彼の言葉に返すそれを、告げてしまいたくはあるけれど。だがそれは、次へと取っておこうか――例え一夜限りの夢が覚めたとしても、それが夢にならぬ希望が…見えたのだから。
…それはまるで、次への約束に縋るような。
小さな小さな…願掛けのようなものでもあったけれど。]
そうとも。
移ろい変わり行く不実な月になど、誓わなくとも。
[クツリと漏れた笑みには、此方もつられるように肩を揺らし。そんな言葉遊びを交わしながら、寂しげな声に応えるように、今一度指先へと唇を寄せる。
そうして教えられた彼の姓には、す、と目を細め。小さく唇だけで反芻したのなら、一つ頷いて視線を戻す。]
クリストフ、成る程。
確か君の名もまた、キリストの弟子の一人と同じものだったと記憶しているが。
いいじゃあないか。聖人達の祝福のお陰で、君には悲劇が訪れないのなら。
[やはり戯けたように、それは何とも罰当たりな事を言って見せながら。繋いだ手はそのままに、男は腰を上げると彼の方へと歩み寄って行く。]
(359) 2014/10/06(Mon) 23時頃