[我に返ったのは、鳴瀬の声にか、叩かれる扉の音にか。
伸ばした手を引き寄せる。]
石神井先輩と蓮端先輩が同時に……か。
[栖津井が齎してくれる情報に、安堵が混じる不安の表情を受かべるという器用なことをしでかすも、栖津井がくずおれそうになれば小難しい顔に変わる。]
………。
[鳴瀬が慰める様子に、自分は邪魔だろうか……と思えば、つきっと胸が痛む。
ここ最近、覚えのある痛み。今もある、3という数字。
それは、多分酷く脆い数字。
眉間に皺を寄せて、その数字から眼を逸らそうとする。]
え?鳴瀬先生??
[現実逃避しかけた耳に、鳴瀬の言葉が届く。
少々傷ついた顔をするのは、「この場合は、栖津井先生を俺に頼むではないですか?」と思うからだろう。声には出さないが。
栖津井のみに囁いた言葉も聴こえていれば、その思いは余程強くなっただろうが、聴こえてはいない。]
(69) 2011/05/20(Fri) 08時半頃