臨床試験が始まり薬を摂取してからもうじき2時間が経とうとしている。サイモンは採血の後ステーキを貪り、いくつかの食事を抱え込むと自室へと引きこもったようだ。それから全く出てくる様子がない。
青山は採血した血液を検査しながら、呟く。研究チームは忙しく個室に設置されたモニターをチェックする人間は手薄だった。
「………薬の効果はよく出てるみたいね…ってあら?……これ、」
ふと画面を見て目を見開く。その小さなモニターにはサイモンの部屋が映されていた。
「……もしかして、ああでも。」
研究者としての性だろうか。本来ならここで試験を中止すべき事案。それでも長年の研究の成果をここで潰したくない。それに"副作用の結果"がどう転ぶのかも見てみたい……。この効果はきっと副作用だろう。どの仕組みかは生体実験をしなければわからないが。
青山は口の端を少し吊り上げ、広間以外のモニターを他の研究員に見えない位置にずらす。
「……副作用がどの程度のものか、ちゃんと調べないとねえ。」
(#0) 2015/08/25(Tue) 02時頃