25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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思う…ね。
確かに、死んだ主は余程大切だったらしい。
我々の事を獣と呼びそのために死ぬことは厭わないようだったな。
[刷衛のけんについては、幾らか相槌を返し]
…それならばあの研ぎ師、喰ってもいいかも知れん。
本当に独りになった時に後悔させてやればよい。
…ああ、ひょっとしてお前、注視されるのが苦手なのか?
[視線が痛い。その言葉に推論を一つ立てて尋ねた。
自分は逆に視線をそらすことはほとんどしないのだけど]
…あの猫は塞ぐほどに歎いてくれるのではないか。
お前を詰られたあの反応を見ればそれぐらいは推測に容易い。
[そういえば引っ掻かれた傷があったなどと今更思い出す。
随分と控えめな事を言う花の声に男が帰すはそっけない言葉]
人として死ねば、歎くものはあるだろうよ。
狼として死ねば、喜ばれるやも知れん。
死んで歎く者などいないと思っていたほうが気は楽だ。
歎かれて、初めて、幸せだったと思えばいい。
私は、そう思っている。
自分が死ねば、喜ぶ人間は多かろうと。
……嗚呼。
よほど嫌われている様子
病あれど、人と同じく
情もあると謂うに
[花開き
色を付け
情を知る
刷衛の事となると、眉を寄せ]
その研ぎ師の、足音がする。
注視は好かん
もとより、この身も
見透かされるのが、おそろしいと。
寂しい
……この身が咲く前に
冬の名残が
未だ、強く根づいているのか
人を嫌う癖に
人に歎いて欲しいと思うのは。
[遠く視線映せば
冬の望む遠い峰と
表の情を望んだ坊主の姿
幾人か思い浮かぶのに
随分、欲を張ったと自嘲混ぜた]
あれの亡き主は、喰われたらしい。
酷く慕っていたのであれば、それは酷く憎かろうよ。
…お前にとっては、病なのだな。これは。
[それはぼんやりとした感想だった。
狼憑きを病と呼ぶ。
それは世の中でも同じことだが]
…あまり目立たないようにすることだな。
"ロビン"が振舞っていたように行動することも大事だろう。
目を欺くと言う意味では、だが。
見透かされると思うから怖いのだよ。
己の目は相手を黙する武器の一つ。
目は口ほどに物を語ると言うだろう。
上手く使えば有効に事が運ぶ。
人は、嘘をつくほど視線が泳ぐからな。
懼れは獣を弱くする。
自分の行動に迷いが出れば、それは隙になる。
…命獲りになるぞ。
[小さく息を吐いた]
嗚呼、其れは憎かろう。
何を今更
私の存在そのものが、ロビンにとっては病魔
[小さく哂う]
ロビンなら
先ず、花主を持たぬ
人に近づきもせず
目は口ほどにものを言うが
己の内を知られるのも、おそろしいと
あれは口先で総てを拒絶していた
……難しい。
あれと話していると、我々をどれほど憎いと
思っているかが良く解る。
なかなか興味深い。
…病魔、ね。
[やはりそれは病であるらしい。
生まれてこのかた狼であることが
当然の生き方であった自分には、解らない感覚だった]
随分気難しい花だったのだな、お前は。
…それでは急に変れば怪しまれて当然というもの。
…。
理解しているなら、管理するんだな。
お前が斃れたとしても私は手は出さんぞ。
霞はどうかは知らんが…あれも己の欲に忠実。
お前を助ける気になるかどうか。
[自戒しろ、とばかりに告げて念をおした]
……本当に。
ロビンをそうさせたのは、私の才
技術だけの蕾が
時折混じる病で色を為し
噂が噂を呼んで
押し潰されてしまったから。
変わった理由は作ったが
主が出来たと謂うだけでは、納得できぬ者も多いだろう
己の始末は己でつける。
……構うことは無い
私とて
簡単に逝く心算も無い
…成程。
[押しつぶされる。
その間隔は己にはわからねど、言わんとする事は理解できた。
重圧、重責、過度の期待。
それらに押しつぶされて]
納得できぬ者がいるなら、納得させてみればいいだろう。
その、技術とやらで。自信は、ないわけではあるまい?
懐刀 朧は、記者 イアンと本郷は話をしただろうか。
2010/08/06(Fri) 22時頃
さてに、
ロビンはお前が俺のこと、ちゃんと教えてくれれば、と云ってるぞ?
