…そう…なんだ。
でも、美しいだけの花なら、確かに――
[仄暗い其処、唯声を空気に馴染ませ姿を近付かせて来る彼>>265を一瞥し。
美味な花は知らぬと告げられたのならば、少しだけ残念そうに息を吐き、自分の首元へと手を置いてみただろうか。
そうして思い浮かべたのは、硝子戸に囲まれた廊下での出来事。
淡藤を頭に飾った彼をぼんやり脳裏に浮かべ、思いを馳せ。確かに美しかったと、今一度彼の夢に寸分溺れる]
…それ、蜜をゆらりゆうらり食べ歩けってコトかい。
こういう場所だし、悪くない案だ――そう、例えばキミとかね。
[軈て耳を貫くのは、冷淡とさえ錯覚する程の、声色。
先聴いた割合温かな音よりも、幾度か低いその音色には僅少肩を揺らしてはみたけれど。――そうして後付のような微笑に、妖艶な気さえ思い起こしそうにはなったけれど。
ふらりふらり。ただ確実に蝶を手招く花に、興味を示したかのように。腰を僅かに折り曲げ、近くなったその顔間近に囁いて見せた]
質問を変えよう。
…キミはさ、どんな味がするのだろうね。
俺の飢えを、乾かしてはくれそうかい?**
(281) 2014/09/14(Sun) 07時半頃