43 朱隠し
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[物悲しげな鈴の音。
りん、りん。
頭の中で、何かを思い出せというように響く。
りん。
きっとそれは、大切なことなのに。
――まだ、思い出せない]
人になりたいなんてなあ。
[人間からアヤカシに転じた自分には到底わからない話]
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[どれくらいそうしていたか。 昂ぶった感情は、いまだ鎮まる気配はなく。 顔でも洗えば、少しは落ち着くだろうかと、ふらりとした足取りで歩き出す]
「兄さん、顔色悪いよ。大丈夫かい?」
[仮宿の脇にある井戸で顔を洗っていると、薪割りをしていた男に、そう声をかけられた]
……大事ない。
「なら、いいんだけどさ」
[振り向かぬままで返し、桶に汲まれた水に己の顔を映してみれば、なんと醜いことか]
……此では、鬼の面ではないか。
[嫉妬に狂った人間は、鬼になってしまうと言うが。 水に映る己の顔は、まさにそれ]
(266) 2011/02/15(Tue) 20時頃
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[春松の真剣な眼差しに>>261内心うろたえる。 春松にとっては嬉しい話とはならないから]
春松…私が連れ戻せるのはこの祭りの間に連れ去られた者だけなんだ。
それも、本人が連れていかれるのを望まなかったことが 確認できなければその力を使えない。
正確には…使いたくない…
(267) 2011/02/15(Tue) 20時頃
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成る方法が、あるのならな。 ……無いのだろう?
[一平太の言葉>>265を聞き、貌に浮かぶのは、寂しげな笑み]
だから、俺は。 知られずに、ただ、人として。 この祭を楽しめれば、それで良かったんだ。
[だがそれももう、叶わないのだろうと]
(268) 2011/02/15(Tue) 20時頃
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正しくは――… 人になりたい、わけじゃあないがな。
どちらかに、成りたいんだ。
[独りきりは、嫌だ]
成れないなら。
[独りきりだと感じないように、成りたい]
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そんなんできたん!?柳生さん、すごかってんな……
[まさか自分も、連れ戻された対象だったとは知らず、他人事のように感心して>>162]
[父母を失い、祖父母に引き取られた姉弟三人。どうしても家族と離れるのは嫌だったから、戻る事を願った。その時に、アヤカシの里の記憶は失われた。年を経たアヤカシや、飴を作ってみせたら無邪気に喜んでいたアヤカシの事も、もう、消えた記憶。
『ここは楽しいけど、俺もっと細工の腕あげたいし、姉ちゃん二人もおるの、守ったらなあかんねん。父ちゃんも母ちゃんもおらんから…だから、堪忍なあ』
『忘れてしまうんかなあ……でも、もし忘れてもきっと思い出すで』
帰る際、里を振り返って呟いたそれが、アヤカシたちに伝わったのか。 その事すら、覚えていない]
(269) 2011/02/15(Tue) 20時頃
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[……嫉妬?
一体、何に?]
……馬鹿な、そんなわけがあるか!
[否定するように、執拗に顔を洗う。 だが、思い当たる節はひとつしかなく───**]
(270) 2011/02/15(Tue) 20時頃
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[ 一平太の話>>267を耳にした春松の瞳に、見る見るうちに新たな涙が浮き上がる。]
は、
そ う
で、
すか……
(271) 2011/02/15(Tue) 20時頃
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懐刀 朧は、メモを貼った。
2011/02/15(Tue) 20時頃
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[>>268華月斎の言葉が一平太の心にチクリと刺さった]
…華月斎殿…申し訳なかった。
卑怯な真似とは思いつつどうしても確認したかった。 直に聞いてもはぐらかすでしょうし…
(272) 2011/02/15(Tue) 20時頃
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[ ――寂しい、 と 。
意識 をすれば するほどに
孤独は 深く なっていく]
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華月斎殿がアヤカシだと知ったところで、 私が華月斎殿を疎むことはありません。
ただ、不可解な動きの訳が知りたかった。
それだけです。
本当に、申し訳ない。
[そう言うと華月斎に深々と頭を下げた]
(273) 2011/02/15(Tue) 20時頃
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は……ははははっ! っは、ははは!
[ 乗り出して前に出た掌は地に落ちて、四つん這いのまま、項垂れた春松の口からわらいが出る。]
知らなきゃ良かった。 ……何もかも。
[ 解れた髪が目にかかる。 ゆっくりと立ち上がり、汚れた着物を手で払った。ところどころ破れている、粗末な着物。 繕う糸も、それを買う銭もない。]
(274) 2011/02/15(Tue) 20時頃
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その穴を埋めたいから
人の子を攫うんだ。
何故それがいけないのだ。
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一平太の力では無理なんか……
そんなら、アヤカシさんらの力で、雪柳さん、こっちに戻す事はできひんの…かな?
[華月斎と藤之助。両人を伺うように見て]
なあなあ、春坊、まだちっさいのに、可哀想やん? 兄ちゃんと会わせてあげてえな……
[人に見える藤之助と、友好そうな華月斎の態度に、もしかしたらいけるかも?と思って押してみる。]
(275) 2011/02/15(Tue) 20時半頃
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何に、謝るんだ? 何故、謝るんだ。
知って、どうしたかった。 何故、知りたかったんだ?
