学がある人ならば、尚更存在が真実味を帯びてきますけどね。
[…ふと手紙に書かれた"欲しいもの"という単語を見て眉を寄せる。…欲しいもの。昨晩の楼主の姿を思い浮かべて、強欲な人間には反吐が出る、と心底思った。…ああ、もしも鼠小僧を捕まえたのならば"自由"が欲しいとでも言ってみようか。もっとも、手に入れられなくても良いものだけれど。
此処の茶も嫌いでない、という彼に思わず頬が緩むのを感じた。僕は、江戸の文化の中で茶が一番好きだ。…逆に言えばこれ以外には興味がなかった。
店内へ入ると奥の席へ腰を下ろした。]
…構いませんよ。…といっても、甘味は苦手なので茶のみですが。
[躊躇いがちに任せる、と告げた彼を見る。下を向いた彼の表情が分からなくて、少し残念だなと思いながら茶汲み女に茶を二つ頼む。其の後、ああ、甘味頼まれますか?と一言添えれば彼はなんと答えただろうか。]
…ああ、そういえば。遠い異国には綺麗な赤い色の茶があるそうですね。茶と言えば此処では緑ですが、いつか嗜んでみたいものです。
(102) 2015/01/23(Fri) 15時半頃