[弟の涙>>125も、ずいぶん久しぶりに目にした気がする。生理的なものならまだしも、前に見たのはいつだったろうか。
そんな事を考えながら、深追いはせずに手を戻した。]
僕は、認めない。
研究は進んでるって、そう言っただろ、
[駄目押しのような言葉>>126は、相変わらず往生際が悪い。自分を差し置いてそんな事を考えながら、言い聞かせるように呟いた。
処置の合間に落とされる文句にだって、とっくに慣れた。曖昧に頷きながら、手を緩めることはしない。――何より自業自得だろう。
巻き終えた包帯を留めてから、差し出された手も受け取る。]
それに、……おまえに死なれたら、困る。
[包帯に覆われた、この歳にしては幾らか頼りない手の甲を睨み付けながら落とした言葉は、――結局のところ、それが全てだ。
自分よりも幼くてちっぽけで哀れな弟が、訳の理解らない可笑しな奇病のせいでいなくなってしまったら、自分は一体どうすればいいのか。想像すらしたくなかった。
浮かんでしまった嫌なビジョンを振り払うように、恐らく骨折しているであろう赤青く腫れ上がった手も、手早く包帯で固定し直す。]
(143) 2014/06/29(Sun) 01時頃