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時は来た。村人達は集まり、互いの姿を確認する。
サイモンが無残な姿で発見された。
噂は現実だった。血塗られた定めに従う魔物“人狼”は、確かにこの中にいるのだ。
非力な人間が人狼に対抗するため、村人たちは一つのルールを定めた。投票により怪しい者を処刑していこうと。罪のない者を処刑してしまう事もあるだろうが、それも村のためにはやむを得ないと……。
現在の生存者は、フィリップ、リー、ヨアヒム、イアン、レティーシャ、ネル、グレッグの7名。
臨床試験が始まり薬を摂取してからもうじき2時間が経とうとしている。サイモンは採血の後ステーキを貪り、いくつかの食事を抱え込むと自室へと引きこもったようだ。それから全く出てくる様子がない。
青山は採血した血液を検査しながら、呟く。研究チームは忙しく個室に設置されたモニターをチェックする人間は手薄だった。
「………薬の効果はよく出てるみたいね…ってあら?……これ、」
ふと画面を見て目を見開く。その小さなモニターにはサイモンの部屋が映されていた。
「……もしかして、ああでも。」
研究者としての性だろうか。本来ならここで試験を中止すべき事案。それでも長年の研究の成果をここで潰したくない。それに"副作用の結果"がどう転ぶのかも見てみたい……。この効果はきっと副作用だろう。どの仕組みかは生体実験をしなければわからないが。
青山は口の端を少し吊り上げ、広間以外のモニターを他の研究員に見えない位置にずらす。
「……副作用がどの程度のものか、ちゃんと調べないとねえ。」
(#0) 2015/08/25(Tue) 02時頃
広間に設置されたスピーカーからどこか言い淀むような青山の声が響く。
「…どうやら、薬の副作用が酷く出ている方がいるようですね…。一種の悪食作用なるものが出てしまっているようです。副作用に関しても研究対象なので、対象の方を今すぐ別室へ移動させて調べたいところなのですが……カメラの調子が悪いようで広間以外の様子が見えません。
お手数ですが皆さんで探していただくことは出来ますか?先程ちらりと見えた様子では、サイモンさんの部屋に行けば……どんな"悪食"かは分かると思いますので、手掛かりになるかと…。サイモンさんの部屋はロックを解除しておきますから。
そうですね、2時間おきにこの薬は強い飢餓に襲われるはずです。なので、その度に副作用が強く出ている方を探して頂きましょう。
その間の過ごし方は、皆さんご自由にしてくださって構いませんので。
……ご協力お願い致しますね。」
(#1) 2015/08/25(Tue) 02時頃
[煙草はいつも通りの不味さだった
プリンの匂いはやけに鼻について
若者の手前耐えるが
先ほどの肉がせり上がってくる様
さほど喫煙所には長居しなかっただろう
煙草を揉み消し自室へ向かう途中
見つけた 食料を抱えた その男]
(サイモン)
[個室の向こうに消えていく姿を逃さなかった
扉が閉じられる前に足を挟み体をねじ込み]
[何故こんな事をしているのか
自分でも解らない
嗚呼 本当に 解らない
其れでも突然の来客に驚いたその顔は]
よォ、美味そうだな
[手元の食料に対してではなく言い放つ
手を伸ばし採血痕に貼られたシールを剥がす
ベリ、と容赦なくすれば痛みに歪められる顔]
[赤い点が其処にはあった
それに誘われる様に部屋に入った]
あーー……美味そォだ……
[背後へ興味はなく鍵をかける事もなく
もしかしたら少し扉は開いていたか]
一寸だけ……良いだろ?
[返事は少なくとも是ではなかったが
聞き入れる気は毛頭なかった
引き寄せた腕から食料が落ちて転がる
手首を握る力は普段より強いらしい
ミシミシと聞き慣れぬ音が鳴った]
[小さな注射針の痕に口づける
強く吸い付けばあたたかい赤が滲んだ
──嗚呼、なんて美味だ]
ん……はァ……これ……
ステーキなんかより、ずっと……
[鉄の味に夢中になってしまう
ドンドンと頭や背を殴られる衝撃を
何処か別の所で起きている様に感じて
気付けば吸うだけに留まらず
歯をその身に食い込ませていた
ぐちゅりと腕下の皮膚を噛み千切ると
赤い血が溢れ赤い肉が露わになる]
あーー……美味そォだ……ほんとに
[何度目になるか解らない感想を]
[ベッドに倒れこんだところで空腹感は拭えない。おまけにまだ気分の悪さが尾を引いていて、あの匂いの残る広間に戻るのも億劫だ。
(肉と、野菜がダメなのか…?なら、何か他に食べれるもの……とにかく、何か食ベナキャ……)
先程無理やり呑み下したあの気持ち悪い塊はまだ胃の中に残っていて、動くたびに胃液がせり上がる。水はどうやら大丈夫だった。そのまま口内をゆすぐように水を飲む。]
……だめだ、一人でいると余計空腹感が際立つ…。
[ベッドから起き上がると、空腹感に苛まれながら部屋を後にする。先程までの空腹に喘ぐ姿など微塵も感じさせない顔で。
途中、どこからともなく美味しそうな匂いが鼻腔を掠める。それは先程の肉の香ばしい匂いとは違う、金属的な匂い。ああ、でもそれは空腹に耐える姿には刺激が強い。ふらりふらりとその匂いにつられて歩いて……向かうはサイモンの部屋か。扉が少しだけ開いていて、誘われるようにその中へと。]
──……ッ!!!??
