[ぽそりと落とされた一言>>70に微かに眉を上げる。そうしてその言葉の真意を聞いたのなら、薬師は気怠げに肩を竦めた。
世界の広さなど、知っていたところで大した意味は無い。此方は必要に迫られて、愛しの故国を出立しなければならなかったのだ。……そんな事を考えていたら、ふと違和に襲われる。
――自分は何故こんな辺境の地まで来たのだったか。
一瞬その目的を見失えば、ふるりと小さく頭を振る。そんなの決まっているじゃないか。"薬を売りに来た"、それだけだろう。……それだけな筈、だ]
そうですか。
まあ、確かに。染めてしまうには勿体無い。
[半ば無意識に差し出した手は、彼を驚かせてしまった>>71らしい。けれど平静を装う様は、中々に面白かった。一つ、心にも無い謝罪を落としながら笑みを噛み殺す。
"もし気が変わったのなら、その時は当店へ"、なんて。押し付けにならない程度に宣伝を。ついでに名刺を差し出してみれば、受け取っては貰えただろうか]
(87) 2015/01/21(Wed) 09時半頃