……あんな事されて、忘れられるか。
[半ば無意識のうちに出た声音は、妙に刺々しく聞こえて。
一瞬言い淀めば、そのまま続けて言葉を紡ぐ]
――ふん。
そんなに忘れられたくないなら、もっと真っ当な努力をしろよ。
[縋る様な声音が、顰められた顔が。……酷く煩わしい。今更殊勝になっても無駄だと、そう言ってやりたいのに。どうしてだか、口にする事は出来なかった。
こんな表情を見てしまっては、流石に彼の本音とやらを疑う事は出来なかった。
理解出来ないけれど、これが彼の愛し方とかいうやつなのだろう。随分とまあ、重い愛だ。こんなもの、物語の中だけだと思っていたのだけど]
……クソ、限界だ。もう寝る。
[冷えきった体も霞む視界もいい加減うんざりで。言葉と共にぼす、とシーツに沈んで、面倒そうに彼の方を見る。
帰れ、と。そう言おうと思ったのだけれど。開きかけた口を閉じ、ドアを差し掛けた手を下ろして。はあ、と。またため息を吐く]
好きにしろ。
[結局それだけ言って、シーツに顔を埋めた]
(111) 製菓 2014/07/09(Wed) 16時半頃