そして、どうも、ロビンとセシルは、一線超えたようだな。
[少し、深刻になる。]
ロビンがそうでなければよいがな。
人狼病の者の出生が
薄ら暗いものになること、
彼らは知っているのかねぇ。
[そう、それは病気なのだ。
それにかかり、生命を得たとして、それが無事に産み落とされる確率はそう高くない。
もし、誕生したとしても、それがまともであるかどうかはわからない。
そして、もし、まともであったとしても…。]
ああ、ロビンは随分
刷衛殿のことを疑っておりました、から
[そのことでしょうね、と刷衛の言葉に頷いて]
……そうですか……二人とも、只の人ならいいのですが
どちらかが獣で…孕ませる性の場合、
厄介ごとが増えますね
[聞こえた言葉に、こくり、と頷く]
……けれど、あの病は…いえ、それ故か
繁殖を欲する病
例え知っていても、種の本能に従い
孕み、孕ませようとする…
[それが、満月の晩に発症し、人殺しと化すとする。
そうしないためには、
その人物を存在しないことにするか、
それとも、存在しても害のない者にするか。]
――……
………どうか、されましたか……?
[普段はいらないことまで話す刷衛の沈黙に
通信機越し、緩く首をかしげた]
ああ、そうだな。
[男は頷いて、そして、考える。
なぜ、男が管理センターにいるのか。
答えはそう難しくない。
なぜなら、男は、そういう出生を持って生まれ、
そうならぬよう、虚勢(管理)されたものだからだ。]
うんにゃ。なんでもないさ。
[それでも、全くそういう欲がないわけではないが、
それは従来のものをかなり希釈して衝動だろう。
ゆえに、悩むこともあったが、
男は幸せなことに、己の天職を見つけ、今に至る。]
……なら、いいのですが……
[宴直前の連絡まで相棒の名さえ知らなかった青年は
当然相棒の出生と管理処理までは知らされていない。
……復讐と獣への嫌悪から事前に相棒を知って、
何らかの切欠でそれらを知ること内容にと言う
センター側の配慮だったのかどうか……
何も知らない青年はただ、言われた言葉に
不思議そうにしながらもそう返した]
いや、俺の顔はあらためて、酷いよなぁって話だ。
[今回の相棒が徹底して人狼病を憎み、それゆえの教鞭な姿勢をすること、やはり知ってはいなかった。
チャールズのことは知ってはいたが、その花までは。
なぜ、この組み合わせをセンターが選んだかは知らぬ。
されど、男もわかっている。
虚勢、不妊という処置をとれるのは、本当に幼少時のみ。覚醒し、その行いをしてしまった者は、病気といえども罪だ。
その罰はたいていの場合、処刑となる。]
…先日も思ったのですが
随分顔、気にされますよね……
[突然顔の話しになって、ああ、誤魔化されたなと
感じながらも、言いたくないのならしょうがないと
顔を気にすることと、誤魔化されたこと
二つに溜息一つ]
……そちらの様子はどうでしょうか?
人手が必要なら向かいます
ああ、顔か。
[とそのとき、すんごく深いため息をつかれた。
つかれたんで、ふと、考える。]
知ってるか?
管理センターのスタッフで、
たまにひでぇ顔の奴がいる。
いや、顔だけじゃなく、体格が異様に太っていたり、痩せていたり。
異常な鮫肌だったり、骨格が異様に太かったり。
だからといってそれが病気なわけではない。
ああ、あれだ。センター副長のギリアン
あいつも片目がないしな。
[そんなヒント。
そう、虚勢、不妊処理をさせたものはバランスが一時崩れる。
結果、決して美形とはいえない容姿や身体つき、衰弱した部分が出るものもいる。]
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[刷衛がセンターからの人間だということは知らない。 主が居なくなった後の、二つの花の先も。
一度霞へと触れようと伸ばし、降ろされた手。 月を見上げた。黒檀から落ちる雫は何色か。 朧の中の月の下で落ちる雫の色は透明ではなく、]
(752) 2010/08/06(Fri) 22時半頃
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―――…私も…ずっと、夢見ていた…
[あの日、離されてから…幾度月の姿に名を呼んだか。 記憶の月は全てが美しいものではなく、]
…お前になら…、
夢叶うのならお前に…―――――…たい…と。
[ザァ、と木々が風に揺らされた。 届かなかったであろう言葉は霞の姿に強く願うことであり、 似た想いは選んだ二つの花にも抱く…もう一つの理由。]
(755) 2010/08/06(Fri) 22時半頃
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[二つが分かたれてから。
手を離された奥座敷で名を呼びながら 白の残滓に月の色を穢したことも幾度となくあった。
艶を見せる同じ顔に抱くは、恋慕とも異なる情欲。 月夜に照らされた儚き月の姿に触れようとするには… あまりに、この手は穢らわしい…月を、穢している。]
(757) 2010/08/06(Fri) 22時半頃
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[それでも月の夜には夢ではなく現に焦がれ… だから、また黒檀から濡れるものが落ちるのだろう。]
(759) 2010/08/06(Fri) 23時頃
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