まあ、髪で隠れるだろう。
……切ろうと思っていたんだが、それじゃあ切れないか。
[眉を寄せて、面倒臭くさそうに言って。くるくると毛先を指で遊ばせる。
けれど失くすなと言われれば、眉を上げて怪訝そうな視線をそちらに向けた。
"大事な物"……果たしてそれは本当だろうか。だとしたら、何故自分などにそんな物を押し付けようとするのか。
まさか本当に惚れてるわけでもあるまいし、と。解せぬ表情を続けながらも、一つ首肯する。
身に付ける……しかも肌に貫通させるものだ。そうそう失くしたりはしないだろう]
おねだりを聞くのは一つのつもりだったんだがな。
[失くさないよ、と。何でも無い事の様に言って。此方を見ようともしない相手を、苛立ちのままに睨み付ける。
――お願いする立場だというのが、分かっているのだろうか。否、分かっていないのだろう。どうせいう事を聞かないのであれば、無理矢理聞かせれば良いとでも考えていそうだし]
……痛くするなよ。
[せめてもと最後にぼそりと付け足して、彼が動き出すのを見守った。
……穴を開ける道具を持っている様には見えない事が、酷く不安だったけれど]
(100) 製菓 2014/07/08(Tue) 21時半頃