[声は、掠れかけていたか。 ぽつりぽつりと、疑問が続く。
深く頭を下げた相手、地を見詰めているだろう場所に。 朱色の蝶が ひらり と一羽、舞う。 顔を上げるように、視線を上げるように、 ひらり と誘い舞い上がる]
(276) 2011/02/15(Tue) 20時半頃
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―― 穴 を 、 埋める ――
[藤乃助の言葉に、赤褐色の眸が、揺れる]
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里への道は一方通行だったと思うけれどな。 俺も生まれつきアヤカシではないから知らん。
[定吉の申し出に>>256、うーむと首を傾げる。 連れて行って、会って、二人で村に戻りたいなんて無理な話しである。
里で二年過ごしている雪柳もとうに人間ではなくなっている、それにあわせて春松は喜べるかどうか]
(277) 2011/02/15(Tue) 20時半頃
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人を惑わす化物め。 たった一人の肉親の、心を、身体を、奪われた哀れな子どもが、どんな思いで日々を生きているか……
こんな事を聞いても、何とも思わぬのでしょうね。
神にとっては、人など虫ケラと同じなのでしょうから。
[ 汚れた顔を袖で拭いながら淡々と言う。 振り返り、藤之助と、華月斎とを交互に見やり、
憔悴しきった顔で、その場を離れようと石段に足を向けた。**]
(278) 2011/02/15(Tue) 20時半頃
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丁稚 春松は、メモを貼った。
2011/02/15(Tue) 20時半頃
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[頭を下げた目の前に蝶が舞う、思わずその視線を追うと 華月斎の顔があった]
ただ人として祭りを楽しみたかった華月斎殿の望みを叶えられなくしたことへの謝罪…
(279) 2011/02/15(Tue) 20時半頃
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[男は、人の子を攫う事を、肯定も否定もしていなかった。
"神隠し"は、自分以外のアヤカシにとって必要な事のようだと薄ら感じていたし、
そも、"神隠し"事態に、男には興味を惹かれなかったのだ]
[人の子を連れ去る事に興味を持てなかったのは、男のアヤカシらしくない部分で、
興味が無い事には一切無頓着、それはアヤカシらしい男の一面だったのかもしれない]
[けれど]
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友と言うてくださる事はうれしかったのですが、 決して触れようとしなかったこと
境内の裏で蝶を飛ばしていた時の雰囲気… それが人ならざる者の雰囲気だったのが気になったのです。
だから確かめたかった。
(280) 2011/02/15(Tue) 20時半頃
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門下生 一平太は、メモを貼った。
2011/02/15(Tue) 20時半頃
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えー。それやったら…
[春坊が行くしかないやん、と口にしかけて、噤んだ。>>277
あるいはそれが、春松にとって幸せなのだろうか? だが、神隠しを実際に行える者たちの前で、不用意にそんな事を発言するのは憚られた]
(281) 2011/02/15(Tue) 20時半頃
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飴屋のお前は案外酷い事を言うのだな。 会うだけでまた引き離されるのも酷な仕打ちだ。
――それに雪柳はとうに人間ではない、身も心もアヤカシになっているのだぞ?
[姿は変わらずとも、アヤカシでなければ里では生きられない。強制的に攫われても適応できるのは人間だからこそ。
化物といわれても肩を竦めてみせるだけ]
アヤカシがどんな思いで流れる時の中で過ごすのかを、人間は知らないのに言いたい放題だ。
(282) 2011/02/15(Tue) 20時半頃
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懐刀 朧は、メモを貼った。
2011/02/15(Tue) 20時半頃
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どう、だろうか。 俺はそのあたりの事情には疎くてな……
[定吉の問い>>275の答えは、知らない。 男が返したのは、簡素な言葉だった]
たった一人の肉親……
[幼げな春松の憔悴しきった様子に向けるのは、僅かにだけ、同情の貌]
(283) 2011/02/15(Tue) 21時頃
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確かめてどうということはなかったのです。
ただ、華月斎殿が望めば私は向こう側に行きたいと願っただけで。
(284) 2011/02/15(Tue) 21時頃
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うぅ。
[藤之助の言葉は、不意に浮かんだ自分の考えが正解に近いのだと裏付けるように思えて、思わず呻いた>>282]
(285) 2011/02/15(Tue) 21時頃
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[一羽の蝶が、男の方へと飛び。 一平太の視界の中、ちらりちらりと舞い踊る]
――… は、ぁ ?
[予想していなかった言葉>>284に、間の抜けた声]
(286) 2011/02/15(Tue) 21時頃
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[間抜けた声にバツの悪そうな顔をする]
最初にお会いしたときに連れて行かれるのも悪くないと言ったではありませんか。
身寄りを亡くした虚しさ、寂しさ、 それと自分に課せられた重責から逃れたいがため
そう思っていたのです。
(287) 2011/02/15(Tue) 21時頃
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