―新月の晩―
[月に一度の暗いくらい闇が花街を覆う日。
息を切らし紺色とこげ茶を揺らし何処かへと向かう男が一人。
目的は一つ。
まだ次に腰を落ち着ける場所の宛なんて決まっては居ないが、雪山にかかる月を見にいければと。>>3:*59
覚えていないかもしれない口約束を果たそうと、走る、走る。
待ってくれると『約束』してくれた花を……いや、愛しい人を、月明かりが無くなる晩に、人目についてもいい、指をさされてもいいから
正面から攫ってしまおうと向かうは一つの娼館。
彼は、霞は何処に居ただろうか。彼の姿を見つければ、ふわりと笑ってこう告げる。]
霞、お前の一生を朧では無くただの『佐吉(おとこ)』が貰い受けにきた。
[娼館の主も、先輩娼にも文句どころか一言発するのさえ許さずに彼を抱き上げ、荷物があるならそれを奪うように手に取り。]
ただ俺の傍で笑って過ごしてくれれば、いい。
俺の時間が欲しければ、全て霞にくれてやる。
(140) オレット 2014/09/26(Fri) 23時半頃