい顔をして頷いていたことだろう。]
[あたしが誰かを溺死させるたび、あるいは毎日誰か一人、願い川のループにのまれていくたび、このループは強固になっていっている。
そのほうがあたしの目的は達成しやすい。
あたしにとっては、ただそれだけのことだったけれど。
みんなの書いた紙を願い川がたべて、聞き入れてくれるかどうかは、また0時を待つことにしよう。]
【人】 CC レイ[今日の予定がきまった。 (129) 2019/09/09(Mon) 21時半頃 |
【人】 CC レイ (130) 2019/09/09(Mon) 21時半頃 |
【人】 CC レイ[これで明日がこないなら? (131) 2019/09/09(Mon) 21時半頃 |
【人】 CC レイ (132) 2019/09/09(Mon) 21時半頃 |
[ああ、9月1日の宍井澪はまだ気づいていないらしい。
こんな、たったこれっぽっちのことで、
この街は今日もループしていたことに。]
【人】 CC レイ[9月1日のあたしはそれも気づかずに、じゃあなんていえば来てくれるかなを、必死になって考えている。 (133) 2019/09/09(Mon) 22時頃 |
[だから、8月のあたしはこれでおしまい。
黒い靄のようなあたしは、ただ、スマホを眺めていて。
達成した途端、薄くなっていった。]
【人】 CC レイ― 公園 ― (134) 2019/09/09(Mon) 22時半頃 |
[じゃあ、きっとこれでおしまいになるんだ。]
[恋をしている顔、なんてロマンチックなもの、まだ本格的には知らないけれど。
ふんわりと心の底から湧き上がるようにやわらかく笑ったレイ姉の笑顔は、きっとそういうやつなんだと思う。
2日が来るか来ないかは、レイ姉にはわからない、って感じだったけど、レイ姉の"未練"が果たされたなら、来るような気がしている。
というより、来てほしいのかもしれない。
だって、心残りすら果たされて、何も未練がなくなったのに、ずっとずっと囚われてばかりだなんて、そんなの悲しすぎるじゃないか、と思うのだ。]
俺も、覚悟決めなきゃなんだなぁ。
[願い川には、持ってきた紙を流そうと思った。
入院するのが怖いから明日が来てほしくないなんて子供じみたわがままで、幼馴染の恋が叶って満たされるのを願わないほど、野暮じゃないんだ。]
【人】 綿津見教会 マナ[目の前の網の上には肉、野菜、魚介が並べられ、煙がもくもくと上がっている。 (137) 2019/09/09(Mon) 23時頃 |
[いまは、8月のあたしも、9月1日のあたしも、次の9月1日の繰り返しのことを考えない。
あたしという人生が形成したあたしは、胸の奥がきゅっと痛むのを我慢してメッセージを打っている。
どんな顔をしてスマホに顔を向けていたかもわからない。
いつもそうだ。秋山先輩と話す時、あたしはいつも自分がどんな顔をしているかわからず――けれど、9月1日のあたしは、そんなことでどろどろの水たまりや、川を泳ぐ死、あるいはすえた汚泥に姿を変えてしまったりはしなかった。
メッセージを送り終えたあたしは、中学三年生……あと少しで高校生の颯成が、荷物持ちを手伝う姿を少し頼もしく思っている。少しの大人っぽくなってきた気配。未来のことをしらず、来年は、また背がのびるのかもしれないと思っている。]
[そうしているうちに、お誘いは終わったみたいだった。
一発OK、って雰囲気じゃなかったのは、わーきゃー相談しあっていた様子から察してはいた。
だけど、結果がNGで終わらなかったのは、どこか穏やかな調子でいた"こっちの"レイ姉が、ゆっくりと薄くなっていくので勘付いた。]
…………待って!
[思わず呼び止めたけど、届いたろうか。]
[消えかけの8月のあたしは、『宍井澪が幼馴染に待ってと呼び止められた時、きちんとそちらを振り向く女の子』だったから、そういう反応を行っていた。
だって、未練が終わってしまうのだから。
残された時間は僅か。
それでも、たしかに颯成の顔を見ていた。]
[呼び止めて、どうするつもりなんてことはない。
ただ、逝ってしまうというのが見せつけられた気がして、急に不安になったんだと思う。]
……本当に、死んじゃってたんだね。
[未練がなくなって、薄れていく気配を見て、今更の確信を呟く。
なんだか、全然わからない。
泣くべきなのかもしれない。昔から一緒で、よく遊んでて、このループの中でも、ずっと一緒にいたんだ。
いなくなるなんて、考えられない。
けど、目の前のレイ姉は笑っていて、好きな人とのBBQを楽しんでいて、幸せそうにしながら、水もくれて、こっちを気遣ってくれて。
あまりにも、あまりにも生きているようだから、泣けない。]
【人】 CC レイ― 公園 ― (138) 2019/09/09(Mon) 23時半頃 |
……あのさ。
お、俺さぁ。
[だけど、いざ笑って言おうとしたことを言葉に乗せようとすると、声が震えた。
ぐぅっと熱いものが鼻から目から溢れてしまいそうにせり上がってきて、痛いくらいに唇を噛む。
それから、涙が滲んだのをぎゅっと目を閉じて、耐えて、笑った。]
レイ姉がそっちにいるんなら、もし死ぬとしても、怖くないや。
[そうして、笑って、嘘をついた。
眉毛がハの字に下がった、まるで情けない笑顔だったけど。
レイ姉が最後笑っていたから、笑っていたような感じがしたから、笑った。]
【人】 綿津見教会 マナ― 公園 ― (139) 2019/09/09(Mon) 23時半頃 |
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