204 Rosey Snow-蟹薔薇村
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考えてしまうと、欲しくなるから……
――気持ちだけじゃ、ないのかな。
ほかにも、――?
[まだ、未知の感覚。
気になることがイコール衝動につながるわけではないけれど。
どこか落ち着かないものが、ひそやかにある]
ーー……欲しくなる……のかな?
それこそ 考えたことも 無かった
わからないね……知らないから
……欲しくなるのかな
誰かを 衝動だけじゃなくーーー
あるのかな?
[視線に込めたのは苛立ち。
僕には僕の考えがある。
‘保護者’の君なら分かるだろう?
何故、わからない? と、棘含み。]
[ディーンは視線を真っ向から受け止めた。
考え方の差異は人の常だ。
それは作品の受け取る感性の多様さにも似ている。
ディーンの表情は、変わらない。]
[きっと、ディーンにはノックスの懸念が分からないのだろうと、変わらぬ表情を見て思う。
同じ‘保護者’のはずなのに。
同行者に抱く想いの根底は変わらないと、思ったのに。]
[ 鳥は警戒しつつ、
ディーンの様子も窺った。
囁かれた懇願が、気にかかって。
心配そうな、視線を向けた時間は短くない。
よもや、彼の同行者とうまく行っていないなんてことは、ないだろうか]
[鳥に人差し指を噛ませる様子を眺める素振りで、ディーンはベネットの視線から目を逸らす。
何も話す心算の無い、拒否の姿勢は相変わらずだ。
直に聞かれることのない限りは、幾らでも逃げられる。
――それが卑怯なことだと分かっていても。]
いままで、考えないようにしてたから、
わからないね……
衝動だけじゃないのが、あるのかもしれない……
――よく、わからないけど……
[ノックスの連れや他に聞こえないよう、声を潜める。
傍目には昔馴染みの内緒話程度に見えるよう。]
お前の連れは…「まだ」か?
[まだ獣の性に目覚めてはいないのか、と問う。
目覚めていることにも危惧はあるが、目覚めていなければまた別の危惧もある。
どちらにせよ、互いの連れを遠ざけておきたいのが本音であって、それをノックスに指摘されれば隠すことなくあっさりと頷く。]
――血の、におい。
[ざわり、とうごめくものがある。
近づきたいけど、
近づきたくない。
そんな葛藤がにじむ]
(よもや、彼らまで?)
(確かめなければ)
[ 話に集中しているなら、バーナバスとノックスがその視線に気づくかどうかは、わからない。でも]
―ディーンに向けて―
ディーン……あの、
[ 先程は、前のように目を逸らされたが
今度は答えてくれるだろうか――聞く内容は、いまは違うが ]
……君は、此処に居る
“ 同族 ”のこと、どれくらい把握、してる?
ノックスたちは、“ そう ”だと、思うけど
……バーナバスたちの、ことは?
[密やかなベネットの声を聞く者は、ディーンとルーツだけだ。
どうやらルーツが苦手らしい様子のベネットから、右腕を少し遠ざける。]
……君たちと、僕たちを除くなら、
フィリップは、そうかも知れない。
バーナバスたちのことは、分からない。
[ディーンは、フィリップと交わした会話を思い出す。
断言しないのは実際に確認したわけではないからだ。
それよりも、ディーンには気に掛かる節があった。
微かに瞼を伏せ、細く息を吐く。]
ノックスたちも、なら
……ニコラも、そうなのか?
……まだ、だよ。
[少なくともそんな話を彼等から聞いたことはない。
卵を見せた時も、何とも。]
……ねぇ、バーニィ。
僕は、堪らなく 怖い、よ。
[そっと押し出した声は、思いの外弱々しかった。
愛し子達に吐露した不安や本音とは、また別の話。]
変だと思ったらすぐに教えるようにとは言い含めたけど。
……プリシラは?
[まだ、ならば。恐らく願いは同じだろう。]
ーーーーーーけど…………
[言語化の途切れる思考 緩く傾げるような]
[じっと 思考は静かに
時折 ノックスの過保護に 苛立ちが滲む
けれど 取り敢えず
三人で話せる環境につけば
安堵 と 緊張
その思考が それたのは]
[ざわり 衝動と言うには淡い感触
背中を撫でられたような
生肉も遠ざけている 思い出す]
ーー近づいたら……囚われる
―ディーンへの―
フィリップ?
……そう、……かれが、そう言ってたのか?
