204 Rosey Snow-蟹薔薇村
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……大事な人 にしてくれるのは嬉しい
けど 君には 他にもたくさんの
フランシス ドナルド……衝動を 覚える人……
大切な人……が いる
ーーーーー俺は 人を食う獣だ
いつ何時 その人たちを喰らうかわからない
他の人と一緒にいることは出来ないーーー
3人の大事な人と 1人の大事な人
2人分 人間のそばの方が多いい
ーーなら 俺を忘れるのが……一番だよ…………
……そう、だよ。
[ノックスにとって、男は目障りで邪魔な存在でしかない。フランシスのように、悼めない。
さぞ幸せだろう。
望みの通り、ニコラに喰われて死んだのだから。
大切に育ててきた、ニコラに。]
――っ、……
やだ、よ……
[諭される。
ただのわがままだとわかっている。
悲しさがにじむ]
俺だって、いつ、食らってしまうか、なんて
わかんない、のに……
やだ……
[たべてしまったら、一人になる。
それがいやでがまんしてきて。
フィリップを見つけて。
再会してしまったことで衝動を覚えて。
いまは、もう――]
ーー……ラルフの欲張りさん
[ラルフの哀しみに 彼もまた悲しくなる]
[ただーーーー衝動の激しさ
耐え難いはーーーーーよくわかる
人を喰らう 美味と 苦しさ]
ーーーーもし ラルフがーー
耐えられず 食べてしまったらーー
一緒に 人の世界の 外に行こう
[聞き分けのない 優しい 君に
考えた末の 譲歩点]
でも大丈夫 ラルフは耐えられる
フランシスもドナルドも いるから
――よくばり、でいい。
大事なものは、離したくない、から。
[耐えられなかったら、と。
続く言葉に、小さく頷く]
……うん……
そのときは、一緒に、……
[大丈夫といわれて、
その心が嬉しくて、
そこにフィリップがいないことが悲しい]
選ばなきゃ……いけない時も あるんだよ……?
[例えば 彼が フランシスを襲いそうなら
ラルフはどうするだろうか?
せんのないことを考えて打ち消す]
[一緒に 甘美な言葉に感じた
けど それは あの苦しさを知ること
……理性の元に喰らうのとは違う
衝動に負けた時の]
フランシスにも よくよく頼んでおく
――でも、えらべない、よ……
[そんな状況にならないかぎり。
決断なんてできるはずもなく。
どちらも、大事だからこそ――]
子供じゃ、なければよかったのに……
[大人で、衝動を抑えるすべがあったら。
少しは違っただろうか]
ーーーーそっか
[ラルフの返答は幼い子供のそれ
子供は だから 大人に憧れる
大人は 切り捨てること
選ぶことを知っているのに]
……そうだねーーー
[そうしたら 昨日 描いていた
絵空事も 叶えることはできただろう
目の奥が熱くなって
慌てて上を向く]
うん……
どうして、子供なんだろう……
[はやく大人になりたいと。
切実に、思う]
[涙目は ルーツのせいだけど
そう言う表情は…………はっと短く息を吐く]
……大人って どうしたら なれるんだろう……
……わからない、ね……
大人になって、フィリップと会いたかった……
大人になってから 会ったら
どうなってたかな……
[たられば のお話
きっと ラルフも どうしようもないことと
じんわりとした 実感と諦めを 覚えたのだろう
ゆっくりと 少ない時間
心地よい話題で満たす]
わかんない、けれど……
……でも、フィリップが大事だと思うのは、
変わらないと思う……
[あとどれくらい一緒にいられるか。
それを考えないように、ゆっくりと言葉を紡ぐ]
ーーーそっか……嬉しいな
俺も…………そうだと思う
[ゆっくりと 残りわずかな
春の日差しを それが 限られたものと知っているから
じんわりと味わう
凍えそうになった時 思い出せるように]
うん……
そうなら、嬉しいね……
[ほわりと暖かい。
ずっと、この暖かさだけを感じていられたらいいのに]
大人だったら……幼い同族
一緒に連れてるのかな?
[暖かな 些細な話
誰かを引率する姿なんて 想像つかなかったけど]
どうかな……
幼い同族、つれていないかも……
[大人になって、制御をおぼえていても。
きっと、不安はどこかにあるとは思うから。
一人、町で広く浅い付き合いをしながら旅をしているのではないかと、おもう]
ーーー…………
気ままな一人旅ーーー?
[彼は彼で 集落に戻ることもなく
山か 森で 独り暮らす姿しか描けないけれど]
一人旅だね……
俺、きっと幼い子の面倒とか見られないと思うし。
フィリップは、どうかな。
子供、つれてるんだろうか……
……面倒見 いいのに…………
俺は……集落に 戻らない から
それ以前の 問題ーー
……動いているほうが、気楽だし……
もどらないんだ……
俺は、一度はもどるかもしれないけれど……
[戻っても、家族の下には戻れないから。
集落にとどまることはないと思う]
…………母さんが父さんを食べて
集落を出たから……戻っても 異端の子孫
[待つ家族もいなければ
生きるすべがあるから
山や森の方がいい]
じっとしているのは これはこれで
疲れるね
そっか……
俺も、同じようなものかな……
[父は、母が死んでから食べたけれど。
いまは、もう家はないと思う]
……うん。
なにかしら、していたほうが気がまぎれる。
そうなんだ…………集落が……
帰る場所……と言う感じがない
…………そもそも帰る場所って わからないけれど
目の前のことだけに集中したりね
狩りの時 本当そう
帰る場所……
そうだね、今なら、フランシスの傍かな……
自分が、くつろげる場所なら……帰る場所で、いいんじゃないかな。
うん、それはわかる。
狩りは集中しないとできなさそう……
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