167 あの、春の日
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[エンベロープから取り出したのは、4枚のメッセージカード。 封筒と同じく、瑠璃色を選びました。]
(187) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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[先ず始めに、エルゴット先輩へ。 彼女とは交わした言葉は他の先輩より少なかったかもしれませんが、彼女が描く絵の世界を黒眼は見つめていましたね。]
別れてふ ことは色にも あらなくに 心にしみて わびしかるらむ……
[過去にエルゴット先輩へ書いた手紙には、そう記しましたね。 ですが、今の貴女は自分の言葉を便箋に綴ります――]
(188) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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エルゴット先輩 卒業おめでとうございます。 先輩の未来がどうか、キャンバスの上の色彩と共に明るくありますように。
――――― 檀
(*4) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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[次に、ジリヤ先輩へ。 美しいかの先輩の生徒会での活躍は、貴女も良く知るところです。]
今日別れ 明日はあふみと 思へども 夜やふけぬらむ 袖の露けき……
[過去にジリヤ先輩へ書いた手紙には、そう記しました。 歌の意味も美しいですけれど、拙い言葉を綴っていきます――]
(189) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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ジリヤ先輩 卒業おめでとうございます。 生徒会の凛々しい先輩も好きでしたが、寮で一緒に過ごした先輩がもっと好きでした。
――――― 檀
(*5) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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[次に、フィリップ先輩へ。 彼のまとうお日様のような雰囲気に、貴女は癒されていましたね。]
音羽山 こだかく鳴きて 郭公 君が別れを 惜しむべらなり。
[過去にフィリップ先輩へ書いた手紙には、そう記しました。 これは少しまずいものを選んでいたなと、慌てて手紙を綴ります――]
(190) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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フィリップ先輩 卒業おめでとうございます。 これから先も、皆にも動物にも優しい先輩でいてください。
――――― 檀
(*6) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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[そして、ゴロウ先輩へ。 彼が言葉を紡ぐ、その瞬間を黒眼はいつも捉えていましたね。]
……、……。
[記したそれは、口に出すことはできませんでした。 暫し考えた後、筆はゆっくりと動き始めます。
遠い未来を、見つめるような眼差しを注ぎながら――]
(191) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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ゴロウ先輩 卒業おめでとうございます。 先輩の育てられた花、これからも大切にいたします。
――――― 檀
追伸:先輩は眼鏡がよく、お似合いになると思いますよ。
(*7) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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[そして更に綴っていくのは、 一つ上の先輩方と、同級生の皆さんへ。 紺碧と空色のメッセージカードを取り出します。
彼らとはすぐに別れるわけではありませんから、きっと不思議に思うでしょうね。 ですがどうしても、書かずには居られませんでした。]
そのままの気持ちを。 私の、言葉で。
[冗長でどこか、浮世離れしているとも言われる言葉より 親しく、思うままに。]
(192) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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ジェレミー先輩 泣いてしまったお話し、ずっと忘れません。 これからも、よろしくお願いいたします。
――――― 檀
(*8) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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キャサリン先輩 華やかでしなやかな先輩が眩しくて、あこがれるばかりです。 これからも、よろしくお願いいたします。 ――――― 檀
(*9) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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シーシャ先輩 先輩の褐色の眼差しは、どんな絵画より鮮やかで素敵です。 これからも、よろしくお願いいたします。
――――― 檀
(*10) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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[ハルカへ綴ったカードも、 他の皆と同じく紺碧の封筒に入れた。
言葉にすれば伝わってしまう今、少し気恥ずかしいけれど、 もしも未来が変えられたのなら彼女にはきっと伝わるだろう――]
(*11) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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ハルカ先輩 先輩の想いが、どうか届けられますように。 優しいハルカ先輩が、心穏やかになりますように。
先輩が一緒に居てくれて、本当に嬉しかったです。
(-44) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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マドカさん あなたが空を飛ぶその姿を、眼に焼き付けさせてください。 これからも、共に頑張りましょう。
――――― 檀
(*12) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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ルーカスくん 籤の神様がまた、現れてくれますように。 これからも、共に頑張りましょう。
