204 Rosey Snow-蟹薔薇村
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ラルフーーーーー
[思考が恐怖に染まっている
そっと ラルフを撫でる手は
髪をすくように静かに
そうすると ラルフは安らかになって]
そばにいるよ ラルフ
怖いのも 痛いのも こない
怖い人は 誰も来ない
[今は][その単語は心の奥飲み込んで
ラルフがゆっくり眠れるように
そう思い続ける
……名前を呼ばれるだけで
離れ難さを募らせながら]
[そばにいる。
そのことにほっとする。
優しい手が、恐怖をおいやり。
伝わる思いに、じんわりと、
冷えた心があたたまる]
……うん……
[ほう、と安心したように、吐息をこぼし。
優しい手に導かれるまま、また眠りに落ちる]
[火傷の、痛み。
けれど、熱がでているのはそれだけではなく――
食われることへの本能的恐怖からの、自己防衛。
燻る衝動。
少しでも動けるのであれば、誰かれなく、
食らいついてしまいそうな、それを感じている]
大丈夫ーーー?ラルフ
[感じるものに 心配そうに 首を傾げる
自分のものではない衝動
ぞわり 背筋に感じてーーー
懸命に対処しても しきれない何かの予感
ラルフが 苦しむ 悲しむ結果
ならないようにと 思う]
……う、ん――
だ、いじょうぶ……
[返る声は弱い。
喉が渇く。
飢えを感じる。
抑えきれない衝動が、いつ鎖を引きちぎるかわからない]
「血の味を覚えた獣を、お前は抑えられるのか。」
[漂う血臭。
けれど、到底彼がその同行者を咎めたようにも見えないまま。
不審と警戒に眼差しはただ冷たい。]
ーーー大丈夫に 思えない……
[ドナルドの突拍子もない言葉に
彼は 動揺を隠せない
が 感じる気配に 拗ねるような気持ちで
そう と思いを落とす]
ラルフーー苦しいなら
いったほうが楽になれる から
ね?
[感じるものは強く
どうしようという困惑 不安]
…………ん。ごめ……
のどが、かわいて……
くるし、い――
[苦しくて。
差し出されたものが、とてつもなく甘美なものに見えて。
くらりと、目が眩む]
だったら 俺の血でもなんでもあげるからっ!
[もし これをきっかけに
ラルフがより衝動がひどくなったら?
ドナルドも ラルフも不幸になる
その可能性に青ざめつ
せめて 衝動のままに暴れ
ドナルドを殺すことだけは
ないように ぎゅっとしがみつこうと]
だめ……それは
フィリップは、きっと……
のんだら、がまんできなく、なる……
[ドナルドは、途中で我慢できても。
フィリップは――]
最後の、一滴まで……じぶんのに、したくなるから、
だめ……
ーーーー………………??
だったら だったらドナルドだって
我慢出来ない かもしれないだろ………
[嫌だ 大切な人を 衝動に飲まれて
食い殺し 苦しませたりなんてしたくない
自分とドナルドに 違いがある
と 思うこともなく]
していいから なんだってあげるから……
とちゅうで、がまん、する、し……
きっと、ドナルドなら……
食べ過ぎる前に、止めて、くれる……
[そんな、信頼も、ある。
フィリップの、心配が嬉しい。
フィリップと、同じのを背負えるかもしれない。
そんな、思いもあって]
……フィリップ……
ーーーーーー…………っ
[…………食べ過ぎる前に
その言葉には反論出来ない
ラルフが望むなら そのまま
食べられて 死ぬことは厭わない
とっさの反論思いつかず]
ーーーーーラルフ……
[同じ獣でも 幸せになれる 獣
そうであって欲しい
泣きそうになる]
……うん……フィリップ。
俺、呼んでて……そしたら、きっと、
だいじょうぶ……
[ドナルドの血の味にくらりとする。
それでも、フィリップに呼ばれれば、それに熱中しすぎることもなく。
だいじょうぶ、と笑う気配]
ラルフ………………やだ ラルフーーー
[現実で泣き出してしまったのに
呼応するように 心も泣きはじめる
笑ってくれるけれど
せめて ラルフが暴走しないように
ラルフの言う通り 彼の名前を
呼ぶことしか出来なくて]
ーーーーラルフ ラルフっ
[新たな血の香りに 嗅ぎすぎてしまった
と 心の何処かで思う
衝動が 首をもたげそうで]
[獣と呼ぶのは、ニコラのこと。
血の味を覚えた。
それは確かだ。
ノックス以外の世界を―――知った。]
ん、ぅ……フィリップ。
……うん、……
[名前を、呼ばれる。
その声に、背に触れる熱に。
ぞくり、と悦びを感じて]
は、あ……
[熱い、吐息がこぼれる]
ラルフーーーらる……ふっ
[何かを 感じて 途切れ途切れに
なりながらも 何度も名を読んだ
頭に響く 吐息の音
ぱち と電流が走るような]
ら………………るふ ラルフ
[何か違う けれど何が違うか
湧き上がる 衝動に近いもの]
ラルフーーーラルフ だい 丈夫………………?
