……これ、マフラーです。
ありがとうございました。
[弱いからと言って、すぐに身体が動く訳ではない。
時間稼ぎをするみたいに、鞄の片割れだった黒い袋を差し出す。中身は透明の袋に詰められた黒い毛糸のマフラー。クリーニングのおかげでピカピカだ。
それから迷うように彷徨った手が鞄の中へ。小さな塊を黒い袋の上に乗せる。]
あっ、
[零れちゃう、と。言葉になる前に身体が動いた。
咄嗟に伸ばした手がバタールを持つ彼の手に触れる。
揺れる瞳を隠すように目を伏せ、唇でオーロラソースごと攫った。]
……。
[手を添えたまま、片頬を膨らませる。バタールに提供した仮住まいは、口をもぐもぐと動かす度に小さくなった。
もちもち生地に甘みとコク、それからほのかな酸味が染み込んだバタールは、どこかしゅわしゅわとした食感。オーロラソースだけで、バタール一本は食べられそうだ。
バターの香りと小麦の甘さまで堪能した後、喉を鳴らす。]
(184) Pumpkin 2019/12/03(Tue) 20時半頃