289 【ペア】風邪引いたあの子ん家に行く村
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[自身は口癖のように、幼馴染に浴びせていた二文字。
それが、今は彼の口から音になった。
その音に含まれた感情と、
自身にしか向ける事はないだろう独占欲を覚えれば
言い返す気になどなれない程、愛おしくて。
彼の身体を這う手付きは、いっそうもどかしく、優しいものに。
しばらくの間そうしていれば、
痺れを切らした幼馴染の手が自身のそれと重なって、
導かれるのは、確かに主張を示す熱の中心。]
…………稜、俺でこんなにしてくれたんだ。
[予想外の大胆な彼の行動に、驚いたのは一瞬。
耳まで赤くなっている顔をじっと見つめ
浮かべる表情は、純粋な嬉しさと、抑え切れない欲が
混ざり合ったような熱っぽさを残すもの。]
[どう責めてやろうか、と熱を持った脳が思考したその時だ。]
[幼馴染の熱を残したまま、唐突に手は離れ、
くしゃみの衝動で、虚空を彷徨った。]
あ゛ーー……… 格好つかねえ
[この風邪のおかげで、現在の行為に至れた事もあり
その悪態は控えめではあるが。
幼馴染の身体を越え、ベッド脇にあるティッシュを一枚、二枚。
鼻を鳴らす音と共に、その中に鼻水を吹き捨てると
早く続きを、と言わんばかりに投げ捨てた。]
[驚いたことにベッドから落ちてなお眠っている宇原は、なにをまくらにしているとも知らず、眠り続けている。
平熱よりも二度ほど高い体温は、ぬくぬくと毛布を温めていた。**]
……ほら、脱がせてやるから。
[恥ずかしかったであろう行為を乗り越えた幼馴染に
もう“意地悪”なことはしない。
向き直った身体は、彼の腰を掴んで軽々と引き寄せ
纏う下の、ジーンズを躊躇いなく脱がせて、
ティッシュと同じようにベッドの外へ投げ捨てる。
ついでとばかりに下着も同じように捨ててしまえば
彼の熱を隠すものは何もない。]
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