[それでも ラルフの様子を伺う]
[呼ばれるたびに、ぞくりと震える。
覚えた熱は、衝動に近いけれど、それではなく]
……ん、フィリップ。
だ、いじょうぶ、だから……
[欲情に近い、感覚に。
震える声を返した]
よかったーーーラルフ よかった
[ラルフに 暴走の色は
心からも感じない
そうと知れば 彼は安堵に力を抜く]
………………っ
[びくりと 安堵で緩んだ気
締め付けられていた 何かが跳ねて
耐えるように身をすくめる]
ーーーだか ら?
[ラルフも抱え始めたそれ
思考が塗りつぶされそうになりながらも
だから と言うラルフの
その思考の先 たずねた]
[身のうちで、疼く。
それは、衝動ではなくて。
喜んでくれるフィリップの声にすら、反応する]
……ん、ぅ……
――だから……あんまり、ひっつかれる、と。
なんだか……
[あつい、とぽつり、呟く。
暴走しないように、意識した結果。
欲望にすりかえられたせいかも知れず。
色を含んだ吐息をこぼす]
……さっきの話の続きだけど。
ニコラは、まだ大丈夫…だよ。
落ち着いてる。
見せてくれる笑顔が減ったけど、ね。
こればっかりは仕方ない……
[はぁと溜息。寂しいのは事実。]
ーーー………………
[確かに ラルフの身体は熱い
怪我が響いているのだろうと
けど]
ラルフ……ラルフーーー
ラルフも 何かが あるの……?
俺も……なんか 変なんだ
でもーーこうしてたい よ
[駄目?と もう一度だけ強請る
強請るだけで こちらまで熱くて
けれど 抱きしめて すりと身を寄せる]
――……っぁ……
ん、だめ、じゃない、けど……
俺、なんか……おかしい、から……
[一人で、処理をしたことはあるし。
そういうのも、わかってはいるけれど。
いま、熱をもてあましている感覚に、思考が働かず]
ふぃり、っぷ……
[抱きしめられて、吐息と共に名前を呼ぶ。
嬉しさが、熱と一緒にあふれて。
力が抜けて、フィリップにもたれかかった]
[駄目じゃない と言われれば
嬉しそうに 彼はもたれかかる
ラルフを ぎゅっと抱きしめる]
……衝動 じゃないんだけど
なんだろーーーこれ
……キスして いい?
[と鼻をすりと合わせながら
心で尋ねる
ラルフが気を失う前
知ったラルフの唇の感触
いま いちばんそれを もう一度知りたくて]
[抱きしめられる力強さが嬉しい。
近い距離で尋ねられた言葉に、耳朶が染まって]
……いい、よ。
[心で答えて、小さく頷く。
フィリップが触れてくれる。
そのことに、悦びが生まれて。
とろりと琥珀が蕩ける]
[視界で起こる変化 なにより
恥ずかしげしながら 是を返す心の
ラルフに行動を許されるたびに
身体の衝動に似た何か
より強くなるけれど 苦しくない
美しい琥珀の溶けるに
理性も溶かされていくけれど
危惧するものではない とわかる]
ラルフーーー嬉しい
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