─自室→ライジの部屋─
[食事を終えた後、自室へ向えば軽い水浴びを。
食べることは嫌いではないものの、その強い匂いを身に纏い続けるのは良しとしない。
特に寝る前ならば尚更と、浴室に入れば、部屋にある小瓶とは少し違う酸味のある柑橘系の香りのする泡をその白い痩躯に指で伸ばしてから洗い流した。
昨日はそれを忘れたか、何処かかさかさと乾いていた肌がしっとりと指に吸い付く様を確認すれば満足気に眺めたなら、小さく篭った笑い声を零して上がった。
匂いのついた菫色のスーツは脱ぎ捨てたまま。
代わりにそれよりも少しばかり濃い紫苑の色をした寝間着を身に付けて、先程交わした約束を果たしに部屋を出る。
傍らに、白い消毒液と深い茶色のチョコレートを携えて。]
ライジお兄様、ニコラスです。
…いらっしゃるかしらぁ?
[こつこつと、節張った細い人差し指と中指の第二関節で打った扉はライジの部屋のもの。
さて、部屋の主は己との約束を覚えているだろうか──。*]
(253) 2014/12/23(Tue) 22時半頃