172 ねむたい村
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風邪ひいちゃいますよぉ…
[他人の部屋の中を漁るのは少々気が引けたが押入れやらベッドやらからごそごそと毛布を手に室内を移動する。]
っていうかあらためてひどいわこの部屋。 やばい。
[毛布をひきずるとそれにひっぱられてずるずると床に落ちたメモ用紙やらビールの缶やらがついてまわる。 仕方ないと掛け布団を持ち上げるが今度はバランスを崩して派手にしりもちをつく。]
(25) みう 2014/04/13(Sun) 22時頃
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いたい… なんで私がこんなこと…
[本日二回目の腰の強打に涙目になりながら腰をさする。 べそべそしながらどうにか一人ずつに毛布と布団をかけていくが、その数分後、土井辺は虚無を感じさせる目でゴロウを見下ろしていた。 その手には、何も持たれてはいなかった。
かけるものが足りなくなったのである。]
(26) みう 2014/04/13(Sun) 22時頃
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ねぇ、ちょっと、ごろーさん、おきて。
[もう少し身体を寄せれば示村か不動と同じ毛布に入れそうだと思いなが身体を揺する。
揺する。 揺する。 つねる。
…へんじがない、ただのしかばねのようだ。]
(27) みう 2014/04/13(Sun) 22時半頃
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とりあえず、お見舞いいついくか不動さんと相談しよう…
[それから土井辺が自分の部屋の布団の中に納まるまでには、多少の時間がかかっただろう。 ぶつぶつと独り言を言いながら布団に入ると、明日は特売日だから仕事つらそうだなどと杞憂する暇もなくお布団という天国に瞬殺された。
むさくるしい男4人が残された部屋、ゴロウの肩には土井辺の毛布がかけられている。**]
(28) みう 2014/04/13(Sun) 22時半頃
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[べそをかく土井辺に気付けぬ程、教太郎の意識は眠気の奥にまでいっているようだ。毛布がかけられても礼をすることも身じろぐことすらなく、むしろより深い眠りへと誘われていく]
[眠りが深くなったおかげか、夢を見た気がした。 …言い方が曖昧なのは、眠っているのに気付かなかったせいもあるし、見た夢が過去の記憶で、ただ回想しているだけにも思えたからだ。
寝る間際に虫の恐怖を思いながら眠りについてしまったせいだろうか。 それは、虫が嫌いになった日の記憶だった]
(29) bou 2014/04/14(Mon) 01時頃
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[教太郎には幼馴染が居た。実家の仕事の関係で知り合った、有塚繪里子という、花農家の娘だ。 歳も同じ、学校も一緒で、畑と田んぼ以外に何もない道を二人でよく遊んで帰ったものだった]
[小学生に上がってからの初めての夏。 その時も、その辺に転がっていた木の枝を振り回していつもの通りに二人で帰っていた。 例え、遊ぶものなど何もない帰り道だったとしても、地面に落ちた小石でも葉っぱでも、自分の影すら玩具にして遊ぶのが子供と言うものだ]
[その日、幼馴染が見つけた玩具は蟻の巣だった。
田んぼの横に流れる浅い川の近くで見つけたそれを、幼馴染はひどく面白がった。 捨て犬に餌を上げる感覚だったのだろう。おやつにする為残していた給食の蜜柑を彼女は剥いてアリの巣のすぐ近くに置く。
しかし蟻には少々大きすぎたのか、警戒心だったのか。 その両方だったのだろうが、なかなか蟻は地面に置かれた蜜柑を巣穴へと持っていこうとしない]
(30) bou 2014/04/14(Mon) 01時頃
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[少々気が短く、また子供らしい思考を持ち合わせていた彼女は、 「巣穴が小さくてきっと持っていけないんだ」と言った。 そうして、教太郎の横で手にした木の枝を使って蟻の巣を掘り起こし始めた]
[巣穴を荒らされた蟻は当然パニックを起こしたように大量に湧き出てきた。何を思っていたのか、その傍に居た幼馴染と教太郎の足の上に大量の蟻が登り出す]
[足の上を這う蟻のあまりの数に同じくパニックを起こした教太郎に、幼馴染は「川で洗い流そう」と叫んで言った。
よくよく思い出せば気付いたのだろうが、その時の教太郎に余裕など微塵も無かった。
―――入った川には蛭が居ると、祖父に教えられていたことを忘れていたのだ]
(31) bou 2014/04/14(Mon) 01時頃
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[結果。濡れた足に蛭をくっつけたまま大泣きで帰ってきた教太郎は、示村家全員に散々笑われて出迎えられた。 …同じ目にあった筈の幼馴染の女の子が一切泣いていなかったのも相まって]
[恐怖と散々笑われた恥ずかしさが幼い頭にしっかりと植え付けられ、その日以降、教太郎は虫が苦手になってしまったのだった]
[それを助長させる幾つかのエピソードも、またその幼馴染によって起こされているのだが、幸いにもこの時の教太郎の夢には出てきていない]
[十数年後、現在の教太郎は眉間に薄くしわを寄せながら、机の上でようやく就けた眠りを満喫している**]
(32) bou 2014/04/14(Mon) 01時頃
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[日が昇って、朝日が差す頃には教太郎は目を覚ます事だろう。 いつの間にか毛布が掛けられているのに、首を傾げながら。]
[……ところで、とある虫はビールを好む という雑学をご存じだろうか >>2:54]
[残念ながら今回のケースが通説通りだった上で、その日の教太郎にとことん運が向いていなかったなら。 床に落ちたままのビール缶の傍に、不穏な影が通ったかもしれない]
[そうして、寝起きから騒ぐ羽目になるだろう。 彼の独り立ちはまだまだ遠そうである**]
(33) bou 2014/04/14(Mon) 02時頃
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