[酒をあおりながら、過去が過ぎる。
それは、エクトル・ルカ・グレースという男がヘクター・L・グレイヴと
名乗るようになるまでのこと]
― 回想 ―
[母国が侵攻され帝国の一部となってしまったことで、かつてのエステラ共和国立士官学校の生徒には士官先を失って自暴自棄になる者も少なくはなかった。
歴代士官生と比べても優れた軍人になるだろうと称されていた男も、国や民を護るために学んだ剣術を自らの為に用い……人を殺めるまでに至ってしまった。
捕らわれて牢に送られた男の耳に届いたのは、日頃の素行を鑑みたら一生ここから出すことは出来ないという言葉。
事実、男は1年以上何の沙汰もないまま暗い牢で過ごすことになる。
男の牢に光が差したのは本当に偶然のことだった。
かつての師が男のことを聞き、帝国軍に加われるように手を伸ばしてくれたのだ]
(74) 2011/03/20(Sun) 04時半頃