―回想 宿屋・夢の中―
[久々にクマさんは昔の夢を見た。まさか、誰か>>8が同じ夢を見ているなんてそれこそ夢にも思ってなんていない]
[森の中で、大声で泣きじゃくっていて、吠えたてた]
[伝えたいことはたくさんあるのに、言葉が出なくて、ただもどかしくて]
[それを遠目から見守るのは、リスや、狸、隼、森に住む獣人達。昔は、何を言われていたのか意味はまったくわからなかった]
『あの仔は図体ばかり大きくなっちまって、頭のほうはてんでだめね』
『あれと付き合っちゃいけねえよ。力ばかりは強いんだから怪我しちまう』
『きっと魔法使いに呪われているんだよ、だからあの仔の母親だって――』
『でぇも、あの仔は信じているんでしょ、よい子にしていたら母親が帰ってくるって』
『ばぁかね、あはははははは』
[伝えたい言葉は、ひとつだった。]
[空っぽだった鹿の医者の診療所。医者はどこなんですか、お父さんを助けてください]
[長老会から帰ってきた梟のおばばが事態の異常に気付き、熊の父の死に気付いたのは、その日の夜だった。遅かったのだ、何もかも]
(74) 2010/03/23(Tue) 23時頃