―教会>>69―
[暖かい紅茶を差し出されれば、それをありがたく頂戴することにする。
神父の口にした喩は的を射ていると言えば射ていたし、そうでないとも言えるような気がした。]
おう、ありがとな。
[薫り高い紅茶の温もりを楽しみつつ、男はゆるりと笑う。
もう幾度となく繰り返した転生の、それぞれの記憶を引き継いできた男にとって、そのすべては自分であり、そうでない誰か。
それは、いつの頃だったろうか、この世界に穢れと言うべきモノが増えすぎた頃、まるでこの世の理の一つの様にして火の山から生まれた時から、ずっと続いてきた流れであった。
死ぬ時も、生まれ変わるときも己では決めることができないが、それはもうあたりまえのこととして男の中には収められている。
ただ…一つの生が終わるときは、どうしたって感傷的になりがちなのだった。
そんなことに思いを巡らせているところだったろうか、子羊のお嬢様と目が合えば、何らかの挨拶を交わしたことだろう。
真相の霊場である彼女が、割合頻繁に村を開ける男と顔見知りであったかは分からないが…]
(75) 2013/11/21(Thu) 01時頃