それで、いい。
おまえの居場所なら、此処にある。
……此処にしか、ないんだから。
[呵責と同時に、どこか自虐めいても取れる言葉を肯定すると同時に。
幼少からずっと押し付けてきた刷り込みの延長の如く、弟の飲み込んだであろう言葉は二度繰り返した。
ひとつ息をついた後に、肩を押して、弟の身体を閉じた扉へと押しやる。
強制するほど力は入らなかったから、僅かでも抵抗の意思があったなら、拒否するのは容易いだろうけれど。
それが叶ったのなら、残る逃げ道を全て塞いだかのような満足感に、小さく息を零しただろう。]
……、言いたいことがあるなら、言えよ。
それくらいは、聞いてやるから。
[僕は全部吐き出したというのに、と。
先の流れを蒸し返すように、寄せた耳元に言葉を落とす。
喉を覆って爪を立てようとした手は、けれど力を込める前に離れた。
無意味とは知りながら繰り返してきた虐待にも似た些細な暴力を、今は行使する気にはなれずに。
横柄な物言いの中、懇願めいた響きが含まれたその言葉に、弟が応じるかは理解らないけれど。]
(161) g_r_shinosaki 2014/07/10(Thu) 06時頃