─ 現実・病室 ─
[ピ・ピ・ピ、と。
無機質な音だけが病室に響く。
点滴は音もなく管を滑り降り、心電図は一定の間隔で波形を描いている。
機械がなければ、わずかに胸の辺りが上下していることだけが、ベッドの主が生きている証だった。
少し前髪にだけ癖のある、栗色の髪をした小柄な娘。
年の頃は二十歳か、二十一かそれくらい。
ほとんど外に出ないせいで肌の色は白く、小食のため痩せ気味の体、掛布に覆われて見えないが大きな傷跡の残る足。
ベッドの隣に置かれているのは彼女の体に合わせた車いす。
カスタマイズされたそれは彼女の脚がもう動かないだろうことを示しているが、もう長いこと使われた形跡がない。
こんな脚だからこそ、彼女は跳びはねるウサギをイメージしたアバターを好んで使っていたのかも知れない]
(71) amane 2014/06/07(Sat) 02時半頃