――診察室――
[診察室の奥から、替えの点滴のソフトパック、それから硝子のコップに僅かな水と、銀盥を持って戻る。
パックはひとまずと机の上に置いて、グラスと盥を持って少女>>312に近付いた。]
いいですか、口に含むだけです。
飲み込まずに、吐き出してください。
[常よりも強めの語調で、言い聞かせるように告げて。
けれどこれも、"意地悪"だと取られてしまうだろうか。喉が渇いているのならば、それは尚更だろう。
彼女がもしグラスを手に取ろうとしたとしても、それを渡すことはせずに、自らの手でその乾いた唇まで近付ける。]
……これは、意地悪で言っているんじゃありません。
明日も絵本が読みたいのなら、言うことを聞いてください。
[少女に"意地悪"をした事は、一度だってないのだけれど。
駄目押しのように言葉を続けながら、助けを求めるように、傍らの青年を見遣る。
もしも彼が望むのならば、温い水の揺れるグラスを渡す事も厭わない。おそらく自分がそうするよりも、ずっと良いだろうから。]
(314) 2014/06/23(Mon) 22時頃