[列車をおりて、外から列車を見つめる。思い出すのはこの旅のこと。
最初に求めたのは握手。今まで、誰も握り返してはくれなかった。でも、車掌さんは握り返してくれた。それだけでこの列車に乗ってよかったと心底思った。
人の気を惹きたくて引っ張っる服の裾。忙しいからと振り払われるばかり。でも、サミュエルは振り払うことは無かった。それだけで心が満たされた。
自分を見て欲しくてジェスチャーでの自己アピール。誰も見てはくれなかった。でも、ジャックは見てくれて、話しかけてくれた。それだけで幸せだった。
病院にいた時には想像もつかない経験もできた。
色鮮やかな鳥。言葉を交わすことはできなかったけれども、その姿を目にすることができた。今でも瞳を閉じれば、瞼の裏にはっきりと浮かぶ。
ライジのおかげで空を飛ぶことができた。空を飛ぶなんて、長いこと生きたとしてもそう経験できるものではない。瞳が見えて良かったと強く実感した。
誰かと共に楽しむなんて今までしたことがなかった。でも、ヤヘと一緒に空を飛ぶことができて、楽しさは誰かと一緒だと2倍、3倍になるのだと知った。]
(139) 2014/05/24(Sat) 00時頃