── 書斎 ──
[訪れたのは書物の保管された場所でありました。
この廓には鍵と謂うものがありません。
故に、扉は誰でも開けることが出来ますし
何方かが僕の後を追うのなら、すぐに追いつくことでしょう。
僕は二つの本を手にとり、ソファーへ腰を下ろしました。
一つは亀吉さんへ、横文字の読み書きを教えて差し上げるためのものです。
先程、中庭におられた時には笑顔らしきを返してくださいました>>105
大事そうに紡がれた名までは>>131聞き取れはしなかったのですが
僕はその本を手に取ると、傍らへとそっと置き
もう一冊の本のページを、はらりと捲りました。
判りやすく、櫻色の栞がずっと挟んであるそれは
何の変哲も無い、古い植物図鑑でありました。
色褪せたページを見詰め。
僕は溜息を、吐き出したのでございます**]
(135) 2014/09/13(Sat) 02時半頃