──…連れ出して下さって、ありがとうございました。
………、良い、夢をいただきました。
[“また、腕を引いてくれますか?”なんて。流石に過ぎた願いかもしれないと。
音にするのは躊躇われて、それでも零れた言の葉は囁きとなり。
僅か空気を震わせたけれど、伝わってしまったのかどうか。]
…有難う。
[少しの躊躇いの後。全ての感情に蓋をして、きちんと音にしたのは、そのひとこと。
蝶は新たな蜜を求めて移ろうものではないだろうか。
そう考えればこれ以上引き止めてしまうのも、申し訳なく。]
──貴方に相応しい花が見つかりますように。
[踏み込んだ言葉を囁いていることを自覚しつつも、身を離しては出会った頃と同じ笑みを浮かべて。
佇むその人の邪魔をしないよう、背を向けては遅れて赤らむ頬を隠すよう、早足で月に背を向け中庭から身を翻し。
あてもなくふらりと、蝋の灯る箱の中へと戻ろうと足を踏み入れただろう。]**
(141) 2014/09/13(Sat) 11時頃