[乙坂>>159にこくこくと頷くことで返事をし、少し足早に席へと移動する。
周りに気づかれない内にと、熱を持った頬を仰いだ。
黒豆茶と共に彼が戻ってくれば、自身の隣を促すように椅子を引く。
小さく咳払い。気合いを入れ直し、背筋を伸ばして微笑んだ。]
! ……ふふ。
[言い慣れた、聞き慣れない言葉を耳にする。
いつもは境界線の向こう側、今日は隣の席。
これまでは店員と客、これからは恋人同士。
日常に紛れた特別に、彼を見上げる目元が蕩けた。]
いただきます。
[乙坂に続いて手を合わせる。一緒に食べるからこその同じ言葉は、それだけで胸を躍らせた。
笑顔がかわいいなぁなんて口にしてしまう前に、フォークを手に取る。
伝えることを惜しむつもりはないが、今言ったらそれ以上のものが返ってくるはずだから。彼はそういう人だ。照れてしまう。
少しずつ知っていく好きな人の好きなところに、ラザニアを迎え入れる唇は弧を描いていた。]
(164) Pumpkin 2019/12/02(Mon) 23時半頃