[ それは、不思議ではない。むしろ
ぱちりと当てはまるような感覚。]
トレイル、たぶん、“ あの ”トレイル、……だから、
[ 謂いにくそうに、フランシスは目を伏せる。
ディーンは知っているはずだ。
歌の不和、高慢な天使の歌声の神童は名高く
ひどく落ち込むフランシスのことは、その影に。]
彼を連れて居るノックスも
ニコラも、“そう ”だと、思う……
ディーン。
ニコラが、
どうか、したのか?
[ 特定の、同行者以外の名前に――フランシスは、区切り、強調して、尋ねた ]
……直接聞いたわけじゃない。
ただ、僕がそう感じただけだ。
[ディーンは、1階でのフィリップの言葉を思い返す。好戦的にすら見えた瞳と、狼の話。
しかし、それは直ぐに頭の端に追いやられた。ベネットの口から聞こえるトレイルの名前に、過去の記憶を探る為だ。
彼と過ごしていた幼少期の頃の記憶をなぞる。ベネットが沈みこんでいた時期の辺りを入念に思い返して――見つけた。
ディーンは天使と称された彼の外見を覚えてはいなかった。結びつくのは名前のみであり、それもベネットの表情を曇らせるものであるなら、口にすることは意図的に避ける。]
……いや。
[普段嘘を口にしない人間の嘘は、白々しい。
疑問を否定する口振りは変わらないまま、しかしディーンの眉間の皺は俄かに深くなった。]
…っ、ディーン、……
[追及しなければならなかったのに。
今のは、きっと、聞き逃してはならないことだったと
フランシスには思えた。
また逃げるように視線を逸らされる。
不安を、掻き立てられる―――]
[聞けば同じ問いが返ってくる。
当然予想されたそれに小さく首を横に振った。]
まだ何も。
あいつは、何も知らない。だから…俺はそれが怖い。
[経験がない故の無垢は、いざという時には瞬く間に望まぬ色に染まってしまうことだってある。
一度汚れを知った者よりもはるかに容易く抗えない波に飲まれることも。]
|
― 三階、個室 ―
[目覚めたら、部屋に一人だった。 予感はしていたけれど、やはり少し、悲しくて 横になったまま、暫く天井を見つめていた]
……疲れた
[幸福な夢を見たと思った。 いや、苦しい夢だったようにも思う。 内容はまったく覚えていないから、 どっちが正解なのかわからない。
ベッドの上、起き上がり伸びをする。 根乱れた髪を撫で付けて、少し泣いた。 頬を擦って、部屋を出ることにした]
(293) 2014/11/16(Sun) 20時半頃
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だって、この『赤い果実』は――…
僕達の秘密に、良く似てるものだから。
[低い声は、フランシスにも届くだろう。]
――……
[赤い雫がたれる。
それに彩られる姿を幻視して、小さく息を呑んだ。
ざわり、揺らぐものを、振り切るように]
血の匂いは危険だ――
[ため息をつくような、そんな思考]
[そう、これは物語では無い。
それよりも生々しく、逃れることの出来ない業を記している。
ノックスには、分かるのだろうか。
ディーンは伺うような視線を彼に向ける。]
――……これは、業だ。
罪だと分かっていて、口にしたくなる。
[少し歪んだ業を持つディーンにも、食欲を抱いたことはある。
しかし、この文章は――まだ、完結してはいない。]
ーーー…………うん
衝動は……湧き上がると一瞬 だった
だからーー気をつけて
[衝動だけで喰らうこと そこに 辿り着かせないように
けれど あれは一瞬で 何ができるのか
ただ 安じるばかり]
そうなんだ……
――――わかった。気をつける。
血の匂いがつよく感じるのって……
やっぱり、月が満ちてるから、かな――
[案じる気持ちに、すこし、暖かいものを感じて。
気を引き締めなおす]
|
― 階段を下りて ―
[扉をあけて、薄暗い廊下を見渡した。 雪の重みか天井のさらに上が鈍くきしんだ。
やがて静かな足音がゆっくりと階段を下りていく。 居間の前は通り過ぎた。 やがて一階に降り立ったところで、足を止める。 外へと続く扉を、じっと見つめた]
(304) 2014/11/16(Sun) 21時頃
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業は棄てられない。背負い続けなくてはいけない。
だから、誘惑を振り払い、口にしない努力をすべきだ。
そして、僕たちはそれが叶っている。
[違うかい?]
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