[そこに映る光景には、思わず息を飲む。ああ、でも美味しそうだ、なんて浮かんだ考えと素敵な香りには欠片ほどの倫理観と理性で誘惑を断ち切るかのように首を振って]
……ルーさん、なにを
[一滴すら惜しくてじゅるじゅると啜る
啜りながら露出した赤い身を屠る
ぎゃんぎゃんと泣き喚かれるのが邪魔で
床に落ちていたパンを拾い上げ
五月蝿い口の中にぐしゃりとねじ込んだ
ただひたすらに鉄の味
なのに何故か美味しく感じる
きっと先ほどのステーキが不味すぎたのだ]
……あ?
[後ろから偽名を呼ばれ声を掛けられた
名は間違えられていたが気にもならない
相手は……レティ、なんとか]
[咎める様な声掛けではあったが
ほんの一瞬背筋が冷えたが
その瞳に潜んだ欲を見逃さない]
レティ……お前もどォだ?
[碌に会話をして来なかったはずだが
まるで旧知の仲の様に話し掛け
掴んだ"食料"を差し出す
握った手首の先は青白くなっていたか
腕下は捲れ上がり 只々赤い
口にはパンが詰め込まれ
漏れるは何語かも解らない呻きのみ
それと白い喉元が覗いたか]
[あ?という声とともに振り返られる。箱の中で会ったあの人物に変わりはないだろう。…呼び掛けた名前に関してはあまり自信が持てなかったが。確かそんな感じだ、という曖昧な言い訳は今は捨て置き。
捲れ上がった腕から見える溢れんばかりの赤と、少し白い脂肪も覗くか。ああ、それは先程の塊よりもオイシソウ。
ごくりと唾を飲む。気分の悪さなど吹き飛び、迫る飢餓と目の前のご馳走。『お前もどォだ?』と天の声のように"食糧"を差し出されれば、飢えた身体は自然と手を伸ばしかけ──]
……ッ、…!
[呻く姿が目に入ればふと我に返り、また首を振る。頭に浮かぶ言葉は『食人嗜好』『カニバリズム』と言った禁忌の言葉。それは、それだけは手を出してはいけない。どんなに空腹であろうとも、と細い糸のような倫理観がその手を止めようと。
…それでも、空腹感は変わらずに、]
……苦しそう、ですよ…その人。それに、その血……(怪我してるなら治療しなきゃ)……凄くお腹が空いて、違う、でも、……美味しそうで美味しそうで、
[気付けばその赤を指で掬い取り口に運んでいたか。そして、作り笑いではない本心から溢れる笑顔を浮かべていることに、自分は気づかず。]
[決して人に見られてはいけない行為
しかしレティなら大丈夫という気がした
此奴は俺の仲間だ、と
所謂同族意識だろうか其れは解らない
伸ばしたかと思えば降ろされる手
そして振られる首──何だ要らないのか]
……はは
[かと思えば本音と建て前入り混じった台詞
口元に運ばれる赤
何も言う必要はないのだろう
浮かべられる笑顔
きっと男も同じ顔をしていた]
[呻き声を上げるサイモン
腕下の肉が減っていき骨が見えて来ると
此方を叩く力はごく弱くなっていった
ついに手が持ち上がることはなくなったか
途中やり易いようにと床に引き倒して
だらだらと涙と涎を垂らしてはいるようだ
満たされて行く腹が心地よい
レティはどうしていただろうか
人間など食べようと思ったこともなかった
そういう趣味は人並みに嫌悪していた筈
……"人並み"?]
あァ俺……人じゃなくなったんだ
[赤く染まった口から乾いた笑みが漏れる
人の皮膚に噛み付き引き裂くようには
出来ていない歯列
力任せに使ったせいで歯茎ごと少し痛む
しかしこれも直ぐ慣れるのだろう
食べるのには自制が効かないのに
服だけは汚してはいけないと警告が鳴る
全く可笑しな話だ
白いシャツに赤が付かぬよう気を払って]
[歯で毟り口の中に運び舌の上で転がして
程よく咀嚼すれば飲み込み腹へと送る
その繰り返し
上腕まで食べ進めれば腹は落ち着いた様子
レティはどうだったか
満たされた男はサイモンへの興味をなくして
少し冷静になったかその場を離れようとする]
ごっそさん
[サイモンの衣服で口許を拭い
レティに薄く笑いかけ部屋を出ただろうか]
【人】 賭場の主 ヨアヒム[モグモグとステーキの後に更に追加した軽食を食べつつの事だった。 (1) 2015/08/25(Tue) 08時頃 |
サイモン……
[今更に沸く罪悪感
どうして人肉なんて食べてしまったのか
自室に戻って腹を下した
排泄したものは見なくても解った
事前に食べたステーキのみを消化不良で
その後の血肉は恐ろしく身体に馴染んだ
腹の中で受け入れられているのが解る]
2時間……おき?