――――― 檀
(*13) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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[そして、ルーカス宛ての空色の封筒の中にはもう一つ。 彼の手によって撮影された、寮から見たいつかの星空が**]
(*14) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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[手紙を書き終わる頃には、 すっかり手がくたくたになってしまいました。 気力を振り絞って一つ一つ、水糊で封を閉じます。 出来上がったのは10つの手紙。
それを持って今度は、急ぎ玄関へと向かうのですね。 封筒の色が空色、紺碧、瑠璃色と色を深くするように、もう外はすっかりと暗くなっていました。]
―― → 玄関口へ ――
(193) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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―― 玄関口 ――
[すっかり日の暮れた頃、貴女は一人玄関にたたずんでいます。 下駄箱の近くに、それぞれの生徒へ向けた小さな郵便受けが設置されていますね。 名前を確認しながら一つ一つ、皆さんへの手紙を入れていきました。
手紙が落とされたことを、気がつかない人もいるかもしれません。 すぐに気がつく人も、いるかもしれません。 ですがそれでいいのですよね? だって、貴女は微笑んでいます。]
……よかった、間に合いました。
[ことん、と最後に封筒を落とした音が響きます。]
(194) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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[小さな箱の中の底に沈んだものは
――貴女が残してきた、あの日の *後悔*]
(195) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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[決意を秘めた声音は、小さく囁く。]
私、……もう大丈夫です。
一人で目覚めたとしてもきっと、もう―― 後悔は、しません。
[きっと彼女には、この声は届くから**]
(*15) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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……あ、っ
[そのままどれくらい佇んでいたことでしょう。 マドカさんの声>>209に黒眼を一つ瞬いて、それからようやく笑みを浮かべました。 取られた腕を少しだけ動かして、同じようにマドカさんの腕をつかみます。]
おかえりなさい、マドカさん。 ええ、おなかが空きましたね。
……行きましょうか。
[急ぐ、と彼女は言いましたが、貴女はいつも通りの穏やかなペースで食堂へと向かいますね。 再び貴女の腹の虫が、小さく小さく鳴きました。]
(211) 2014/03/06(Thu) 23時頃
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春風の花を散らすと見る夢は 覚めても胸のさわぐなりけり
……私は、私自身は。 心の奥底で、気がついていたのでしょうか。
[その歌は、かの人に過去のマユミが送った歌。 ただ、“花”というキーワードと美しい響きを持つそれを選んで記したそれは、その当時には気がつかずとも後に気がついた感情を色濃く映している。
それに彼が気がついたか、気がついていないのか。久しぶりに顔を合わせたそのときには聞きだすことができなかった。 ただ眼鏡を掛けていた、不思議に思ったそれを口にするだけにして――。
慕う想いは桜の色より淡く、尊敬と信頼という名の下に薄められていたのだろう。 けれど、それでいいのだ。 そうでなければ、いけないのだ。]
(*18) 2014/03/06(Thu) 23時半頃
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すみません。
[謝罪の言葉は、小さく呟かれる。]
でも、ハルカ先輩は…… 私の手助けなど必要ないでしょう。
[強くなどはない。そう告げようとした。 幸せな夢をいつまでも、見ていたい。そうも思った。 それでもいつか、終わりはくるのだ。]
(*19) 2014/03/06(Thu) 23時半頃
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でもお揃いでしょう?マドカさんも。
[二人でお腹の虫の合唱を響かせながら>>217、食堂へとやってきました。 中へ入ろうとすればふと、目の前の彼女が振り返ります。 突如として交わった視線に黒眼は見開かれますが、マドカさんが口にした言葉に、暫く返事をすることができずにいました>>219。]
……はい。 勿論です。
[その言葉は、食堂へ駆け出した彼女の背に。その声は聞こえたでしょうか? 元気よく走り出すその姿は、マドカさんが宙を舞う部活中の姿にも似て
黒眼はそれを、焼き付けるように。見つめていました。]
(221) 2014/03/06(Thu) 23時半頃
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―― → 食堂 ――
[食堂は外よりも温かく、 湯気にふんわりと包まれているようです。]
皆さん、こんばんは。 いい匂いですね、お腹が空きました。
[いつもよりもきびきびと机まで近づき、 取り皿と箸に手を伸ばします。 鍋の中から均等に具を拾い上げることに夢中になっていたら、山盛りになってしまいました。 ……貴女は本当に、料理の才能がありませんね。]
……い、ただきます。
[今更気恥ずかしくなりながらも、鍋から少し離れた席で食事を始めます。 かみ締める鍋の味を、記憶に刻みいくように。]
(228) 2014/03/07(Fri) 00時頃
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私にできて、先輩にできないはずがありません。 それに、何をしたってこれは……夢、なのですから。
[過去は変えられるのか、変わらないのか。 そこまでは、未だわからないこと。 しかし後悔せぬようにと励ましてくれたのは、今近くのテーブルで鍋を食している彼女自身だ。 口元に近づけた箸を止め、微笑む。]
……美味しいですね、お鍋。 あの居酒屋でも、こんな美味しいお鍋、食べたいですね。
(*21) 2014/03/07(Fri) 00時頃
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……はい。
お鍋、食べましょう。 ……そう、しましょう。
[どうしてだろう、悲しいことなど何もないのに、]
(*23) 2014/03/07(Fri) 00時頃
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――……、……おい、し
[噛み締める昆布だしの味は奥深く。 湯気に当てられてなのか、貴女の黒眼は密やかに滲んでいました**]
(232) 2014/03/07(Fri) 00時頃
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