……分からん。理解出来んな。
[愛を語らうより相手を傷付ける事を選ぶのもそうだけれど、それより。……それより理解し難いのは、人にそうまで執着出来る事だった。
憎まれても良いから、その記憶に留まりたいなどと。そんなの、考えた事も無かった。
そもそも彼とは同じ土俵にすら立っていなかったのだと、一つ鼻を鳴らす]
――なあ、
[この言葉を、告げるべきかどうか。暫しの逡巡の後、おずおずと口を開く。
恐らく何も言わずにいた方が利口なのだろうと分かってはいても、いい加減仕舞い込むのも難しい]
私も、あんたには忘れられたくないと思うよ。
[ぽつり、と。ほんの小さい声で言葉を吐き出す。これが彼に届くかどうかすら分からなかったが、勿論言い直すつもりなど無かった。
散々虐げられて、その結果が忘却だなんて、許せる筈が無い。傷を見る度に己を思い出させたいのは、相手ばかりではないのだと、そう伝えてやる。
忘れられたくない理由は、全く違うものなのだろうけれど。この言葉が彼にどう受け取られるかも分からないけれど。
隠しておくには余りにも重い感情だった]
(124) 製菓 2014/07/09(Wed) 21時頃