[続いていた放送の内容に目眩がした
飢餓が訪れるという間隔の短さ
またあの時がくるのだ
なかった事には出来ない*]
【人】 徒弟 グレッグーアナウンス・広場ー (2) 2015/08/25(Tue) 08時半頃 |
[同じく浮かべられる笑顔を眼にすれば、「ああこの人は同じなのだ」と妙な仲間意識に囚われる。そこから先は酷く安心した心地良い温水の中に意識を落とし、ただ空いた腹を欲のままに埋めるだけ。
"ダメなこと"だなんて後悔をするのはもう少し先の話。
腕は彼が食べている
…ふふ、いただきます。
[笑顔を浮かべたままその足を拝借し、力に任せてその肉を皮膚や毛ごと噛みちぎる。口内に広がる鉄の味は滑らかで、喉にまとわりつくことなくするりと落ちていく。ああ、怯えた様子ではあったが恐らく彼は健康状態が良かったのかもしれない。
咀嚼する肉は噛めば噛むほどその血を溢れさせ、その柔らかさ、舌触りの美しさ、何よりも絶妙な甘さを持つ味に酔いしれ 思わず口元が弧を描く。止まらない。先程食べたあの匂いも酷い塊と比べたら天と地の差だ。こんなに美味しいものがあるだなんて。
露出した肉に舌を這わせ、その赤の味を堪能していれば ふと服に赤が飛んではまずいと気付き、とりあえず上の白だけは脱ぐ。その手つきは鮮やかで、本当に本当に本当に早く食べたくて堪らないという子供の表情を浮かべていた。
そのまま柔らかな肉に歯を立て、また噛みちぎる。この作業はあまり上手とは言えなかったが、それでも空腹に突き動かされるように食べていれば次第に白い脂肪が滲む。
脂肪は少しべたりとしていたが、それでもあの廃油よりも喉越しが良く それでいて後にも引かない。
筋組織は筋っぽく噛みちぎる作業が一苦労だ。しかしその絶妙な固さは噛めば噛むほど味を出し、舌に触れるたびに喜びで体が震える。]
……美味しい、…ですね
[なんて先程咎めようとしていた人物とは思えない一言。口元には赤を貼り付けながら、心からの笑顔を。同じくリーが笑顔を浮かべるのなら、こちらも笑顔を浮かべて。
屠り続ければ次第にカチリと固いものに触れる。骨のざらりとした感触には、ああもうここまで食べてしまったと 気付けば片方の足はもうとっくに痩せこけ、残るは骨と僅かな肉ばかり。
まだ、もっと。
足ならもうひとつあるじゃあないか。
そうして続けていけば、またすぐにその足も骨を露出させていくのだろう。だってこんなに美味しいんだから。]
……ご馳走様でした。……ああ、リーさん一つ伺いたいことが。
[食事を終えれば最早その残骸に興味などない。ああ、でもまだ少し空腹感は残る。心も胃も満たされる食事なんて、久方振りだ。
伺いたいことが、といえば彼は足を止めてくれたか。それならば、口元の赤を拭いながら薄く笑う彼に 笑顔を向けて。]
…先程の肉の塊、どんな味がしましたか?
[その問いは今更野暮かもしれない。それでも最後の確認とばかりに。
未だ空腹を訴える脳は、これ以上の長居は無用であるという理性のおかげでそこから離れることはできたろう。一度覚えた味に想いを馳せて。]
【人】 聖歌隊員 レティーシャ[自室を出ようとしたその時、アナウンスの声が響く。その内容を聞けば眉を顰めて。こういった仕事ではこのような不測の事態というのも起こりうるものなのだろうか。だとしても、"悪食"という言葉は副作用として重すぎないか。 (4) 2015/08/25(Tue) 09時頃 |
[ああ、眼前の光景は先程部屋を出た時と何も変わらない。露出した肉は宝石のような赤さをまだ保っており、思わずごくりと唾を飲んでしまうほど。美味しかった、なんて言うのは不謹慎だろう。
きっと青山が示していた悪食とやらは"コレ"のこと。なんてことだ。
今更になって浮かぶのは人間を屠るという禁忌を犯した自分への嫌悪と、それでいて不思議と後悔していない自分への侮蔑。
2時間おきにあの飢餓に襲われると言うのなら、またあれが起こるのか。今度は止めなくては。ダメだ、人を食べるなんて……それだけはあってはならない。あの舌触りの良さ、喉を通る血液や肉の美味しさといったらこの上なくて惜しくは思ったが、いやそれでも絶対に食べてはダメだと。
そう考えながらも、室内を漂う鉄の香りには人知れずうっとりと目を細めていた。
【人】 鳥使い フィリップ[可愛いなんて言葉を含んだ子供扱いじみた声には、いっそ拗ねめいて口角を下げたけれど。] (6) 2015/08/25(Tue) 09時頃 |
【人】 鳥使い フィリップ―アナウンスと邂逅と― (7) 2015/08/25(Tue) 09時半頃 |
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